009 ~その家族との付き合い~
光の神殿から戻って毎日ジャップからの電話をアルトは受けていた。
そしてまたジャップからの電話を受けたアルトはいつもの事だと思い適当に遇おうとするが……。
メイサから色々な助言を受けた茶の稽古は終了した。
それからアルトはラニーニャに何度と連絡を取ろうとしたが勇気が出ず、
一週間が経ってしまった。
その代わりと言って良いかわからないが、その間ジャップが毎日の様に連絡を取ってきて、
「こ、こらっ!! 特に用がないのに電話するのはやめたまえ!!
あっ!? また、勝手に電話を切ってる!!」
と、アルトが言う日々が続いたのである。
そして、本日もアルトの携帯電話のベルがまた世話なく鳴った。
その発信者の表記は勿論ジャップという文字だったのでアルトはスルーしようとした。
だが、メイサの視線が気になったアルトはその電話に出る事となった。
「おう、アルト。元気か?
渋々ジャップからの電話に出たアルトだったが、やはりジャップからはこの台詞を言われる。
なので深い溜息をついたアルトの眉間にはしわが寄った。
「君……。毎日毎日、同じ事を言わせないでくれるかい? 特に変わりなく僕は過ごしてるさ!!」
「おお、それは良かったぜ!」
「用がないのなら電話を切っても、いいかい? こう見えても僕は忙しいんだ!!」
そして、いつもと全く変わらないジャップの態度に苛ついたアルトは怒鳴って電話を切ろうとした。
「そっか……。忙しいんなら仕方がない。
何か姉貴が用があったみたいだけど、そう言っとくわ!」
だが、そう言ったジャップの方が電話を切ろうとしたのだ。
「君ぃ!? ちょ、ちょっと待つんだぁーーーーーーっ!!」
それから叫んだアルトはそれを阻止しジャップの要件を聞く事に成功した。
「えっ!? せ、先輩の手伝いを、頼まれたって?」
ジャップの話を聴き終わったアルトはこの上なくわくわくしていた。
「そうなんだよ……。何か急で悪いんだが、仕事関係で色々と頼まれたみたいでな。
俺一人でも良かったんだが、まあアルトが忙しいんなら俺一人で手伝うわ!」
だが、ジャップは平気でアルトのそのわくわくを打ち壊す事を言い出す。
「忙しくない!! 僕も手伝うよ!!」
そして、アルトが電話に齧りつく様に叫ぶと、
「おっ、そっか! じゃあ、アルト。明日、姉貴の職場で会おうぜ!!」
と、言っただけでジャップは電話を切ってしまい、
「こ、こらーーーー!! 勝手に電話を切るなぁーーー!!
明日の何時なんだ? それに、僕は先輩の職場なんて知らないよ!!」
と、絶叫したアルトはジャップに電話をするはめとなった。
「……いいかい? 君のその癖は直さないといけないよ。こうやって二度手間になるだろう?」
「おお、それは悪かった。だが、電話ありがとなアルト!」
アルトの忠告後、嬉しそうなジャップはまた電話を勝手に切った。
「君、僕の話を聴いてたのかい!?」
そんなジャップに呆れたアルトだったが何故か左程、怒りは湧かなかったのである。
「全く……ジャップには呆れるよ。でも、何だろう……。不思議な感じがする」
そう呟いたアルトはジャップの事を考える。
すると、微笑んでいるラニーニャの顔が頭に浮かんできた。
「で、でも、先輩に会える!? ど、ど どうしよう!? な、何を言おう?
