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少年戦士と彼に憑依した女勇者の二人三脚行脚(連載版)  作者: 元々島の人


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青年フォルスター

6月6日改稿しました。

 十八歳位のスマートで落ち着いた青年。

 彼は無表情でマッギリールを見ている


 ナターリアは彼を見て知覚した。

「マーガスも感じてるけど私も感じる。外見でなく雰囲気が」


 マッギリールはにやりとして彼に言った。

「フォルスター、久しぶりだな」

 何か、また痛い目に合わせてやると言うような言い方だ。


 さらにマッギリールは続けた。

「やられに来たか」

 

 ところが、フォルスターはそれに対し言い返さない。

 表情も変えない。


 俺は唾を飲んだ。

 この時点で俺は異様な雰囲気を感じていた。


 彼の目がすわっているんだ。

 それは感情のままに激怒して怒鳴ったり、顔を強張らせ激しく睨むのと少し違う。

 

 冷酷さ。

 そう、ある種の冷めと無関心さを伴うような感情が目などから感じられる。

 

 落ち着いた無言の圧。

 怒鳴ったりギラリとにらむより遥かに怖い。


 冷たい殺気。

 彼にしかない怒りの表情と言うべきか。

 切れてるんじゃない、いってしまっている感じ。


 彼の異様な雰囲気に気づかないマッギリールが続ける。

「また打ち負かして下さいと言ったらどうだ?」

 しかしこの挑発にもフォルスタ-は乗ってこない。


 その二人の空気に俺もマーガスも入れない。

 いや厳密に言うと、二人と言うよりフォルスタ-が作る雰囲気だ。


 彼の目はマッギリールだけを憎んでいるんじゃない感じがする。

 もっと大勢の、多分魔王軍全員に向けられている。


 で、目もだけど、口も怖い。

 何かを言わんとしたくて唇が震えている。


 そしてついに彼は一言言った。

「魔王ザンブラーを出せ」

「あ?」

 

 沈黙の後、マッギリールは笑った。

「はーっはっは! おこがましいんだよ俺にすら負けた癖に!」


「お前の様な雑兵に用はない」

「あ?」


「俺は一人で魔王を倒せる様パワーアップして来た」

「何?」


「こっちから攻めこむ予定だった。手間が省けた。お前に連れて行ってもらう」

 俺は抑えたが伝わる殺気を感じた。

 

「……」

 マッギリールは言い返さなかった。


 マーガスは言った。

「あいつは昔、嫌な事を言われても無視していた。でも今はあんな事を言ってる」

 

 フォルスターは表情を変えないままだった。

 しかしにやにやしながら近づいてくるマッギリールをまるで蚊を払うように指で何かを弾く仕草をした。

 

 無表情で。

 かつ最小限の動作で。


 その時だった。

「え!」


「マッギリールの頬から血が!」

 切り傷がつき血がすすっと流れてきたのだ。

「フォルスターが空を手で払った圧で切ったと言うのか?」


 マーガスは唖然とした。

「い、一体」


 マッギリールは動揺を隠せなかった。

「こいつ……」


 フォルスターは一転ラセルには挨拶をした。

「遅れました、王子」


 彼がちょっとだけ礼儀正しくなった。

「あ、ああ」

 王子もそう返すのがやっとだった。


 そして、ついに彼と俺の目があった。

 俺は緊張し、思わず背筋を伸ばし大声で挨拶した。

「俺、快人です!」


 マーガスが紹介してくれた。

「こいつナターリアの友人らしいんだ」


「ん」

 フォルスターはちょっと分かった様にこくりとした。

 顎を引くだけで何か返事がちょっと簡単で無愛想。


 マッギリールは自分をおいて挨拶がいらんと感じたのかいきりたつ。

「勇者パーティめまとめてあの世に送ってやる」


 フォルスターはこれを受けさらに目を細くした。

 そして初めて剣に手をかけた。


 彼は冷徹な言い方をした。

「殺す」

「なにい~?」


「内なる衝動を抑えるのに苦労してるんだこっちは」

「意味がわからん」


「内なる衝動、つまり怨念、憎しみ、怒り、」

「何い?」

「ナターリアが死んだ原因の魔王軍は全て殺す。もちろん俺も死んだ方がいいほど罪は重いが」


 声は大きくないけど、すごい迫力と凄み。

 目がすわっていて怨念がこもってるのが伝わる。


 いや、自分自身さえ憎んでるようにすら見える。

 何かを悔いるように。


「いきがるな。返り討ちにしてやる」

 少し動揺しながら、マッギリールも剣に手をかけた。


 その雰囲気、いやフォルスタ-のそれに皆ごくりと唾を飲んだ。

 俺は入れなかった。

 まるで邪魔しちゃいけないみたい。

 

