二つのスキル
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【鑑定】
初回ダンジョンクリアボーナス。
人、魔物、物品の価値、ステータスを鑑定する。
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【鑑定】。そのスキルの詳細は今、ホログラムに表示されている通り。この詳細の確認もまた【鑑定】によるもので、どんなスキルなんだろう……なんて考えていたら半自動的に発動していた。このスキル、判定結果を見る限りではとても有能で有用だと言える。ただし、一つでもダンジョンを攻略した者は全員このスキルを持っているとすれば警戒も必要になってくる。
相手に敵対する意思がないのならともかくとして敵意を向けてくる人間がいる場合も仮定すると【隠蔽】みたいなステータスを隠すスキルが必要となってくる。とはいえ、ないものはない。
現状、スキルを手に入れる手段はダンジョンの攻略のみ。だが、ダンジョンを攻略するということはすなわち、その命を危険に晒すということだ。そうやすやすとダンジョンを攻略しに行こう! だなんて言えるものではないしそれに、今は単独で行動しているわけではなく、藤宮もいる。不良と呼ばれてはいてもやはり女子だ。あまり危険な真似はさたくない。
そういえば藤宮も何かしらスキルを貰っているはずだけど、どうなったんだろうか? 僅かに好奇心が顔を覗かせるが、やはりそこは個人情報。【鑑定】でも使えば見れるのだろうけど、信頼関係にも関わってくるものだろうしそれはやめておく。
ちなみに【狂戦士《ベルセルク》】の鑑定結果はこれだ。
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【狂戦士《ベルセルク》】
思考、魔力、器用の能力値を犠牲にそれ以外の能力値を上昇させる。また、スキル使用中は戦闘行為に対して興奮、快感を覚える。危機的状況であるほど能力値に上昇補正。
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明らかに前衛向けのスキル。能力値の上昇幅や戦闘時に引き起こされるという興奮、快感の度合いはどの程度なのか。それは検証してみないことには何とも言えないが、興奮や快感はおそらくデメリットに数えられるものだ。例えば戦闘中、戦うことに夢中になって周りが見えなくなったら何をしでかすかわからない。そういう奴が一番危険だ。この先、俺が【狂戦士】のスキルを扱う上でどれだけ己を律することができるか、それが重要になってくることだろう。
「佐伯、まだ終わんないの?」
ずっとこちらを見て暇そうにしていた藤宮がムスッとしながら口を開く。よほど暇だったのか、顔に眠気が滲みでている。
「ん、ああ。俺はいま終わったけど……そっちはいいのか? 何もしなくても」
俺は結構な時間を使ってしまった自覚はあるが、それにしても藤宮が何かをしていた気配というものが感じられなかった。
「……私のスキルはまだ使えないみたいってことだけは分かった。今後使えるようにはなるとは思うけどね」
面白くなさそうに顔を反らし、腕を組むと豊かな胸が押し上げられる。本人は自覚していないようだが、彼女の妙に艶かしい仕草に俺は気恥ずかしさに負けて視線を逸らしてしまった。
「まっ、スキルの話はこれくらいにしてさ……あいつらのこと、どうにかしてやれないかな?」
あいつら。そう彼女が指差したのは今は亡き巨体のゴブリンに吹き飛ばされたバスケ部と柔道部の二人。
「あいつら、さっき確認したけど……死んでたよ」
「そうか」
思ったよりも俺の中での動揺がない。人が死んだという非日常的で非現実的な会話に俺はやはり、何も感じてはいなかった。今日を通して俺の中の何かが壊れてしまったのか、それとも俺という人間は元からそう出来ていたのか。今となってはもう、分からない。
「弔ってやるくらいなら、できるかな……」
火葬、は無理か。となると土葬かな。それならスコップが必要になる。
俺たちは校庭の横に設置された物置からシャベルを持ち出し、二人分の大きな穴を掘り出した。
――二人の死体を埋めた時、やはり俺は彼らの死を悲しい思うことは無かった。
◆
俺たちは元に戻ったいつもの見慣れた校舎を背景に雲一つない晴天の青空を見上げる。
「私たち、これからどうすればいいと思う?」
重々しい沈黙を破る藤宮からの唐突な問い。
外に出て、家に帰るのか、知り合いのいそうな場所を探すのか、それとも当初の目的通り警察を頼るのか、どうするんだ。と、そういうことだろうか。
「やっぱ、警察を頼るのが一番いい方法だとは思う。けど、世界中がこんなことになっているんだったら警察も俺たちだけに構ってる暇はないだろう。その場合、俺たちは自分で自分を守らなきゃならない。それに……」
言葉を続けようとした俺を遮るようにグゥと腹の虫が鳴る音がした。もちろん俺のじゃない。つまり――
「うぅっ……ゴメン」
藤宮はまたもや犯してしまった恥態に頬を赤らめる。
「そういや、腹が減ったな。グミもなくなったし……警察に行く前にまずはコンビニでも寄って食料くらい調達していこうか」
それに、服が血に濡れて気持ち悪い。コンビニになにか着替えになるものでもあればいいけど……
俺は紳士的にかつ自然に自分にできる精一杯のフォローを捻り出した。




