1章 アニマル達もいる運動会 1話
本作品を閲覧いただきありがとうございます。
女の子3人の少し百合っぽいかんじに癒されたりアニマル達の行動に笑っていただけたなら嬉しいですけどどうでしょう?
少し読みやすくなったアニマルシリーズスタートです。
【第一章:限定3パック! 幻のいちご大福を賭けた作戦会議】
青空が高く広がる秋の朝、私立千草中学校の校庭は、年に一度の「秋季大運動会」の熱気に包まれていた。
しかし、今年の運動会は普通ではない。
地域交流の一環として、学校の裏山にある「アニマル特区」から、少し――いや、かなり個性的な動物たちも競技にゲスト参加することになっていたのだ。
そんな大騒ぎの運動会が始まる前日、放課後の教室では、14歳の仲良し3人組が机を突き合わせて作戦会議を開いていた。
いつも元気ハツラツ、王道トップアイドルの輝きで周囲を【笑顔】にするポニーテールの『アオイ』。
冷静沈着な眼鏡っ子で、特別な演出なしで周囲を【狂信者】へと変貌させる『ユズ』。
普段は控えめで優しい、おろおろした【聖母】の癒やし枠である『コトネ』。
「いい、二人とも? 明日の『トリオ・ザ・障害物競争』、私たちは絶対に1位を取らなきゃいけないの。これは義務であり、至上命題よ」
ユズが真面目な顔で机を叩き、ノートに複雑な数式とタイムスケジュールを書き込んでいく。
「え~、ユズちゃん、たかが運動会でそんなに熱くならなくても……」
コトネがのんびりとした声を出しながら、アオイの髪に可愛い犬のヘアピンを飾っている。
「えへへ、コトネ、くすぐったいってばぁ……❤️」
アオイがポニーテールを揺らして身をすくめると、コトネは「ふふ、アオイちゃんの髪、いつもサラサラで気持ちいいなぁ」と目を細めて微笑む。
至近距離で展開される極上の百合癒やし空間。ユズは無言のまま、凄まじいタイピング速度でその尊さをノートに記録していた。
「コトネくすぐったいって! でもユズ、どうしてそんなに必死なの?」
アオイが不思議そうに首を傾げると、ユズは「フッ……」と眼鏡を指で押し上げた。
「甘いわ、アオイ。今回の運動会、特別協賛として、あの『ハッピー・ベリー・カフェ』が出店するのよ。そして1位のチームには……限定3パックの『幻の極上生チョコいちご大福』の無料引き換え券が贈呈されるわ!」
「「な、なんだってーーー!!?」」
アオイとコトネの目が一瞬でパッと輝いた。
SNSで連日トレンド入りし、始業前に行列に並んでも買えないという、女子中学生憧れの幻のスイーツである。
「あの、口の中でとろけるイチゴ大福……! 食べたい、私、絶対に食べたい!」
アオイがユズの両手を握ってブンブンと振る。
「私も……ダイエットは明日からにする!」
コトネも珍しく小さな拳をぎゅっと握りしめた。
「ふふ、モチベーションは十分ね。じゃあ、キャッキャウフフと喜ぶのは明日の放課後にして、まずはアニマル特区から来るゲスト動物たちの『癖』を分析するわよ」
ユズが不敵に微笑み、3人はさらに頭を突き合わせて作戦を練り始めた。
彼女たちと動物たちの間には、数ヶ月前の雨上がりの裏庭で『ハッピー・ベリー・カフェ特製・高級いちごクッキー』を巡って出会った、ちょっとしたライバル関係があったのだ。
◇
【第二章:開会式裏の作戦会議と、魔術師の弟子誕生】
運動会の開会式直前。
体育館の裏では、仲良し3人組の前に、レインボーカタツムリのゲイリーたち「アニマル連合」が立ちはだかり、バチバチ(?)の火花を散らしていた。
一方、そのすぐ横の物置の裏では――。
“アニマル界の魔術師”こと、IQ500を誇る天才ニワトリが、今回の運動会で走る気ゼロのチーターのハヤテを最高の形で走らせるための『完璧な超戦術(マタタビの配合比率と風速の計算)』を脳内で編み出し、激しいパニックに陥っていた。
