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番外編 龍宮 アルトの憂鬱  作者: 紅p
運命を変える者達
8/12

008 茶の味の心得……それは人を思う心!

 光の神殿から戻ったアルトはメイサの下、茶の稽古を行っていた。

 そこでアルトが点てた茶についてメイサが助言した事とは……。

 光の神殿での事件以降アルトの心は軽く、眉間にしわが寄る事も大分減った。

 それは、ケレス達との出会いが大きな要因である。

 特にアルトはラニーニャを尊敬し、しれっと光の神殿からの帰りに連絡先を入手していた。

 だが、それを入手する時とんでもない邪魔者が入っていたのだ。

☆*☆*☆

「アルト。今日は本当にありがとう!」

 宝珠の国に帰り着いてラニーニャとの別れ際にそう言われ、

「あ、あの、先輩! お願いがあります!!」

と、意を決して言ったアルトはラニーニャを見つめた。

「お願い? 私に出来る事ならいいよ」

「連絡先を教えてください!!」

 不思議そうな顔をしたラニーニャに瞳を強く閉じて頭を深く下げたアルトは頼み込んだ。

「何だ、そんな事なの? いいよ、私ので良ければ!」

 すると、ラニーニャは快くアルトの申し入れを受けてくれたのでアルトの顔は綻んだ。

 だが、それも束の間だった。

「おっ、じゃあ俺のも教えるぜ!! アルト、お前の連絡先を教えな!」

 そう、ジャップが割り込んできたのだ。

「い、いや、君のは別にいいんだけど……」

「まあまあ、アルト! 俺とお前の仲だ!!」

 そして、アルトは遠慮したが、ジャップから強引に連絡先を交換させられた。

☆*☆*☆

 アルトは自身の屋敷の自室で自分の携帯電話のアドレス帳を見ていた。

 それは勿論、隙間だらけだったアドレス帳に増えたラニーニャの連絡先である。

「先輩の連絡先……」

 それを見ていたアルトは嬉しそうに呟いたが、

「そ、そうだ!? よく考えたら僕は先輩にお礼を言ってない!!」

という事に気付き、

「ちゃんと言わなきゃ悪いけど……。こういう時は電話した方がいいのか?

 それとも、メッセージを送ればいいのか……。どちらにしても何て言えばいいのかわからない!?

 えぇっと……こういう事は何所で調べたらいいんだ?」

等々と悩んでいるとアルトの携帯電話が鳴り出し、アルトは思わず電話に出てしまったのである。

「おーい、アルト。元気にしてたか?」

 すると、それは陽気なジャップからだった。

「な、何で君が電話してくるんだ!?」

 なので叫んだアルトは電話を落としそうになった。

「昨日、連絡先を交換したからだ! それより、元気にしてたか?」

「何を訳の分からない事を言ってるんだい? 昨日、会ったばかりだ!! 元気に決まってるさ!!」

「それは良かった! じゃあな!」

 この様に電話の向こうのジャップは相変わらず陽気だった。

 そのジャップにアルトはイラついたが、ジャップはいきなり電話を切ったのだ。

「てっ!? こらっ! 勝手に切るな!! 君は何が言いたかったんだ?」

 そして、呆れたアルトがその電話に文句を言ったが、

当然その電話からはジャップの声は聞こえなかった。

 それから大きな溜息をついてアルトが携帯電話を机に置いた時だった。

「どうかなされましたか、アルトお坊ちゃま?」

 メイサがにこにこしながら部屋に入って来たのである。

「婆や、聞いてくれよ! いきなりさ……」

「話は茶の稽古の時で宜しくて?」

 そのメイサにジャップへの文句を眉間にしわを寄せたアルトは言いかけたがメイサに目配せされる。

「ああ、わかった……」

 それからアルトは茶の稽古を始めた。

 そう、アルトはメイサに頼み、もう一度初めから茶の心を学ぶ事にしたのである。

 それは、ケレス達との出会いでアルトが何かを掴んだ気がしたからだ。

 そんなアルトは茶を点て終わった。

「やっぱり、唯の緑汁だ……」

 その茶はいつも通りの茶だった。

 なのでアルトは肩を落とす。

「ほほほ。ですが味はとても宜しゅうなっております」

「と言う事は、以前のはもっと不味かったという事かい?」

 メイサの言葉でアルトの眉は下がった。

「そうですね」

「やっぱり、不味かったんだ……」

 メイサから即答されアルトは深い溜息をつく。

「いえ、そういう意味ではありません」

 だが、飲み終えた茶碗を置いたメイサは穏やかな顔をアルトに向けた。

「では、どういう意味なんだい?」

「何と言いましょうか……。味に優しさが生まれたという感じでしょうか?」

「味が優しいだって? さっぱりわからないよ」

「例えば、アルトお坊ちゃまは先程の電話の方を思って茶を点てたのでは?」

 首を傾げ続けるアルトにメイサはとんでもない事を言ったのだ。

「な、何を言うんだい!? 僕が彼なんか思う訳ないだろう?」

 すると、取り乱したアルトは正座を崩してしまう。

「ほほほ。では、先程 私に言いかけた事を話していただけますか?」

 そんなアルトはメイサに促されジャップについて話す事になった。

「……でね、彼は何度言っても僕を呼び捨てにするし髪を滅茶苦茶にするし 人の話は聴かないし、

勝手に僕に任せてくるし……。

 兎に角、彼は変わってるんだ!!

