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あるバイト門番の燻り  作者: 日比乃 翼
第一部 第二章 元警備隊員の来訪
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ある警務隊長の飛翔

 ◇ オー・マワリ―視点 ◇


 気が付くと、遥か上空を浮遊していた。

 いや、岩石に吹き飛ばされた、とでも言った方が正しいだろうか。


 時計塔よりも、遥かに高い位置まで上がるのは、飛び慣れている私であっても、初めての事だった。

 難なく外壁を越えた私の目指す先は、街に侵入した空飛ぶ亜人の姿だ。


 跳び上がった際には、その姿を見失っていたが、段々と下降を始め、時計塔と同じ高さに差し掛かった頃、ようやくその背中を捉えた。


 幸いな事に、亜人は街の入口で、住民達の避難が終わった建物を、手当たり次第に荒らしていた。


(街の奥に入りこんで無くて、助かった)


 これなら、私にも勝機はある。

 もし、この作戦を伝えていれば、彼らは、猛反対しただろう。


 私は、端から着地など、微塵も考えていなかった。

 一度きりの捨て身で放つ奇襲攻撃。


 私は、この一撃に全てを賭ける。


「……【憑依(ひょうい)】……」


 私が両手で構えた警棒は、雷の魔力を纏って、空中で青白く輝いた。


「行くぞ。――うぉおおおおおおーーー!!!」


 私は、落下する勢いのまま、真上から亜人の首元に警棒を叩き込む。


「ぐわぁっ!? 何をっ!?」


 そして、落下しながら、私の警棒で怯んだ、亜人の足首に手錠を掛ける。

 勿論、その片割れは、私の左手をしっかりと固定していた。


「すまんな、亜人。私と一緒に落ちて貰うぞ!」


「き、貴様っ、俺に何をした!! 放せぇ!!」


「放すものか!! 私は、警務官だっ!! 【具現出力(ぐげんしゅつりょく)――帯電スパーク】!!」


 暴れる亜人に、手錠を通じて雷撃が襲う。


「止めろおおおおおおーー!!」


「大人しくしろおおおおおおおーーー!!!」


 私達は、共に雷を身に纏い、何度も互いの上下を入れ替え合いながら、時計下通りに急降下していった。


 地面が迫る中、私は、両手で力一杯に手錠を握り締めながら、近づいた地上から背ける為に目を瞑った。


 そして、私達を強烈な衝撃が襲う。





 感じた事が無い程の痛みに、咄嗟に足を押さえながら目を覚ますと、そこは、見知った場所だった。


「……ここは……ヤニー亭、なのか?……」


 辺りを見渡すと、天井と二階部分を貫いて、空の見える大きな吹き抜けが出来ている事以外は、良く知るヤニー亭の一階部分に酷似していた。

 そして、私の下敷きになっていたのは、ピクリとも動かない亜人だった。


 多分、即死だったんだろう。


 私も落下時に左足を付いてしまい、動かす事は叶わないが、無事に上半身を起こせたのは、間違いなく、この亜人がクッションとなって、衝撃を肩代わりしてくれたのだろう。


「……すまんな亜人。……だがな、攻めて来たのは、お前だ。……悪く、思うなよ。…………後は、頼んだぞ、馬鹿門番共……【具現出力(ぐげんしゅつりょく)――サンダー】」


 私は、手錠で繋がれた返事の無い相手に語り掛けながら、不自然に空いた吹き抜けに一筋の雷を放ち、その場で眠りに就いた。

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