「コケエエッ!?(バカな……! 羽ではペンが握れん! 滑る、ツルツル滑るコケ!)」
焦れば焦るほど、彼の脳細胞の『3歩の猶予メモリ』がジリジリと削られていく。
彼は3歩歩けば、その瞬間にすべての記憶がリセットされる致命的なバグを抱えていた。
1歩、2歩……あと1歩動けば、この高高度な作戦がすべて脳内から消え去ってしまう。
ペンが握れないなら、本番の一走者であるハヤテの元へ、直接口頭で作戦を伝えに行くしかない。
しかし、そのためにはハヤテのいる控室まで歩かねばならない。
だが、自分が3歩歩けば、その瞬間に作戦を忘れる。
「コ、コケッ……(ならば、1歩も動けない私に代わって、ハヤテの元へ作戦を伝えに行く『私の分身』を今ここで作ればいいだけのことコケ……!!)」
魔術師はくちばしを血が出るほど噛み締め、燃えるような眼光で天を仰いだ。
「コケェェエエッ!!(まだだ、この程度の試練、我が智謀で乗り越えて見せる……!!)」
彼はその場で1歩も動かないまま、ぐっと下腹部に力を込め、全身の羽を逆立てて顔を真っ赤にした。
「コケェェェエエエエーーーッ!!!」
ポロン。
なんと、その卓越した執念(物理)により、戦術のすべてがコード化されて刻み込まれた、黄金に輝く『戦術卵』をその場で生み落としたのだ。
卵は即座にパカッと割れ、黄色くてモコモコのひよこ、『魔術師の弟子ユリアン』が顔を出した。
「コケッ!(よし、生まれたな我が弟子ユリアンよ! 今すぐハヤテの元へ走り、時速120キロの超神速チーター計画を伝えるのだコケ!)」
「ピヨォ……?(パパ、お腹空いたのら〜)」
「コケッ!?(バカな、生まれたてで歩き方も言葉も知らないだと……!? これでは伝令にならん!)」
タイムリミット(開会式のファンファーレ)が迫る。
焦った魔術師は、さらなる斜め上の結論に達した。
「コケエッ!(猶予はない! ユリアンよ、お前が動けないなら、お前がさらに『次の動ける分身』を今すぐ産み落とするのだ! 連続出産ジェットストリーム・バースコケ!!)」
「ピ、ピヨォォォーーーッ!!!(無理言うなパパーーー!!!)」
ユリアンは小さな羽をパタパタさせ、顔を真っ赤にしてフンスフンスと頑張るものの、生まれたてのひよこが卵を産めるようになるまでには、生物学的にどう考えても時間が足りなさすぎた。
『プォォォーーーーン!!!』
校庭に鳴り響く、運動会開始のファンファーレ。
魔術師のハヤテ覚醒作戦は、1ミリも伝わらないまま完全消滅。
当然、作戦の伝達成果は「ゼロ(完全失敗)」であった。
「コケ……(可愛い我が弟子は産まれたが……作戦は完全なるゼロコケ……)」
すべてを失った魔術師は、静かに天を仰いで白目を剥くのだった。
そこへ、体育館裏の騒ぎを聞きつけたアオイたち3人組がやってくる。
「あーーーっ!! 見て二人とも! ニワトリさんの足元に、生まれたてのひよこちゃんがいるよ! 可愛い〜〜!!」
コトネが我慢できず、足元でピヨピヨ言っていたユリアンを両手ですくい上げ、自分の頭の上(ハチマキの結び目)にちょこんと乗せてキャッキャウフフ。
「うわぁぁ、ちっちゃくてモコモコ! 運動会の作戦は失敗みたいだけど、可愛さは200点満点だよぉ〜!」
アオイがポニテを揺らし、ユリアンを囲んでぎゅーーっと抱き合い、三人娘の圧倒的な癒やしの光でグラウンドの隅を包み込む。
アニマルの限界狂気カオス空間が、彼女たちの前で一瞬にして平和に強制変換された瞬間だった。
ユズはその尊すぎる光景を眼光鋭くスマホで高速連写するのだった。
こうして、魔術師の弟子ユリアンは、開会式前から3人娘を完全に骨抜きにし、そのまま紅組のマスコットとして、午後の競技で3人の頭の上に乗って大活躍(?)していくことになるのだった。
【第三章:怪獣映画 vs 女子中学生!? 全力で非力アピールをする猛獣たち】
