37回目 支那事変 ~中華民国 対 満洲~
この時期の中華民国は、中国全土を統一したとは言いがたい状況だった。
一応、全土の統一はしたと称しているが。
実際には、各地に存在する軍閥が勝手をしてる。
それらを完全にはおさえきれてない。
もっとも、中国と呼ばれる地域の最大勢力というのは間違いない。
その中華民国が旧領回復を名目に、満洲に攻め込んでいった。
その軍勢には特徴があった。
雑多な兵装によって武装してるという。
そのほとんどが、ロシア・ドイツ・フランス・スペインのものである。
廃棄処分をくぐり抜けて流れ込んでいたのだ。
というか、捨てるくらいならと、捨て値でかまわないから中華民国に売りつけたというべきか。
中華民国もせっかくだからとこれらを大量に取り入れていった。
敗戦国による、日本への意趣返しでもある。
加えて、生き延びた各国の軍人や技術者達が流れ込んでいた。
これも中華民国が安く買いたたいて招き入れてもいた。
その者達によって、中華民国は急速に様々な知識や技術を手に入れている。
アメリカのように。
このため、中華民国は史実よりも大幅に国力を増強させている。
単に武器の質が上がっただけではない。
それらを生産する工場も。
そして、効果的な部隊の動かし方も。
上は将軍・参謀から。
下は前線指揮官から兵隊まで。
様々な者達が中華民国の指導にあたっていた。
また、時には実際に指揮を執る事もあった。
そんな者達が満洲へと殺到する。
満洲もそれなりに武装をととのえてはいる。
だが、数でまさる中華民国には劣勢を強いられてしまう。
「こう来るよな」
ある程度予想されていた動きである。
敗戦国とアメリカの裏で手引きをしてる国。
それらが中華民国にも手を回してるという報告は受けていた。
なので、そのうち来るとは思っていた。
「また援蒋ルートかよ」
中華民国を支援する道。
それが今回のゲームでもあらわれた。
「まあ、あいつらだしな」
裏にいる連中を考えれば、そうなるのも予想できた事である。
中華民国まで物資や武器を運ぶ道。
それが出来るのは誰か。
考えるまでもない。
この時点で、敵の黒幕が誰なのかは判明したようなものだ。
しかし、表だって動いてないだけに面倒である。
とはいえ、それはそれでありがたかった。
全面戦争にせずに済むからだ。
今はまだ、中華民国と満洲の争いだけで済ます事が出来る。
とはいえ、この事態に日本は満洲支援を開始。
満洲軍の補強として日本軍も派遣。
とりあえず防戦だけでいいので、戦力は控えめにしておく。
数だけは。
ただし、装備だけは最新のものをそろえていく。
兵隊にはアサルトライフルと擲弾筒や対戦車ロケットを持たせ。
戦車は最新の75ミリ砲搭載の車両を。
戦闘機は五式戦闘機相当のものを。
現時点での最高装備である。
それで中華民国軍(と裏で支援してる連中)を迎撃していく。
さすがにこれらに対してまともに対抗できる中華民国軍は存在せず。
寄せては撃退されるという事を繰り返す事になる。
ただ、数は文字通りに桁違いだ。
圧倒的な人数で上回る中華民国は、絶えず圧力をかける事ができる。
対して満洲・日本は、少ない人数でやりくりせねばならない。
必然的に一人一人は長時間勤務を強いられる。
それが疲労となってむしばんでいく。
また、広範囲に展開出来る中華民国軍は、満洲・日本軍のいない場所から攻め込む事も出来る。
これらを少ない人数で相手にするとなると、機動力のある部隊が走り回る事になる。
幸い、戦車もトラックもそれなりの数がある。
これらを駆使して、攻め込んでくる中華民国軍を撃退していった。
しかし、これまた絶えず攻め込んでくるので、防衛側の負担も大きくなる。
燃料の消費も激しくなっていく。
戦闘をすれば消耗する弾薬もだ。
確かに戦えば勝てる。
同数ならば。
しかし、質が高い兵器をそろえるだけで戦争に勝てるわけではない。
極端な話、竹槍でも100万人に持たせて突撃されれば、相当な戦力になる。
相手が1000人程度なら、機関銃が相手でもどうにかなるかもしれない。
あまり現実的な話では無いが、実際、数が多いというのは馬鹿に出来ないものがある。
中華民国と満洲・日本の戦いは、そういったものだった。
戦えば勝てるのは満洲・日本だ。
しかし、戦場全体で、そして戦争という長期間の出来事の中では優位とは言えない。
押し寄せる人の波をどうにか押し返しはしてるが。
そのうち弾丸・燃料が切れたらどうなるか。
それが保っても、人が疲労に堪えられるかどうか。
中華民国の人が尽きるのが先か。
満洲・日本の根気がなくなるのが先か。
国を賭けたチキンレースが始まった。
この戦争は支那事変と呼ばれるようになる。




