第六話
割れんばかりの頭痛に、俺は思わず眉をひそめ目頭を押さえた。
なぜこんな苦痛に見舞われているのか。
想定を下回る現状に、極度のストレスを感じ、体が悲鳴をあげているせいか。
はたまた薄暗い環境で、小さく書かれたこの世の終わりみたいな自己紹介文を読んだせいだろうか。
俺はその両方だと思う。
神器名の項目の時点であの威力なのだ、本文の方も相当なものだった。
クソ長文で、餃子の皮並みに薄い内容。
自分の容姿がいかに美しく可憐かとか、自分がいかに聡明で知識に富んでいるかをひたすら擦り続けている。
IQが五億あるとか書かれているが、もうその発想は馬鹿なんだよなぁ。
分かったことといえば、コイツは甘いものが大好物で特定の枕じゃないと寝つきが悪く、虫が苦手くらい。
しかしこの情報に少しだけ驚いている自分もいた。
ここだけの話、俺も甘党だし、枕変わると寝れないし、虫は嫌いなのだ。
自己陶酔にまみれたクソみたいな文章に対する不快感と、自分と似た感性に対する共感に板挟みになり何とも言えない感情が俺の中にあふれていた。
「……一応確認させてくれ。これお前が書いたんじゃないよな」
「今日初めてコレに触ったんですよ。書けるわけないじゃないですかぁ。それにコレって好き勝手に書き換えられるものなんですか?」
「いや、無理だ。無理なんだが……もし自分のこと書けって言われたらどう書く?」
「……コレみたいに書きますね」
実質コイツが書いたみたいなもんじゃねぇかよ。
十分近くスクロールし続けようやく俺のステータスがおかしくなった原因を発見。
神器スキル:逆転する黒白
遺伝スキルの能力を、反転させる。
この能力が悪さしてんのか。
俺の遺伝スキルはSTR、MAGのステータス上限を無くし、さらにステータス上昇に伴い追加で上昇値が貰える能力。
俺のもともとのSTRとMAGは大体2000くらいだが、スキルのおかげで13000ほど追加で盛れてる。
しかしこの追加分はあくまで遺伝スキルに付随しているもの。
それが見事に神器スキルと悪い方向に噛み合ってしまい、追加上昇分の13000が全てマイナスになってしまっている。
「ステータスの項目に戻ってくれ」
「うい」
再び表示された地獄と向き合う。
フォルツェ・エルドレ ♂
MP:91
筋力:-9999 -854
魔力:-9999 -979
VIT:1816
AGI:1937
LUK:5
あぁ、吐きそう。
最悪だぜ全く。
俺の気を知ってか知らずか、この女はクスクスと嗤ってやがる。
「なんかスゴイことになってますねこれ。このSTRやらMAGって何なんですか? マイナスになってますけどこれが正常な感じです?」
「なわけねぇだろ」
「でwすwよwねぇえw!」
「ふぅーーー! ふぅーーー!」
落ち着くんだエルドレぇ。シントウメッキャクだぁ。
マ……母さんも言ってじゃぇかダンジョンでは感情を乱した者から死んでいくと。
これは訓練……感情の手綱を握る訓練だぁ。
「なんかご主人様顔スゴイブサイクになってますよ。どうかしましたか? あれ、元々だっけ?」
「……えっと、STRとぉMAGが分かんないんだっけ? アジェナ君! STRってのはまぁ物理攻撃力とか筋力みたいなものだ。MAGは魔力だな」
「ふーん。でも筋力っておかしくないですか? マイナスの筋力とか立つことすらままならなそうですけど」
……確かにそうだな。マイナスの筋力とか自分の着てる服の重みにすら抗えなさそうだ。
でも俺は立ててるし服も着れてる。
いろいろと試してみる必要がありそうだな。




