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真なる武具

困惑する俺たちを余所にゼルエルは・・・


「この【不朽の槍】を元にしたこの槍は【器】としては申し分ないね。【力】が少し弱いけど・・・あとは【魂】が宿れば良い武器になるよ。こっちの刀二本は素晴らしい【魂】が宿ってるね。【器】は【不朽の刀】があるし、あとは【力】が加われば強力な武器になるよ」


なんか本当に鑑定家っぽく俺たちの武器を評価しだした。・・・言ってる内容は良くわからんが。


「一体、なんなんだ? 【器】とか【力】とか【魂】とか・・・」


わからないことは素直に聞くのが一番だ。聞けば答えてくれることもあるし、直接的なことは答えてくれなくても、ヒントをポロッとこぼす事もあるからだ。


「んん? 【真なる武具】は【器】を【力】で満たし、【魂】が宿る事で初めて真の力を発揮する・・・常識でしょ?」


・・・常識じゃねぇよ。初めて聞いたよ。


ガットだってそんな事言ってなかったし。


しかも言ってることが随分、抽象的だし・・・武器作成のヒントなのか?


ゼルエルの言葉から察するに・・・【器】っていうのは不朽の武器の事を指すみたいだな。より正確には破壊不能効果か。たしかにどんな武器だろうと必ず欲しくなる効果だし、【器】というか強力な武器の土台としては最適と言えるかも知れない。


となると【力】っていうのは・・・その武器の性能の事か。武器の性能を上げるのに必要なのは当然、素材だ。


つまりゼルエル風に言えば【閃槍アーディボルグ】は、【不朽の槍】という【器】に、【ミスリルタイト】やモンスター素材という【力】を加えてできた物・・・ということになる。


【力】が少し弱いっていうのはゼルエル基準で【ミスリルタイト】や使用されたモンスター素材では【力】が足りない、といったところか。もっと上級な素材が必要だと。


なら最後の【魂】っていうのは?


「【魂】ってなんだ?【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】にはその【魂】とやらが宿っているっていうのか?」


【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】だけはガットが作った武器ではなく、レイドクエストの報酬だった物だ。他の武器との違いはそれぐらいしか思い浮かばないが・・・


「そうだね・・・察するにこの二本の刀は、名のあるモンスターから勝ち取った物じゃないかな? だから、そのモンスターの【魂の欠片】が宿っていた。そして持ち主である君がここの二本の刀を使い続けたことで、その【魂の欠片】が成長し、完全な【魂】になった・・・って所だね」


・・・つまり、【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】には【ヤマタノオロチ】の【魂】が宿っているっていうのか? ・・・大丈夫なのか、それ? 突然、刀が襲ってきたりしないだろうな。


なんだか思わぬ話になってきたが・・・そうなると、モンスターのドロップ品にはそのモンスターの【魂の欠片】が宿っていて、使い続けていれば完全な【魂】が宿るってことなのか?


だが、そうなると・・・ドロップ品以外の武器には【魂】が宿る事は無いってことになれないか? しかし、さっきは【閃槍アーディボルグ】に【魂】が宿ればって言っていたしな・・・


「・・・【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】以外の武器にも【魂】を宿すことができるのか?」


「勿論さ。()()()()()()だけでどんな武器であろうと大事に使い続けていれば【魂】が宿るものだよ。現にその大剣や、弓、杖にも【魂】が宿りつつある。まだ完全じゃないけどね」


・・・衝撃の新事実。どうやら【豪剣アディオン 】、【聖弓レッドセラフ】、【魔杖ブルーゼブル】にも【魂】が宿りつつあるらしい。【閃槍アーディボルグ】に【魂】が宿っていないのは・・・まだ使い始めて日が浅いからか。


しかし、大事に使い続けた武器に【魂】が宿るなんて・・・まるで【付喪神(つくもがみ)】みたいだな。


ゼルエルの話をゲーム風に解釈すると・・・俺たちが使っている武器には熟練度みたいな隠しパラメータがあるんじゃないだろうか? それが100%になった状態のことをいわゆる【魂】が宿った、という状態なんだと思う。


ゼルエルが言う『始まりが違う』っていうのは、ドロップ品には【魂の欠片】が既に宿っている、つまり熟練度が最初からある程度溜まっている状態になっている、ということなんだろう。


【豪剣アディオン】よりも後に入手したはずの【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】の方が先に【魂】が宿っているのはそういう理由なんだろうな。


