25蹴 サッカー、俺。
結論から言うと、連覇は途切れた。3年生になって出場した試合では、昨年からさらにレベルアップした強豪たちが立ちはだかった。うちの対策を徹底し、ある程度の変化ならば対応しきってしまうようなチームが多かったのだ。昨年の出場チームが別段弱かったというわけではないのだが、ダークホースである俺の存在が、最終的な結果を変えた要因だったのだろう。俺の対策は…なんていうか、疲れた。木之元先輩もヘロヘロになっていた。あれだけ徹底的にマークされたらなぁ…それでも、決勝までは行けたんだ。決勝では、またFC登別に…と思っていたんだけど、今回はリョーマズが勝ち上がってきた。結果は、惜敗、1-0。帰ってから猛特訓を開始した。いや、これまでの特訓もかなりきつかったんだけど、もっと質の向上が必要とのことで…死ぬかと思った。もちろん、これは比喩である。命が危ないほどの練習は、今ではどの指導者もしない。しないが、限界がわかった分、限界ギリギリを要求しやすくなったのだ。おかげで毎日ヘロヘロである。
特訓の成果が出て、俺にとって3度目の全日本少年サッカー大会は優勝。5年になって挑んだそれも優勝し、連覇の夢はここでやっと達成された。
そして6年になった冬…
「勝った!優勝だ!」
俺たちは、4連覇を達成した。
チームとしても、ものすごく強くなったことを実感している。同世代の仲間の成長は目覚ましく…俺たちのチームは全国に轟くことに…連覇の時点でよく知られていたな。別に4回したってあんまり変わってないか。
ミュンヘン旅行は、2年の時と4年から6年までの、3回行ったことになる。その3回目、いつものように墓参りをして…いつも父やそのほかのメンバーには(涙を見られたくないからといって)、一人で参っていたのだが、目をつぶって手を合わせ、念じて、さあ、戻らないと。そう思い立ち上がり、振り向いた先に一人の少女がいたのだ。
「タケ・・・ル?」
なぜ、この子は俺の名前を?確かに俺はこっちでもよく知られているとは思うが、女の子からそう声かけられたことはなかった。少なくとも、同年代の少女たちには。
「ホントにタケルだ…!会いたかった!」
「もしかして…まさか…そんな…」
「その反応からして、覚えててくれたのかな?そう、あたしだよ。アーデルハイト」
俺は彼女を抱きしめ、泣きじゃくった。彼女も泣いていた。
アーデルハイトは恋人との再会に、胸がいっぱいになった。胸がない?殴るよ!あたしが死んでも、忘れないでいてくれたのだ。
結論から言うと、アーデルハイトというのは正確ではない。彼女はエルザ。エルザ・アードラーである。アーデルハイトは確かに死んだ。夢見心地でいたら、どこかから呼ばれる気がしたのでそちらに向かうと…幼児になっていた。最初は彼女も混乱した。新たな両親はものすごくいい人だった。お金持ちとは言えなかったが、彼女は何不自由なく暮らした。そして、タケルにまた会えないか、という一縷の希望をもって、毎日この墓を覗きに来ていたのだ。運よく、彼女が生まれ変わった先の家はミュンヘンであった。車での移動中、見たことのある景色があったのだ。さらに幸運が重なり、彼女の一家の墓は、アーデルハイトの墓と同じ集団墓地にあった。そのため、彼女は自分の墓を見つけ出すことができたのであり、毎日欠かさず見に来ていたことが幸運して、尊とまた会うことができたのである。
「それで、アーデルハイト、いや、今は何て名前かな?」
目の前にいる幼女は、見た目からはアーデルハイトの容姿の片鱗さえ見つけられていない。ということはまた別の親がいる、ということになる。
「えっと、とにかく全部、包み隠さず教えるわ」
彼女はすべて説明してくれた。俺と同じような感じである。唯一違うとすれば、”呼ばれた気がした”という部分だが…転生者カップルとは吃驚するな。
「えっと、そろそろ行かなきゃ。あ、これ。俺のデバイスの連絡先と、メアドと、SNSのID。リストデバイスとかをもし持てたら、これに連絡して!それと、来年からも同じ時にここに来るから!」
「わかった!絶対よ!絶対だから!」
俺はそこを後にした。彼女が生きてる。それだけでよかった、前を向く理由は。それでよかった、立ち上がる訳は。それだけでよかった、走り出すのには。もう、何もいらなかった。簡単に言ってしまうと、やる気が出た、その一言で片付くが、そんな簡単なものではなかった。もう二度と、折れない理由を、ここで手に入れられたのだ。これまでは、自分で支え続けないといけなかったその細い支柱、それが補強された。もう怖いものなどない、俺はどこまでも行けるのだ。
ここから尊は、これまで以上にサッカーに熱中し、さらに才能を開花させていくことになる。
うーん、アーデルハイトの復活、もっと後のほうがよかったかな?と思ったりもするけど、あんまり遅いと年の差婚すぎてなんか嫌だったんですよね。




