サーペント
===時間経過===>残り時間 80分
まず、その場所は巨大な球形の空間だった。部屋・・・と呼ぶには広大すぎる空間で、直径1kmくらいあるんじゃないだろうか。
そして部屋の床・・・いや、この場合、底か? 底には水のような物が溜まっている。水のような、といったのはこれまでと違って底の液体は白く濁っており、沸騰しているのかぐつぐつ煮えたぎっているかのように気泡や湯気が立ち込めているからだ。
どうやら俺たちが出てきたのは部屋の丁度中間辺りの高さにある壁に空いた穴のようだ。穴・・・つまり、トンネルの出口からは水が滝のように流れ、底へと落ちていく。・・・なんか底の方で水がジュー!っと音を立てて蒸発しているような気がするが、気のせいか?
とりあえず、空中に静止している俺達には特に影響は無いが・・・あの液体の中に入るのは止めたほうがよさそうだ。
それより問題なのは部屋の中央付近に鎮座している超巨大なヘビがこちらを睨みつけていることか。どうやら、こちらを警戒しているようだが・・・コイツもデカイな。いや、胴体が長いというべきか? 尻尾の方が底の液体の中に埋まっているため全長はわからないが、今見えている分だけでも軽く500mくらいはありそうな怪物だ。・・・尻尾は熱くないのだろうか?
とにもかくにも【看破】で確認。
【バハムート・シーサーペント Lv.55】
胃にやって来た餌を消化する役割を持つボスモンスター。
【シーサーペント】・・・つまり、ウミヘビか。となると毒を持っている可能性が高いな。
そして、コイツも役割を持ったモンスター・・・しかもボス。胃の番人と言った所か。・・・なんで胃にいるのがウミヘビなのかはわからんが。
というかここ、胃なのか。となると部屋の底の液体は・・・
「・・・マスター、アルク様。アレヲ見テクダサイ」
「む?」「ん?」
ラグマリアが指差したのは俺達が来たトンネルの出口だった。そこから白い【半魚人】たちが・・・
「「「ぐぎゃぎゃーー!!」」」
・・・部屋の底へ落下して行く。
アイツら飛べないのか。そう言えば水面から跳ねてくる奴はいても飛行してくる奴は居なかったな。・・・って、え?
「「「ぎゃぎゃーー!!――!――!!」」」
液体の中に落下した【半魚人】たちが、ちょっと直視するのははばかられるグロい感じに・・・
「・・・消化されたのだ?」
ここが胃だって言うのなら、そう考えるしかないよな。となると底の液体は消化液なのか。
・・・俺たち、空を飛べて良かった。いや、ホントマジで。
しかし、そうなると別の疑問が出てくるな。
「あれ? でもあのヘビさん、普通に消化液の中に体半分くらい突っ込んでるのです?」
「「・・・」」
そうなのだ。あのくそでかいウミヘビ、体の半分くらいを消化液の中に埋めているはずなのに平然とこちらを睨んできやがる。そこから推測するに・・・
「キシャー!!」
「来るのだ!!」
と、そこでこちらの様子を伺っていたウミヘビが痺れを切らしたのかこちらに向かって来た。そして首を大きく仰け反らせる。
ブレスか? なら・・・
「【ブレイブシールド】!!」
俺は盾を張って防ごうとしたが、
「シャッ!!」
ウミヘビが吐いたのはブレスではなかった。粘着質の白く濁った液体・・・・
「!?【ブレイブシールド】が溶けた!・・・全員散開しろ!!」
【ブレイブシールド】が溶けきる前に全員、その場から離脱する。案の定、再度ウミヘビが液体を飛ばしてきて【ブレイブシールド】は完全に消滅した。・・・あの場に居たらやばかったな。
あのウミヘビ野郎・・・消化液を出すことができるのか。餌を消化する役割ってそういうこと? だからこその胃の番人なんだろうが・・・【ブレイブシールド】を溶かすとは厄介だな。
そして、それ以上に厄介なのは・・・消化液に浸かっても平然としていられるウミヘビの防御力だ。
「クルーッ!!」
「だうっ!!」
「攻撃シマス!!」
アーテルたち【眷属】組が反撃とばかりにウミヘビに攻撃を加えていくが・・・あまり効果があるように見えない。あの硬い鱗に弾かれているようだ。
ただでさえ厄介なボスモンスターに加えてあの防御力・・・制限時間さえ無ければ持久戦に持ち込んで、削って削って削り倒す所なんだが、ボスモンスター相手に制限時間内にそれができるか?
