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ハロー・ワールド

空は焼きたてのトーストのような色に染まっている。


かつて文明が謳歌(おうか)した土地は

今や鉄の骸と化した廃墟が広がる荒野になっていた。


「最悪最悪最悪……!」


少女——リアは泥にまみれたブーツを必死に動かし

生い茂る枯れ草をかき分けていた。


背後から聞こえてくるのは

草を踏みしだく機械特有の規則的な駆動(くどう)音。


『オートマトン・パスファインダー』


人類を管理・隷属(れいぞく)させるために放たれた

無機質な先兵。


チタン製の無骨な外装は光を反射せず

成人男性を上回る巨体は、見る者に圧倒的な絶望を与える。


その右手に収納された『ヒートブレード』が赤く熱を持ち

大気をジリジリと焦がしていた。


「……対象、個体識別番号なし。逃走を確認」

「捕獲フェーズを継続」


無機質な電子音声が響く。


リアは振り返らずに走り続けた。


彼女の向かう先。

そこはこの荒野で唯一機械たちが立ち入ることを拒む不可侵領域

『サンクチュアリ』


視界が開けた瞬間、リアの目に飛び込んできたのは

異様な光景だった。


荒廃した世界には似つかわしくない、巨大な桜の大樹。


その周囲には見たこともないほど鮮やかな青紫色の花々

アイリスが一面を埋め尽くすように咲き誇っていた。


「ここなら……!」


リアはアイリスの花を踏み越え、大樹の根元へと滑り込んだ。


追ってきた三体のパスファインダーが

サンクチュアリの境界線でぴたりと動きを止める。


彼らの左腕に装着された『パルスライフル』の銃口がリアに向けられた。


だが、彼らは撃たなかった。


センサーが激しく明滅し機械たちは

何らかの「内部エラー」に苦しんでいるように見える。


この場所に漂う特殊な干渉波。

それが彼らの論理回路を狂わせているのだ。


「……躊躇(ちゅうちょ)してる?なら……」

「これでもくらえっ!」


リアは腰のポーチからジャンクパーツを組み合わせて作った

『手製グレネード』を引き抜き

ピンを引きちぎって投げつけた。


「あ、やっば」


しかし、震える手から放たれたそれは無情にも標的に届かず

大樹の根元にある不自然な盛り土のすぐそばで爆発した。


ドォォォン!


土煙が舞い上がり、爆風がアイリスの花びらを散らす。

そして思いもよらない発見をした。


吹き飛ばされた土の中から現れたのは

土色に汚れた金属製の「(ひつぎ)」のようなシェルターだったのだ。


「は?なにこれ??」


リアが呆気(あっけ)に取られていると

パスファインダーたちがエラーを強制排除し

再び銃口を固定してきた。


リアは半狂乱になりながら

そのシェルターの表面にある古びた操作盤に(すが)り付いた。


「や、やばいやばいやばい!」

「なんでもするから神様おねがい助けて!!」


怒りと焦燥に任せ

リアが操作盤を強く叩くようにてのひらをかざした。


その瞬間。


『——生体認証:完了。ゲスト権限を確認』

『おはようございます、〇△×』


機械的な音声が、かつてないほど穏やかに響いた。

経年劣化のせいか音声は途中で切れてしまった。


「ふぇ……まじでなにが……」


プシュゥゥ、と重厚な排気音が鳴り

棺の(ふた)が内側から押し上げられる。


あふれ出した冷気の中から現れたのは

リアの予想を裏切るものだった。


そこにいたのは

自分よりも幼い12歳ほどの少女。


夜空に浮かぶ月を溶かしたような

透き通るような白銀の長髪。

そしてあまりに繊細(せんさい)で今にも折れそうな四肢(しし)


少女はゆっくりとまぶたを開いた。


その瞳は足元に咲くアイリスと同じ

深い青紫色をしていた。



はじめまして!


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お待ちしています(・ω・)

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