ある名無し門番の迷走
◇ 名無し門番視点 ◇
一時はどうなるかと思ったが、ルートさんの助けもあって、無事、第三警備隊の奴らから通行料を取り上げる事が出来た。
ざまぁみろ。
いつも、俺達に仕事を押し付けてるお返しだ。
だが、今回ばかりは、あいつらにも少しは感謝をしておこう。
おかげで、ルートさんと普段の一カ月分は、喋る事が出来たのだから。
あいつらを追い払ったルートさんが、ゆっくりとこちらに向かって来る。
さらさらの銀髪揺らして、陽の光に照らされた神々しい姿は、事務所で見かけるいつものルートさんとは違った良さがある。
「もう、大丈夫?」
「はい。フォローして頂き、ありがとうございます!」
「今回みたいな異常時は、しょうがないって思うかも知れないけどさ、あんまり、私達に頼りすぎても駄目だからね」
「わ、分かりました。マニュアル通りの対応で、これからも気を付けます」
「いやいや、そうじゃなくてさ、柔軟に対応してって事よ。結局、マニュアルばっかりだと、肝心の人としての対応力って奴が鍛えられないからさ、器の小さい男になっちゃうよ?」
「器の小さい……そ、それは困ります!」
「でしょ? 今ならまだ間に合うからさ、そんなマニュアル通りに生きてる、クソダサい男になっちゃ駄目だよ」
「は、はい。気を付けます」
「それに、その盾、似合って無いし眩しいから、職場に持ってこないでくれる?」
「は、はい! すいませんでした!!」
今日のルートさんは、あいつらに業務を邪魔されたからか、口調も、ちょっと厳しい気がする。
まるで、先程、カーマが言っていた冗談の様な口調だ。
「うん。じゃあ、この調子で後半も宜しくね。なんとか君」
「え? ……あっ、はい」
ルートさんは、そのまま、俺の名前を呼ぶ事無く、正門前を後にした。
どうやら、この前の給料授与式では呼んでくれた、俺の名前を忘れたらしい。
ルートさんの去った正門前は、トラブルを解決出来たというのに、沈んだ空気が立ち込めていた。
あの時、俺は、セルドの取引に乗った方が良かったのだろうか。
正門の受付をしながら答えを探すが、日が暮れても、どちらが、正解だったかは導き出す事は出来なかった。




