#11
「生きなくちゃいけないと生きたいは違うわ。小雛ちゃんが今生きてるのは、生きなくちゃいけないからじゃない?」
「………」
生きたいと、生きなくちゃいけないの違い。
分からない。
何が違うんだろう。
だって同じ、生きる事に変わりはないのに。
「分かりません……何が違うんですか…」
理由は何であれ、生きてれば良いはずだ。
生きてさえいれば、良いはず。
それの……何が悪いのだろう。
「ねえ小雛ちゃんは近いうちに、此処を出ていくつもりなのよね」
「えっ……ぁ、はい…」
「ずっと此処に居る気はない?」
意味が分からない。
さっきまで生きなきゃいけない、生きたいの違いの話をしていたのに。
「……どうしていきなりそんな話になるんですか」
「小雛ちゃんちゃんがこのままこの城を出て、外で暮らしたらすぐに死んでしまいそうなの。生きなくちゃいけないと思っている人は、心の何処かでいつ死んでも良いと思っているから」
「…そんな事…ありません。っ大体何で愛華さんや京介さんはそんなに私の事気にするんですか…」
私達は私が怪我をしている所を助けてもらった唯の他人。
今は私の怪我も治って、私がこの城を出て行ってしまえばもう、何の関係もない。
「何故…かしらね。ただ、初めて会った時に放って置けなくなってしまって」
「……余計なお世話です」
「そうね。小雛ちゃん貴女にとっては余計なお世話以外の何物でもないわよね。それでも、どうしても自分の娘が危ない事をしそうな気になってしまって」
ああ……ダメだ。
此処に居てはダメ。
私の中が温かいモノで満たされてしまう。
期待してしまう。
信じても良いと、思ってしまう。
もう、嫌なのに。
温かい所から、冷たい所に落ちるのは。
「…私は、愛華さん達に優しくしてもらう価値なんてありません。わたしは……」
私は親に捨てられた子だから。