 この間だって一点集中で僕を信じて突っこんでいくし見ず知らずの僕に先輩達を任せたりするし……」

 メイサはこの様な愚痴塗れのアルトの長い話をずっと穏やかな顔で聴いていた。

 ちなみに、一点集中とは使用者のマナを己の一点に集中させ膨大な力を生む特殊な能力の事である。

 この一点集中をジャップは見事に扱い、光の神殿でクレイドールを破壊したのだ。

「そうでしたか……。

 ジャップ様はお優しい方みたいですのでアルトお坊ちゃまの茶の味がそうなったのですね?」

 話し終えたアルトはメイサから穏やかな顔のままで思わぬ事を言われる。

「婆や!? 僕の話を聴いてたのかい? どうして、彼が優しいってなるんだい?」

「ジャップ様はアルトお坊ちゃまの非礼を責めなかった……。

 そんな非礼なアルトお坊ちゃまを信じた……。

 これは、心が広く優しい方でなくては出来ませんよ?」

「婆や、そうかもしれないけど……結構言うね?」

 そして、アルトは反論したがメイサからすんなり返され、ショックを受けたアルトの眉は下がった。

「これは、失礼いたしました!」

 すると、メイサはほほほっと笑う。

「肩の力を抜いてジャップ様の期待に応え、そして頼りなされ」

 そんなメイサからアルトは助言された。

「婆や……。でも、僕は彼がわからないんだ。どうやって期待に応えたり、期待されるかなんて……」

「ほほほ。会ったばかりでわかるはずがありませんわ」

 そして、助けを求める様に見つめたアルトにメイサは優しい瞳を向けた。

「そ、そうだね! 一つの研究対象として彼を観察してみるよ!

 でも、電話を勝手に切る事は一生わからない気がする……」

「そうですね。電話の件だけは、私にもわかりかねます」

 すると、何かが吹っ切れたアルトとメイサはそこだけは同じ考えだった。

「では、次にラニーニャ様の事を思い、茶を点ててみてください」

「せ、先輩の事だって? え、えっと、そのぉ……」

 それからメイサは茶の稽古を続け様としたがアルトの顔は緩み、手遊びを始めてしまう。

 すると、そのアルトの額に扇子がバシッ!!と叩きつけられた。

「痛って!! 何するんだい!!」

 扇子をぶつけたメイサを額を押さえながらアルトは睨みつける。

「真面目になさい!!」

 だが、目尻が釣り上がっているメイサから叱られ、

ぐうの音も出なかったアルトはラニーニャを思い、茶を点てた。

 そんなアルトが茶を点てるといつもは泡はほとんど出来ないが薄っすらと泡が出来たのだ。

「婆や見てくれ、綺麗な泡が出来た!」

 その泡を見たアルトの声は弾む。

「そうですね。では、お味の方を確認させていただきます!」

 すると、メイサはアルトが点てた茶を一口飲んだ。

「ど、どうだい?」

「はい。今までで一番、美味しゅうございます。ですが……」

 それからアルトがじっと見ている中、感想を述べたメイサだったが何かを言えなかったのである。

「はっきり言ってくれ婆や! 僕は先輩に美味しい茶を飲んでもらいたいんだ!!」

「ですが、アルトお坊ちゃまはラニーニャ様に何か気掛かりな事があるのですね?」

 身を乗り出したアルトの心をメイサは見抜いていた。

「婆や……。君は何でもお見通しなんだね……」

「私で宜しければ話していただけますか?」

 一つ息を吐いたアルトはメイサに促されラニーニャについて話し始めた。

「……先輩は人に気を使ってばかりいてね。もっと自分にも気を使った方が良いと思うんだ。

 それにしても、先輩の力は凄いよ。僕なんか足元にも及ばない。

 でも、あの力は……」

 ここまで饒舌に話していたアルトだったが言葉に詰まってしまった。

 そう、イヴを救ったラニーニャの力は普通の治癒術の力ではない。

 そして、普通ではないラニーニャの力とは……。

 アルトには一つの答えがあったがそんな馬鹿げた事は人前で言えるものではなかったのである。

「あの力は?」

「いや、有り得ない事だから……」

 なので、チラッとメイサから見られたが視線を落としたアルトは答えられずにいた。

「見守ってあげなさい」

 すると、メイサからまた助言された。

「どういう意味だい?」

「ラニーニャ様もジャップ様も放っておけないのでしょう?

 話を聴いている限り、二人共、危なっかしいみたいですし……。

 そういう時にこそ、アルトお坊ちゃまが必要だと私は思います」

 首を傾げたアルトはメイサからまた助言を受ける。

「ぼ、僕が必要……!?」

 そして、そう呟いたアルトの胸は高鳴る。

「わかった。僕は先輩を見守るよ!

 ついでにジャップもね! 彼が無茶したら、先輩が気疲れしそうだから!」

「期待しております。では、今日の稽古はここまでです!」

 そんなアルトが胸を張るとメイサの言葉で本日の茶の稽古は終了した。

 次回【一風変わった家族 ~その付き合い~】

 次話から章が変わるよ~☆

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