仮に制限時間内に、あのウミヘビを倒せたとしても・・・他にもボスモンスターがいる可能性は十分にある。あのウミヘビだけに構っていはいられない。
「・・・アルク、周囲の壁を良く見てみるのだ」
【グランディスチェイサー】にアーニャとテールを乗せたアヴァンが近寄ってきた。
言われた通りに周囲を良く見てみると・・・俺達が出てきたトンネル以外にもいくつか壁に穴が空いている。
・・・なんで胃に穴が空いてるんだ? 【バハムート】さん、ストレスでも溜まってんのか?
まあ、冗談はともかく・・・あれらの穴のどれかが出口に繋がっているということか?
「上手く出口に繋がる穴を見つければ、あのウミヘビを戦わずに脱出できるかも知れないのだ」
・・・確かに緊急クエストのクリア条件は制限時間内での【バハムート】からの脱出だ。ボスモンスターの討伐ではない以上、無理にあのウミヘビを倒す必要は無い。
しかし・・・どの穴が出口に繋がる正解なのかわからない以上、しらみつぶしに探っていくしかない。あのウミヘビがそれを大人しく見逃すか? あのウミヘビは俺達を完全に敵としてロックオンしているし、下手をすれば移動中の俺達を狙い撃ちしてくるかもしれない。
・・・足止めが必要だな。
俺はアヴァンとアーニャに自分の考えを伝えた上で、こう言った。
「あのウミヘビ野郎は俺とアーテル、アウル、カイザーで相手をする。お前達はその間に出口を見つけてきてくれ」
「「!?」」
カイザーなら・・・【クランメカロイド】なら、あの超巨大なウミヘビにも対抗できる。そして、それはカイザーがパーティに入っている俺の仕事だ。
「それは・・・二手に分かれるという事なのだ? しかし、アルクが自分でも言っていたように、一度はぐれてしまうともう合流できないかもしれないのだ」
「仮にアーニャたちだけで出口を見つけても、合流できなかったら時間切れになるかもしれないのです」
確かに二人の言う事ももっともであるが・・・
「リスクは承知の上さ。もう既にクエスト開始から30分以上・・・つまり、四分の一以上経過している。出口にもモンスターがいるだろうし、移動時間も考慮すると残り時間の余裕はあまり無い。今はこれがベストの選択だと思うぞ」
あのウミヘビを足止め出来ればそれだけアヴァンたちの出口探索がスムーズになる。無論、倒してしまうのがベストだ。俺も出口探索できるようになるしな。
「なあに、正解の出口さえわかればすぐに追いかけるさ。とはいえ・・・俺達が目指すのはクエストクリアだ。時間切れで共倒れなんてかっこ悪いし、万が一のときは俺達を置いて先に脱出してくれ」
「しかし・・・」
「でも・・・」
「迷ってる時間は無いぞ! アーテル、アウル、カイザー! 来い!!」
いまだ迷っているアヴァンとアーニャの背を押すように行動を開始する。
「カイザー! 【メカロイド】化だ!!」
「了解デス!」
俺の指示の元、巨大化していくカイザー。【クランメカロイド】の真の姿、アークカイザーへ。
「ここは俺達に任せて先に行け! アヴァン! アーニャ!!」
・・・一度言ってみたかったこのセリフ、まさかここで言う事になるとは(笑)。
(*・ω・)*_ _)ペコリ
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