いや、何て言って謝ろう?」
そんなアルトは悩み続け一日を過ごし、次の日を迎えた。
それから待ち合わせの時刻、待ち合わせの場所であるラニーニャの仕事場にアルトは到着した。
「あっ、アルト、おはよう。今日はごめんね。付き合わせちゃって……」
そこで申し訳なさ気な顔のラニーニャと視線が合った。
「そ、そんな事を言わないでください先輩!」
すると、アルトの声は緊張で大きくなる。
「おう、アルト!! よく来たな!!」
そして、その声をかき消す声のジャップからアルトは髪をグシャグシャにされてしまったのだ。
「何するんだい!? あっ!? 髪が滅茶苦茶じゃないか!!」
そう怒鳴ったアルトはジャップから急いで逃れた。
「まあまあ、気にすんなアルト!」
だが、笑顔のジャップは全く反省をしていない。
そのジャップにイラっとなったアルトは眉を顰めた。
「気にするよ!!」
「さて、姉貴。買い出しに行こう!」
「うん。行こう!」
そんなアルトの睨みに全く動じなかったジャップはラニーニャに目を転がした。
そして、くすくす笑っているラニーニャは頷き、アルト達は買い出しに向かう事となった。
ラニーニャの買い出しはコーヒーや茶菓子、洗剤やティッシュペーパー等といった
日常生活品ばかりだった。
だが、それ等を一人で抱える事は出来ない量だったのである。
そこでアルトはラニーニャに良い所を見せ様と多くの荷物を持とうとしたが、
ほとんどの荷物をジャップから軽々と持たれてしまった。
(ジャップめ……。先輩の前で良い格好してどういうつもりなんだい!?)
そんな身軽のアルトは眉間にしわを寄せジャップを横目で見ていた。
そのジャップはラニーニャと色々と話していた。
「姉貴、あと何を買えばいいんだ?」
「うーんと、何か甘いお菓子がほしいって言われてるんだけど……。何がいいかな?」
その話の中でラニーニャが困っていたのだ。
「せ、先輩! それなら僕に任せてください!!」
なのでアルトはある店へラニーニャを案内したのである。
そこはアルトお薦めの茶菓子店で、季節限定の落雁や煉切り、色々な種類の饅頭が並べられており、
特に最近アルトは茶の稽古でこの店の茶菓子を購入しているのだ。
「どうです、ここの店の茶菓子は? この店の茶菓子はとても抹茶に合うんです。
だから最近、僕は茶の稽古の茶菓子をここで購入してるんですけど……」
その店の前でアルトはこう説明したが、ラニーニャは少し切ない顔になった。
その顔でアルトの眉は下がる。
「あ、あの、お気に召しませんでしたか?」
「ううん。何か懐かしい感じがしただけ。とっても可愛い! きっと先生も喜ぶ!」
だが、ラニーニャはすぐに微笑んだ。
「そ、それじゃあ……?」
「うん。ここのお菓子にするよ。アルト、一緒に選んでくれる?」
眉が戻ったアルトはラニーニャに頼まれ、一緒に茶菓子を選ぶ事となった。
それから暫く二人でその店の色んな茶菓子を見て回り、アルトは色々と薦めた。
すると、ラニーニャはそのアルトが薦めた茶菓子を全て購入したのだ。
しかも、満面の笑みで……。
こうやってアルト達は無事に茶菓子を買い揃える事が出来たのである。
それから二人でその店を出ると、
「おーい、姉貴。買えたか?」
と、両横に荷物を置いて たぬてぃをあやしているジャップに声を掛けられた。
「うん。アルトのおかげでいい買い物が出来た!」
そのジャップにラニーニャは微笑みを返す。
「おお、そうか……。アルト、良くやった!」
「当然だよ。僕が薦めるんだから良い物に決まってる!」
そして、ジャップから褒められたアルトが髪をかき上げると、
「ふーん。まっ、そりゃそうだ……」
とだけ言って、ジャップは たぬてぃをラニーニャに渡した。
だが、そのジャップの顔はアルトに何かを言いたそうだったのである。
「君、何が言いたいんだい?」
「いや、別に?」
そのジャップにアルトは眉間にしわを寄せた顔を向ける。
すると、その顔のままのジャップからはぐらかされてしまった。
「別に、じゃないだろう? 言いたい事があるんならはっきり言いなよ!」
「おっ、もうこんな時間だ!? 姉貴、戻るぞ!」
そして、眉間のしわがさらに出来たアルトは追及したがジャップからまたはぐらかされ、
ジャップは荷物を抱え歩き出したのだ。
それからジャップは特に表情を変える事なく歩き続け、先程の態度は謎のままだった。
(全く……ジャップは何が言いたいんだ? 言いたい事があるのにどうして言わないんだ?)
なのでその間アルトは苛立ち続けたのである。
そんなアルトとジャップ達はそのままラニーニャの職場へ帰り着き、その中へ入る事となった。
次回【一風変わった家族 ~その家族の不思議な優しさ~】