まあ、ゼルエルの話を聞く限り、早いか遅いかの違いがあるだけで、使い続けていればいずれ熟練度が100%になり、【魂】が宿るみたいだ。


それはつまり、【豪剣アディオン】もまだパワーアップの余地があるということだな。・・・しかし、そうなると【豪剣アディオン】にはどんな【魂】が宿るんだ? 想像できん。


「【魂】のあり方はそれこそ千差万別だよ。武器の形、属性、素材、出所、経験、そしてなにより持ち主の影響を深く受けるからね。現にこの二本の刀・・・【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】だっけ? 出所が同じでも、この二本にはそれぞれまったく違う【魂】を宿しているし、ね」


・・・ということは【霊刀ムラクモ】と【妖刀オロチ】に宿っている【魂】は元は【ヤマタノオロチ】の【魂の欠片】だったとしても、今はまったくの別物ということか。


「同時の刀の【魂】が叫んでるよ。今の状態では()()だ、と。自分の()()を発揮できない、と。【魂】に相応しい【器】と【力】が欲しい、と」


・・・ゼルエルは、まるで刀に宿る【魂】と会話しているかのように教えてくれる。・・・それも何かのスキルなのか?


「・・・なら、その【魂】に相応しい【器】と【力】を与えた物が・・・」


「そう、【真なる武具】ってわけだね」


今の話から察すると、【真なる武具】になって初めてその武器の本領発揮、ということになるみたいだ。少なくとも今時点の武器よりも強力なのは間違いないだろう。


「・・・君たちが身に着けている鎧もそうだけど、この大剣と弓、杖を作った者はすごいね。【器】も無く【魂】もまだ宿っていないのにこれだけの性能があるなんて・・・これの製作者ならきっと【魂】に見合った【器】と【力】を与える事ができるよ」


・・・良かったな、ガット。力と戦を司る【天使】にベタ褒めされたぞ(2回目)。


「それに、これだけの武器が【真なる武具】に到ることが出来れば、それこそ【神器】に匹敵する性能になるかも知れない。・・・末恐ろしいね」


・・・良かったな、ガット。力と戦を司る【天使】をも恐れさせたぞ。・・・良いことだよな?


とりあえず、これまでのゼルエルの話を総合すると・・・不朽の武器と上級素材、そして【魂】が宿った武器を組み合わせて合成すれば【真なる武具】・・・つまり、強力な武器ができるってことだな。


そして、それにはガットの協力が不可欠、と。


まあ、アイツなら喜んでやってくれるだろう。・・・そして熱中するあまり、引き篭もりになってヴィオレに怒られる、と。もう誰もが予想できる目に見えた流れだな。


「【器】に【力】、そして【魂】か・・・」


俺は誰に言うでもなく呟いたが、ゼルエルはしっかり聞いていたようだ。


「そうそう、大事な要素だよ。・・・武器だけじゃなく生命あるもの全てに、ね」


・・・ホワッツ?


怪訝な顔をする俺を無視して、ゼルエルは俺とアテナ、アルマを見比べる。


「・・・見たところ、君たちの【器】は既に限界まで強くなっているようだね。【力】と【魂】はまだまだ鍛えていけるけど、真の強さを望むのなら【転生】することをおススメするよ」


・・・今度は【真なる武具】の話を俺たちに当てはめてきやがったぞ?


この場合の【器】っていうのは文字通り肉体のことだよな。種族レベルがカンストしているからさっさとカンストしろってことか。


なら、【力】っていうのはクラスやスキルのことで、【魂】は文字通りプレイヤーの精神のことか。


クラスやスキルのレベルが上がり、プレイヤーのゲームテクニックが向上しても、肉体がついてこなかったら意味が無いって言いたいんだろう。


ふむ、こっちの例えは至極わかりやすい。


要するにとっとと【転生】して強くなれってことだな。


「言われるまでも無いさ。もっと強くなって、またリベンジしてやる」


「そうよ! 今度は簡単には行かないわよ!!」


「ええ、必ず戻ってきます」


俺たちの宣言に対し、ゼルエルは・・・


「ハハハ! それは楽しみだ! ・・・僕が本気で全力を出せる階まで、早く来ておくれよ?」


本気で全力のゼルエルか・・・それが何階なのかわからないが、いつか絶対辿りついてやる。


そう決意を新たにして俺たちは【試練の塔】をあとにした。


さあ、お次はいよいよ【進化の神殿】で【転生】だな!


(*・ω・)*_ _)ペコリ


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