 そして、とうとう二人の切りあいは始まった。

 ぶつかりあった。


 ある意味楽しそうなマッギリール。

 また倒してやるとか言ってたから。


 しかし少し挑発に感情的になってる。

 さっきまでと少し違う


「あいつとフォルスター因縁あるの」

「うん、ちょっとね。前は彼の技効かなかった。かなりの力の差があった」


 無表情なフォルスター。

 だけど俺は感じた。


 切り合いが経過して三十秒。

 俺は剣道弱いけど明らかにフォルスターの方が強い。

 何となくなんだけど。


 余裕だったのに息を切らしだしたマッギリールに対し、全く無駄がないフォルスター。

「冷笑の二擊」


 フォルスターはこれをむかえうとうと構えた。

 フォルスタ-とマッギリール、二つの大きなパワーはぶつかりあった。


 ふいに彼が叫んだ。

「君、一緒に攻撃してくれ! こいつはここで倒す!」 


「は、はい!」

 俺は武器もなくがむしゃらになぐりかかった。

 まさか乱入してくれと言われるとは


「くっ!」

 フォルスターは焦るマッギリールの隙を見逃さなかった。


「うおお!」

 フォルスターの剣が一閃した。


 マッギリールはあがいた。

「貴様、どういう事だ? この前とはまるで別人だ。それ以前に仲間を乱入させるとは」

「確かに二体一は卑怯だ。だが貴様らは手段を選ぶ道理もない悪人だ。どうしても貴様を殺す」


 マーガスとナターリアは話した。

「強いんだけど何か剣が冷たい。態度とかも」 

「私もそう思う。二対一なんて前は嫌がってたわ」

 

 でも俺は感じた。

「彼は冷たいと言うより寂しげで辛そうに見える。大事な物を失いかけてる」


「そうね、何か辛そうな顔と目してるわ」

「前はもう少し力が抜けていた」


 強いんだけどあの人……

 ナターリアが亡くなった事が関係?

 

 そして俺はマッギリールの後ろから回り込み傷口に渾身のパンチを食らわせた。

「ぐっ!」


 その隙にフォルスターは凄い速さの剣を一閃した。

「ぐああ」

 倒れるマッギリール。


 ナターリアは驚いた。

「あのマッギリールを!」


 マーガスはフォルスターを褒めた。

「すげえぜ! お前どんな修行を」 


「アッサム様の元で修行した」

 淡々とした答えだった。


 俺が聞いた。

「誰?」

「私達の師匠のそのまた師匠よ」

「俺はナターリアを死なせた自分のふがいなさに激しく嫌悪した。だからあの方に教えを乞うしかなかったんだ」


「それほどまでに気にしてたのか」

「当然だ。チームワークでなく個々人の力を上げる必要性を感じたんだ。ところで君は」


「カイトって言います!」

「何故ナターリアは君の存在を黙っていたんだ意味がわからん」


「ともかく、これで新メンバー合わせて三人だ」 

「フォルスター、お父さんとお兄さん二人は元気か?」


「しばらく会ってないけど少ししたら会うよ」

「お兄さんにあんなにしごかれたのにか?」


「俺は全然恨んでないよ。『鍛えてくれた』と思ってる。前は俺が憎いんじゃないか、と解釈した事もあったけど。父上が何故か俺だけ可愛がったからかなとか」


 マーガスは耳打ちした。

「ところでフォルスターは元々クールでストイックで人間嫌いだったけどもう少し、何て言うか普通な感じだった。あいつの兄さんのせいで人格が作られたんだけど、

それがナターリアの死からすっかり変わっちまった。今はあまりに近寄りがたい。この世の全ての責任を負うみたいに」


「お兄さん二人がとても厳しいらしくてね。学校ではいつも辛そうで疲れてて話したがらなかったけど、あれでも皆に辛さを見せない様にしてたのよ」


 フォルスターは言った。

「そろそろ動きだそう。まず皆でアッサム様の元へ行き準備が出来たら拠点を奪回する」


「まだだあ……!」

 マッギリールは起き上がって来た。

「くっ!」


「ここは私がケリを付けたいわ」

「ナターリア」

 ナターリアの声が出た。


「この男には負けそうになった悔しさがあるの。だから今度こそは!」

「……」

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