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異世界でも老人は気難しい

登山好きの主人公が滑落した事で異世界転移!

ファンタジーの世界の魔法や魔物、神に悪魔になんでもござれない異世界でも登山目指して頑張る主人公の珍道中。

自分得を詰め込んだほのぼの冒険ストーリーです。

秋空の夕日が差し込む光と風が気持ち良い。

しかし足元には築地のマグロ競りの様に足元に転がっているサラマンダー達。目を回しているだけの様で一安心だ。

さて目的のサラマンダーは…


《コイツだ》


他のサラマンダーよりも赤色が濃く艶やかでメタリックな感じだ。背鰭が炎なんだが線香花火の様に小さいその炎は、赤く緋く仄暗い紅でルビーの様だ。じっと見ていると吸い込まれそうで手を伸ばしそうになる。

それを止めてくれたカッパン。


「契約してない者が触ったら炎に包まれるっス」


危なかった。

なかなか目覚めないサラマンダーに対して、ザックは炎を吐き出し丸焼きにし始める。


「ザック!!何やってんの!」

《コイツは炎属性だからな。目覚めの一杯ならひと丸焼きはちょうど良い》


恐ろしいことを言う。

しかしサラマンダーは目をパチパチさせて大欠伸。尻尾を振って上機嫌そうだ。


【おぉ…おおおお!コレはどういう…】

《説明してやるから静かにしろ》

【うむ、うむ!其方が枷を外してくれたのだな!感謝するぞ!】

「声でかい!」


騒音の中で大声張ってる時の様に声がデカい。

もう少し声を抑えてくれる様に言ってもこちらの声が聞こえていないのか、会話も上手く噛み合わない。


「耳の遠いお爺さんなんっスかね?」

「いや…コレ…多分…」

【しかしお主達の声がさっぱり聞こえんのだが、喋れないのか?】

《…すまん、やり過ぎた》


鼓膜破れちゃってるじゃーーーん!!

こんな衝撃で良く自分達無事だったな…と思いザックに聞くとシールドを張ってくれたそうだ。張っててアノ衝撃かよ!!

ザックが自分の中からゴソゴソ取り出した小さな小瓶をサラマンダーに一滴落とすと、透明な液体はサラマンダーに触れた途端、青紫の焔が登り消える。


《爺さん聞こえるか?》

【ん!?急に良く聞こえるようになったぞ?】

「ザックそれ何?」

《万能薬だ。効き目は抜群だな》


いつの間そんな物入れてたんだろう?

いやいや…考えるのはよそう…

ザック相手に常識は通じないのだから。


《さて爺さん、いったい何がどうなってこうなったんだ?》

【そうさな、何から話せば良いのやら】


爺マンダーは尻尾でカリカリと頭を器用に掻く。


【取り敢えず、ここから出て飯が食いたいわい。なにせ1000年食っとらんのでな】

「せ、1000年!?」

《じゃぁしっかり掴まりな》


ザックは定位置である自分の背中に貼り付き、カッパンは何故か自分をおんぶする。

爺マンダーは器用に尻尾立ちしてザックに掴まる。


《飛ぶぞ》


その瞬間、一気に上昇気流に乗って飛び上がる。

フワリ、ではなくゴウッという感じ。


「うぉあああああぁ!?」


飛び上がり自分の視界が七色に占領される。目の前には、ビックリした顔でこちらを見る七色の靄。

え!?なんで靄に顔があんの?!

落下していく自分を見下ろす七色の靄は手を振って漂っていった。

嗚呼…異世界って本当に凄い。

飛び上がった時とは逆に、着地は衝撃も無く気づけば地上に立っていた。


《じゃぁ爺さん、メシにするか》

【すまんな】

《相棒は枯葉、カッパンは枝拾って来てくれ》


言われるままに枝や枯葉を拾い集めると、ザックはファイヤースターターを取り出した。

ファイヤースターターとは、火花を散らすパーツのマグネシウム棒の「ロッド」と、それを削るためのパーツ「ストライカー」の二つで構成されていて、ストライカーでロッドを削り、その鉄粉を種火となる木くずなどの上にふりかける。次にストライカーとマグネシウム棒を使って火花を作り、木くずに着火する物だ。

所謂火打ち石なんだが、湿気に強いのでマッチより使い勝手が良い。


《サラマンダーの飯は炎だ。火起こしてやってくれ》

「え?魔法の方が早くない?」

《魔法の炎はコアの力が含まれないからな。自然の作る炎にコアの気が混ざり合いサラマンダーに吸収し易い炎になる》

「へー」


石で簡単な風除けを作りザックの中からティッシュも取り出す。何度も使っている物なので手早く削り、ストライカーでロッドを擦り火花を散らす。

ティッシュに火がつき枯葉を足し枝を焼べると、パチパチと乾いた良い音がしてきた。

あ〜ホッとするわ〜


【も、もう良いかの?】


うずうず、ソワソワした爺マンダー。


「はいどうぞ」


言うや否や炎は螺旋状になり爺マンダーのルビーの様に魅惑な小さい背鰭に吸い込まれていく。火が消えない様に慌てて枝を追加する。

途中何度か枝を追加しお腹いっぱいになったのか、爺マンダーは灰色の煙をゲップっと吐き出しご満悦の様子で頷いた。


【満足じゃ〜】

「はい、お粗末様でした」


折角なので起こした焚き火で自分も珈琲を淹れる。

ザックからポットとマグ、ドリッパーを取り出す。通常なら溶ける粉で我慢するんだが、チートザックがいるので本確定な珈琲を淹れちゃうもんね!

水もカッパンが出してくれるし、至れり尽くせりだ。


「はぁ〜落ち着く〜〜」


大自然での一杯はまさに贅沢品である。

そうこうしてる間に、もうあたりは黄昏時である。


《さて、爺さん経緯を聞こうか》


食後のひと休みって言葉を知らないのか、ザックは話しろとせっつく。


【話はまず1000年以上前に遡る】


…出来れば手短にお願いします。

と思ったのはきっと誰にも責められないはずだ。


昔話が始まった。



お読み頂きありがとうございます。

のんびりペースで更新していきますので、よろしくお願いします。

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