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初見殺し

・・・


・・



===移動===>【試練の塔 ()F()


「なっっっっとくいかないわ!!!」


あからさまに怒りながら地団駄を踏むアテナ。はしたないから止めなさい。一応、女の子だろ?


・・・おうふ、一応ってなに!? って感じで睨まれた。口に出してないのに。


「・・・」


アテナとは反対に黙りこくったまま、されど明らかに不機嫌オーラを出すアルマ。


静かに怒るタイプだったんだな。しかし、心なしか周囲の空気が凍りつきそうな凍てつく波動みたいなのが出てるから落ち着いて欲しい。


現在、俺たちがいるのは【試練の塔】の()()だ。


21階に向かったはずの俺たちが何故、1階にいるのか?


それは勿論、負けたからである。


敗北し、全滅し、1階に戻され、悔しがって荒ぶっているアテナとアルマを見ている俺がいる。


・・・俺は悔しくないのかって?


まあ、今のレベルだと100階どころか50階まで行けるかどうかも怪しいとは思っていたし、どこかの階で負けることは覚悟の上だったから・・・それほどでもない。


「だから言ったのにー。油断しちゃ駄目だってー・・・ね?」


・・・案の定というか、1階にいたゼルエルが爽やかな良い笑顔で話しかけてくる。予想以上にお早い再会となったわけだが・・・コイツのしてやったりの顔がひじょーにむかつく。


悔しくは無い、悔しくは無いんだ・・・ただ目の前のしたり顔のゼルエルをぶん殴りたいだけなんだ。


とはいえ、それは明らかに八つ当たりだとわかっているので自重する俺。


ゼルエルの言うとおり、俺の油断が原因と言えなく無くもない気がしないでもないからだ(意味不明)。


・・・その原因・・・21階で一体、なにが起こったのか、回想でどうぞ。


===回想===>【試練の塔 21F】


「あれが21階の敵・・・か」


21階の中央に()()()はたたずんでいた。不気味なほど静かに、それでいてありえないほど存在感を出しながら。


「【グリムリーパー・レガルム Lv.71】・・・【神眼】でも名前しかわからないわ」


さっそくアテナの【神眼】によって相手のステータスを確認してもらう。レベルに関しては予想通りなのだが・・・


「【グリムリーパー】・・・【死神】ですか。確かに見た目はそのまんまですね」


そう、アルマの言うとおり、()()()は、黒い大鎌を持ち、黒いローブを全身に纏って宙に浮いている。そして黒ローブの隙間から垣間見える手と顔は骨・・・ガイコツというまさに【死神】といった様相だった。・・・残念ながらこのゲームの【死神】は、斬○刀を持った見た目人間なタイプではなかった模様。


まあ、それはともかく・・・あの【グリムリーパー】から感じるのは紛れもなく【神気】だ。【グリムリーパー】という名前からも・・・神様が相手ということだ。


「・・・全然動く気配は無いわね。こっちの様子を伺ってはいるみたいだけど・・・」


「アルクさん、どう攻めますか?」


これまでと同じく未知の敵、しかも神様相手というのがネックだな。しかし、及び腰のままでは勝機もつかめないわけで・・・覚悟を決めるしかない。


「・・・敵は一体、武器は近接タイプだ。各自、散開して取り囲んで遠距離攻撃で倒す」


あの【グリムリーパー】が持っている大鎌・・・かなりヤバイ感じがする。【グリムリーパー】本人より禍々しいオーラを発しているような・・・うまく言えないが、絶対にあの鎌による攻撃をくらってはいけない気がする。


なので各自バラけて、遠距離で攻撃するようにする。そうすれば鎌の射程には入らないだろうし、敵の注意も分散するから隙も見つけやすいだろう、という思惑だ。


俺はこの場から動かず、【グリムリーパー】と睨みあう。・・・まあ、ガイコツだから目が無いんだけどね。ガイコツ顔が俺のほうを向いてるから、多分・・・あとあのガイコツ顔、結構怖い。


