35回目 願わくばこの友情が長く続きますように
敵の動きが水面下で活発化していく。
間諜によってそれらは日本に、そしてススムに筒抜けだったが。
その動きをススムは放置し、自分の足下を固めていく。
幸い、日本とその勢力圏は順調に発展していってる。
戦争になっても十分に戦えるだけの戦力を保有している。
友好国もほぼほぼ安泰だ。
だが、そうはいっても問題もやはり発生する。
問題なのは、友好国の植民地だ。
トルコなど、旧領を回復したところはともかくとして。
新たにアフリカなどの植民地を得たところは苦慮している。
いや、それだけではない。
旧来の植民地を保有するオランダなども難しい状況になっている。
「まあ、そうなるわな」
ゲーム画面にあがってくる状況説明。
報告という名目で表示されるそれらは、一様に一つの事態を示している。
それは、各国植民地における不満度の高まり。
それに伴う、暴動や反乱の増加。
これはゲームのプログラムとしてそうなっているのでどうしようもない。
理由はいたって簡単。
日本の躍進だ。
この時代、植民地化されてるヨーロッパ以外の国は、その状況を受け入れていた。
しかし、辺境の日本が躍進し、ヨーロッパ各国を打ち破った。
この状況になると、植民地での独立の機運が高まる。
日本の勝利は列強国にとって不穏の種なのだ。
その影響は友好国にも出ている。
結果として、日本との関係は悪くなる。
植民地がなければ良いのだが、列強でそういった国はなかなか無い。
なので、多少は対策をしていく必要がある。
それを友好国に提案していく。
今後も友好関係を続けるつもりなら。
「植民地の自治を容認…………しなさいよ!」
選べる外交の選択肢から、対策になる事を提案していく。
これは植民地の直接統治から手を引く事をすすめるものだ。
まず受け入れられる事は無い。
だが、根強く提案していく。
だが、利権を失う事になる。
素直に頷くわけもない。
それに、植民地からあがってくる利益で現在の国策などがなされている。
その収入源がなくなれば、国家として立ち行かなくなる。
それこそ現在の敗戦国のように。
まあ、本当に全てを失うわけでは無い。
自治を認める、それこそ外交と交戦権のない保護領でも利益は得られる。
日本のように。
有利な条件で交易が出来たりするので、決して利点がなくなるわけではない。
また、植民地として直接統治してると、統治費用もかかる。
社会基盤の整備や、治安の維持などだ。
国民満足度が低い、つまり不満が高い状態だとこういったものへの対策が必要になる。
また、暴動や騒動、反乱だけでは無い。
国民の生産性も下がる、やる気がなくなる。
その結果、生産性が下がり、収入が下がる。
その対策の費用などが、植民地から上がる利益を相殺する。
これらを考えると、決して植民地が良いとばかりも言えない。
それを知るプレイヤーは、最初に植民地を自立させていく。
自治権の高い状態や保護領にして、上がってくる利益を確保する。
その方が動きやすくなったりもする。
もっとも、コンピューターの操作する状態だとそうはいかない。
提案してもなかなか受け入れられない事が多い。
ここはしょうがない。
高まる不満を解消するなら、植民地の状態を変えた方が良いのだが。
「無理かなあ」
ここは本当にどうしようもない。
最悪、ここが分かれ目になるかもしれない。
現在の友好国との。
植民地のないオーストリアやトルコはともかく。
オランダとイタリアとはもう駄目になる可能性が高い。
「まあ、どうにかなるけど」
それも予想していた事だ。
日本が成り上がれば、嫌でも植民地を保有する国との関係は悪くなる。
これはどうしようもない。
だからこそ、単独でも戦えるように準備をしてきた。
それでも、
「出来ればもうちょっと上手くやっていきたいけど」
そうも思う。
その方が手間が省けるのだ。
最終的に他の国全てを敵にまわすにしてもだ。
一度に複数の国を相手にするより、小出しに何度かに分けてもらった方がやりやすい。
その為にも、今は友好国として味方でいてほしい。
出来れば、敵対せずにそのままずっと味方でいてほしい。
だが、これはさすがに難しいところだ。
「無駄な争いは避けたいけど」
それでも他の国がどう動くのか。
こればかりは分からない。
もうとっくに手を切ってる奴もいるのだ。
「はかないよなあ」
国家に真の友人はいない。
その通りかもしれないが、できればもっと友好関係を続けていきたいものである。
オランダのように。
出島での交易期間を含めれば、おそらく友好関係は最長。
そうでなくてもトップクラスの国である。
出来れば今後も仲良くしていきたい。
インドネシアの資源も売ってもらってるので。
そういう実利的な理由から、良い関係を続けていきたい。
フィリピンとベトナムのすぐ隣なので、戦争になると面倒になるのだし。
「せめて、フィリピンがもう少し育つまで。
あと、ベトナムが自力で防衛出来るようになるまで。
ついでに、満洲が独り立ちして周辺の国をまとめ上げられるようになるまで。
それと、北極近くの資源地帯の開発が完了するまで」
どこまでも生臭い理由を並べ、ススムは友好国との友情が続く事を願った。




