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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
第二章 一風変わった家族
10/14

010 ~その家族の不思議な優しさ~

 ラニーニャの買い出しの手伝いを終えたアルトはラニーニャの仕事場まで帰り着いた。

 だが、そんなアルトはある事で落ち込んでしまう。

 すると、そんなアルトの目にラニーニャの目に光るものが見えて……。

(ここが、先輩の職場……)

 ラニーニャの職場に入ったアルトはドキドキしながらその職場を見渡した。

 そこでラニーニャは手際良く荷物を片付けていく。

「あ、あの、何か手伝います!」

 そのラニーニャにアルトは申し入れた。

「うーんと……。今の処 大丈夫だから、たぬてぃを頼めるかな?」

 だが、ラニーニャにそう言われてしまい、アルトの眉は下がった。

 すると、そんなアルトの肩に たぬてぃが乗り、じゃれてきたのである。

「たぬてぃ君……」

 その たぬてぃを見たアルトの肩までもが下がったが、

小さい鼻を目一杯上げた たぬてぃに目を輝かせられると、

「わかった。何をして遊ぼうか?」

と、言ったアルトの顔は綻び、たぬてぃをあやす事にした。

 そんな たぬてぃは本日もフード付きのポンチョを着ている。

 本日は夏空の様な涼し気な青色だ。

 たぬてぃは精霊だが、マナが豊富な精霊はこの様に服を着せたり、普通に触る事が出来るのである。

 そして、たぬてぃは全身が薄桃色で耳先と両足の先、

それに尻尾の先と鼻の周りが茜色の猫の姿をしている。

 さらに、つぶらな青い瞳に、高さは大体一五センチメートルぐらいと言った処か。

 たぬてぃはそんなにスタイルは悪くないが出かける際はいつも体のラインを隠しており、

この様な体の特徴はふっくらした足先しか見る事は出来ないのである。

 そんな たぬてぃを一五分程度だったが、アルトはあやした。

 すると、たぬてぃは満足していたが、

(先輩……。やはり、僕を頼ってはくれないんですね……)

という考えがアルトにはあり、浮かない気分だったのである。

 そう、今日一日ラニーニャを見ていてアルトは気付いていた。

 ラニーニャの様子がおかしいという事に。

 だから、アルトはラニーニャに少しでも良い所を見せたかったが悉くジャップに阻止されたのだ。

(まあ、僕じゃ頼りないから仕方がないな……)

 傷心のアルトが溜息をつくといつの間にか たぬてぃは床で眠っていた。

「たぬてぃ君。寝るならもっと良い所で眠らなきゃ」

 その たぬてぃをアルトが抱きかかえると他の部屋でラニーニャの目に光るものが見えた。

 それに気づいたアルトは たぬてぃを抱きかかえたままその部屋に駆け混む。

「ああーーーっ!? ジャップ!! 君は先輩に何をしたんだい?」

 そこでアルトはこの上なく大声を出した。

 そして、ジャップに詰め寄った。

「ごめん。何もされてないよ。唯、ジャップ達が手伝ってくれた事が嬉しかったの」

 だが、その光るものを拭ったラニーニャは笑ったのである。

「そうだぞ!! 俺は姉貴を泣かせたりしねえ!! 失礼な奴だな!!」

 すると、眉間にしわが寄っているジャップからアルトは髪をグシャグシャにされてしまった。

「こ、こらっ!? 髪が滅茶苦茶じゃないか!! やめたまえ!!」

 そんなアルトがジャップから離れながら髪を整えると、それにびっくりした たぬてぃは逃げた。

「濡れ衣を着せたアルトが悪い!」

「君は乱暴な所があるだろう? 疑われても仕方がないんじゃないのかい?」

 それから鼻で大きく息を出したジャップに右眉が上がったアルトは指摘する。

「うーん……まあ、そりゃそうだが……モグモグ……」

 その指摘を素直に認めたジャップだったがその口は妙な動きをしており、

その手にはある物があった。

「あっ!? こ、こらっ!! 何を勝手に食べてるんだい?

 それは僕と先輩が一緒に選んで買った茶菓子だぞ!!」

 アルトはジャップの手にある茶菓子を指差しながら怒鳴った。

 そう、ジャップはアルトがラニーニャ都選んで購入した茶菓子を食べていたのだ。

 だが、

「すまん。腹が減ったんでな!」

と、笑顔のジャップは悪びれる事はなかったのだ。

「どうするんだい⁉ 折角、先輩が買ったのに!!」

 そのジャップにアルトの怒りは増していく。

「気にしないで。アルトのおかげでいっぱい買えたし!」

 それでもラニーニャはにこにこしていた。

「先輩はジャップに甘すぎます。偶には厳しくしないと彼の為になりませんよ?」

「いいの。ジャップにはいつも頼ってばかりだから」

「おう。姉貴はいつも俺を頼ってくれてるんだぜ?」

 そんなアルトは色々と忠告したが、ラニーニャにもジャップにも通じなかった。

 それどころかジャップはさらに調子に乗ってしまったのである。

(全く、先輩は甘すぎる! 僕の忠告を聞いてほしいよ!!)