俺が注意を引きつけている間にアテナたちは左右に展開し始めた。勿論、いざという時は即、動けるように慎重にだが・・・【グリムリーパー】は不気味なほど動かなかった。


皆で取り囲み完了してもまったく、だ。・・・俺たちのことなんて眼中に無いとでも言うのか? それとも・・・


しかし、このままにらみ合っていても埒が明かない。俺は全員に目線で合図を送ると、まずは俺から先制攻撃を仕掛ける。


「【ジェットソニック・ラッシュパンチ】!!」


無数の拳の弾幕が【グリムリーパー】に襲い掛かる。しかし、それでもなお【グリムリーパー】は動こうとしない。


そして、そのまま直撃しようかとした・・・その時!


「・・・消えた!?」


まるで空気に溶けるかのように【グリムリーパー】の姿が消えてしまった。拳の弾幕は空を切って素通りしていく。手ごたえは無い。


しかし、その直後・・・


ザシュ!!


「・・・え?」


背後から聞こえた鈍い音・・・そして違和感。


それを認識したと同時に、急に手に、足に力が入らなくなり・・・俺はその場に崩れ落ちた。


これは・・・?


「アルク!!」


「アルクさん!!」


アテナとアルマの声が聞こえるも顔を上げることすらできない。


「クルー!!」


「だう!!」


「マスター!!」


アーテル、アウル、カイザーの声も聞こえたが・・・直ぐに聞こえなくなった。


まさか・・・やられたのか? HPが0になったからアーテルたちの【召喚】を維持できなくなった?


だが、この俺がこうも簡単に・・・


崩れ落ちる俺の視界の片隅に・・・大鎌を振り下ろした【グリムリーパー】の姿が映った。


・・・俺の背後に・・・ワープしてきたのか?


そして・・・あの大鎌の能力は・・・【即死】効果・・・か?


・・・くそったれ。


ガクリ。


===回想終了===>【試練の塔 1F】


その後、急に戦力が半減した上に、ワープで消えたり現れたりする【グリムリーパー】と【即死】効果を持つであろうあの大鎌の前に、アテナもアルマもあえなく撃沈。


めでたく全滅にあいなりましたとさ。


そして俺たちは1階まで強制送還され、冒頭に至るというわけだ。ちなみにアーテルたちはまだ再【召喚】していないのでこの場にはいない。


「ひどい初見殺しだったな」


いくらなんでも、あんなに簡単にあっさりさっくりざっくりやられるとは誰が思うだろうか?


「アハハハハ! 【グリムリーパー】はこの塔でも5本の指に入るくらい()()()()()()敵だからね! 21階で当たるとは、君たちもついてなかったね!!」


・・・強い敵、ではなく難易度の高い敵、ね。確かにあれは予め知っていないと戦うことすら難しいだろう。・・・それにしても【グリムリーパー】が自分の仇を取ってくれたからなのか、ゼルエルが上機嫌だ。・・・やっぱりむかつくな。


「次回に向けてアドバイスしておくと【グリムリーパー】の出現ポイントはパターンがあるよ! それと鎌の【即死】効果は一度使うと再使用にインターバルがあるよ!」


なぜかアドバイスをくれるゼルエルだが、これも管理人の仕事らしい。ゲームなんかで良くある、クリア出来なかった人向けの攻略のヒント的なやつ。


しかし、なぜだろうか? ありがたいアドバイスのはずなのに、次に向けて頑張ろうっていう気より、それを先に言えって気になってくるのは。


・・・ふぅ。まあ、【即死】させてくる敵がいるとわかっただけでも収穫か。


【グリムリーパー】に対しては散開したのが失敗だったな。近くに仲間がいれば、迎撃なり蘇生手段なり取れただろうに。そこまで想定していなかったのは・・・油断と言えば油断か。


どちらにせよ【即死】対策・・・いや、【即死】を含めた状態異常対策は必須だな。


もっと上階に上がればもっと厄介な状態異常を使ってくる奴もいるかもしれないし。


しっかり準備を整えた上で、またいつかあの【グリムリーパー】にはリベンジしてやる。

(*・ω・)*_ _)ペコリ


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