開会式の後、全校生徒とゲストのアニマルたちによる『準備運動(ラジオ体操)』が行われた。
ヤンキーやマッチョに憧れて悪ぶる野生のプロ(猫)のタケシが「フンッ!フンッ!」とキレキレ(のつもり)で大福のように転がり、サルの源さんが後ろで腕を組んで「あいつらの成長が楽しみだぜ」と言いたげに渋く見守る――。
そんな治安が大渋滞した準備運動を終え、いよいよ競技が始まった。
プログラム第4種目『団体対抗綱引き』。
「えええええ!? 嘘でしょ、比率がおかしいよ!」
アオイの叫び声が響く。
それもそのはず、3人組が持つロープの向こう側にそびえ立っていたのは、巨大な鼻をフンスフンス鳴らす『ゾウ』、そして――。
「あたい、かよわい女の子だから無理ぃ〜〜」
体操着の上からピンクのフリルハート型エプロンを着用し、素手でドラム缶を雑巾のように握り潰す圧倒的女子力(物理)を持つゴリラ界の喧嘩師、『フローラねぇ』。
さらに、列して立ち上がると3メートル近い『ヒグマ』だった。
観客席からは、華奢な3人組が完全に見えなくなっているレベルの絶望的な巨体である。
どう見ても女子中学生が勝てるわけがない。誰もがそう思った。
しかし、動物たちは全員、三人娘の放つ圧倒的な癒やしオーラの前に脳を溶かされていた。彼らはものすごい巨体をモジモジさせながら、全力で「非力アピール」を始めたのだ。
ゾウは長い鼻でロープを握るものの、急に「パオ〜ン……(しくしく)」と切ない声を出し、片足を内股にしてモジモジ。
ユズのノートを指差して「そんなに強く引っ張られたら、お鼻が痛くなっちゃう」と言いたげに、うるうるした瞳で見つめてくる。
フローラねぇは丸太のような腕を持っているのに、ロープを持った瞬間「おほっ、おほっ」とわざとらしくヨロめき、自分の胸に手を当てて少女漫画のヒロインばりに隣のヒグマに寄りかかる。
ヒグマは鮭を素手で引き裂く爪を持っているのに、爪先でロープをツンツンとつつき、「こんな重いもの持てないクマー」とばかりに首を傾げてアザト可愛いポーズを決めていた。
『パンッ!』
開始のピストルが鳴る。
「いくよ、二人とも! せーのっ!」
アオイのかけ声で、3人は「よいしょ、よいしょ!」と手を重ねてロープを引っ張る。
14歳女子の、至極真っ当で可愛い力だ。
一方の動物チーム。
フローラねぇは「きゃっ、引っ張られたわ!」と大げさに数センチ前へヨロけ、ヒグマは「クマー」と力尽きたポーズで白目を剥いてバッタリと地面に倒れ込み、ゾウにいたっては、引っ張られた衝撃ゼロで「パオーン!」と悲鳴を上げ、自らロープを離してお尻からすてーんと後ろに転がってしまった。
『ピーーーッ!! 勝者、千草中3人組チーム!!』
一瞬の静寂の後、グラウンドに爆笑と歓声が沸き起こる。
「えええええ!? 嘘、勝っちゃった!!?」
アオイが驚きで目を丸くした後、隣のコトネの体に思いっきり飛びついた。
「きゃっ! アオイちゃん、苦しいよぉ〜、でもすごーい!」
コトネはアオイを抱きとめながら、二人でぴょんぴょん跳びはねてハグ。二人は「あはは!」「やったね!」と顔を見合わせて大笑い。
グラウンドの真ん中に、あまりにも尊い極上の百合癒やし空間が咲き誇る。
「計算外だわ……」
ユズが呆然と眼鏡を直す。ノートには『勝率0.001%』と書かれていた。
「ユズちゃんも、ほらほらー!」
コトネとアオイがユズの左右の腕を引っ張って、3人でぎゅっと真ん中に固まる。
「ちょ、ちょっと二人とも、汗をかいているのだから密着しないで……もう!」
口では文句を言いながらも、ユズの顔は嬉しさで真っ赤。
3人はお互いの体温を感じながら頭をコツンと寄せ合って、勝利の余韻に浸った。
◇次回バトンリレーにつづく
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