 そんな二人を見たアルトはイライラしたが、

「そ、そうなんですか……」

の一言しかアルトの口からは出なかった。

「そう言えばアルト。お前、姉貴に何か言いたい事があるんじゃねえか?」

 すると、ジャップから不意に聞かれる。

(僕が先輩に言いたい事? そう言えば、何かを言わなきゃいけなかった様な……)

 アルトは暫く考えた。

「そ、そうだった!!」

 それから大切な事を思い出したアルトはしゃきっとする。

(先輩にお詫びとお礼を言うんだった!! ジャップめ、偶には良い事を言う。感謝するよ!)

「何?」

 そんなアルトが心の中でジャップに感謝していると

不思議そうな顔をしたラニーニャから見つめられた。

(え、えっと……。何から言い出せば良いんだっけ? 調べたんだけど、ド忘れしてしまった!?)

 そして、アルトが思い出そうとしたその時だった。

「あの、こんにちは」

 いきなりケレスが部屋に入って来たのだ。

「おっ、ケレス。どうした?」

「三人共、何してるんだ?」

「姉貴の手伝いだ。それに、アルトが姉貴に会いたいって言うからさ。連れて来てやったのよ!」

 そして、ケレスと話していたジャップはアルトが恥ずかしくなる事を平気で言ったのだ。

(あぁーー、もうっ!! 兄弟そろって僕の邪魔をするんだから!!)

 なので色んな感情が駆け巡っているアルトは顔が赤くなってしまった。

「先輩に用があるだけだったんだけど……。何で、君までいたんだい?

 話が出来なかったじゃないか、ジャップ!」

 だが、それを隠す為、アルトはジャップに八つ当たりをした。

「まあまあ、いいじゃないか! 手伝いも終わった事だしさ!」

「いったいな! 全く、君は乱暴なんだから!」

 すると、ジャップからアルトは左肩をバッシッ!と、叩かれる。

 そこから発生した痛みでアルトの眉間にしわが寄った。

「二人共、ありがとう。今度、何かお礼させてね?」

「先輩!? そんな、礼なんていりませんよ!!」

 そんなアルトだったがラニーニャの言葉を聞くと、その顔は綻んだ。

「おっ! じゃあ、姉貴、俺達にアップルパイ作ってくれよ! アルトにも、食わしてやりたいし!」

(ア、アップルパイ!? しかも、先輩の手作りだって!!)

 さらにジャップのその提案でアルトの胸は高鳴る。

「いいよ。でもアルトはそれでいいのかな?」

「そ、そんな!? 僕こそ、作ってもらえるんですか?」

 それからラニーニャにじっと見つめられたアルトは真面にラニーニャの顔を見れず、

指が勝手に遊び出してしまった。

「勿論よ。任せて、アルト!」

 だが、ラニーニャは微笑んでくれた。

「姉貴、俺の分、忘れんなよ!」

「わかってるって!」

 そんなアルト達の間にジャップが割り込んでもラニーニャは快く引き受けてくれたのだ。

「ケレス君、ところで、どうしたの? 何か用があるの?」

 それからラニーニャはケレスに目を転がす。

 すると、

「姉ちゃん、ただいま!」

とだけケレスは答えたが、その顔は何かを言いた気だった。

(ケレスの奴……。何か言いたそうだけど、あえて言わないのか……)

 ケレスを見たアルトはそう分析した。

「おかえり、ケレス君。お疲れ様!」

 そして、ラニーニャもそのケレスの言葉を聞いて嬉しそうだった。

(先輩もケレスがあえて聞かなかった事に感謝しているんだ……。こういう事が家族には必要なのか?

 僕にはわからないや……。けど、婆やの言う通り僕は見守るよ。彼等は危なっかしいからね。

 ついでに、ケレスも見とかなきゃね! あんな顔をしてたら先輩が気付くだろうに。

 全く、少しはデリカシーを持つ事だね!!)

 そんな不思議な家族の優しさを見たアルトはこの事を心に秘め、

これから先そんな家族達と付き合っていく事にした。


 次回【一風変わった家族 ~秘密の計画~】

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