起きたことを知る
ホーム内の探索を終えて戻って来たカイザーたちに礼を言い、まだ用事があることを伝えた上で自室に篭る。
とりあえず、何があったのか知らないことには動きようがないからな。
さっそく【スタッグ君】に記録された映像を確認する。
映像は・・・倒れていたアーテルたちに駆け寄った所からだな。
この後、ホームの扉が開いたと思ったら地面から出てきた鎖に捕まって、さらにアニスが出てきたんだよな。
さらにその後、アテナとアルマを抱えたアギラが出てきた・・・こいつら、人のホームの中で一体なにやってたんだ? さっき見て回った感じだと異常は無かったし・・・やはりアテナとアルマに何かしたのか?
この後にジェスター(偽)が・・・空から降ってきた? いや、ホームの屋根に隠れて様子を伺っていたのか・・・そしてタイミングを計っていた、と・・・どうやら俺は物の見事に罠にはまってしまっていたようだな。
ジェスター(偽)に【弱体粉】をかけられて身動きが取れなくなった所で、アニスに【ガティアス】の核を埋め込まれて、意識を失って・・・ここからだな。
画面の中の俺は胸に埋め込まれた【ガティアス】の核、そこから放たれる黒いオーラに包み込まれようとしていた。室長さんの時もそうだったが・・・正直、見ていて気持ち悪いな。
「さて、これで目的は達成ですか」
アニスが仕事をやり終えたかのように言う。
「ヒャハハハハ! 案外あっけなかったなぁ、ア・ル・ク・く~ん?」
ジェスター(偽)も意識を失った俺に話しかける。・・・どうでも良いがかなりムカつくな、こいつ。
「・・・」
アギラは黙ってその様子を見ていたが・・・
ピピピッ!!
「緊急事態発生」
アギラから謎の電子音と共にアギラが、感情を感じさせない平坦な声で言う。・・・緊急事態という割りに焦った様子が微塵も無いな。
「アギラ? 一体、どうし・・・え?」
アギラの言葉にアニスが俺を見て異変を悟る。
俺、というか俺に埋め込まれた【ガティアス】の核が点滅している。赤、青、黄、緑、紫、黒、白などなどバラバラの色合いで。俺の体を覆っていた黒いオーラも弾け跳んでしまった。
「おいおーい、ど・う・な・っ・て・ん・の?」
おそらく予想外の事態なのだろう、ジェスター(偽)も心なしか焦り気味だ。
「アギラ!? どうなっていますの!?」
「・・・システムメッセージを傍受・・・アルクの【固有能力】の覚醒を確認」
「なんですって!?」
・・・ん? アニスたちのこの焦りよう・・・【固有能力】とやらのことを知っている?
「【固有能力】の発動を確認・・・【ガティアスコア】、強制排出されます」
ボゴッッッ!!
・・・俺の体から【ガティアス】の核が飛び出した。同時に地面へと倒れこむ俺。・・・どうやら【ガティアス】に取り憑かれることは無かったらしい。
「・・・まさか、このタイミングで・・・」
「ヒャハハハハ! まったく運の良いヤ・ロ・ウ・だ・ぜ!・・・んーで、どうすんだ? こんなんじゃあ、コイツを操るなんて無・理・なんじゃねぇの?」
「・・・そのようですね。しかし、このまま彼を放置することもできません。・・・連れて帰りましょう」
・・・おいおい、今度は誘拐か?
「再度、【固有能力】の発動を確認」
「え?」
アギラの言葉にアニスとジェスター(偽)が倒れこんだ俺から距離を取る。だが、俺の方はというと・・・自分で言うのもなんだが、ピクリともしない。
「システムメッセージを解析・・・発動内容を確認・・・【魔龍覚醒】です」
「なんですって?」
アニスが振り返った。その先にいたのは・・・
「クルゥアアアアア!!!」
黒き魔龍のオーラを身に纏ったアーテルの姿だった。
何故アーテルが? 【魔龍覚醒】はHPが1割以下にならないと発動しないはずなのに・・・アギラの口ぶりからいって・・・【固有能力】とやらがアーテルの【魔龍覚醒】を発動させたっていうのか?
「さらに発動を確認・・・【剣鎧操作】です」
「だあああああああ!!!」
おお、今度はアウルが!!
アウルの叫びと共に【豪剣アディオン】と【功鎧アルドギア】がアウルの傍に現れた。俺の【収納箱】に入っていたはずなのに・・・しかもアウルが遠隔操作しているかのように鎧が動き、剣を構える。まるで透明人間が鎧を着て剣を構えているかのようだ。・・・だが、俺はこんなスキル知らないんだが?
「・・・私の【封印】を破りました、か・・・主が規格外なら【眷属】も規格外、ということですわね」
「おっ! 良いね良いねぇ! 健気にも主を守ろうってか!? だったら俺っちが相手をしてや・る・よ!!」
ジェスター(偽)の奴、戦る気か? 以前に会ったときのジェスターなら、今のアーテルたちに敵うべくも無いのだが・・・
「お待ちなさい」
しかし、そんなジェスター(偽)をアニスが止める。
「痕跡は残さないようにと厳命されているでしょう? 貴方が暴れれば辺り一体は火の海です・・・私がやります」
「・・・ちっ!!」
ジェスター(偽)が面白くなさそうにアニスを場に譲る。
「【封印の鎖】」
アニスが唱えると、地面から大量の鎖が飛び出してきた。その鎖が、アーテルを・・・アウルを襲う。
「クルアアア!?」
「だうううう!?」
二人が逃げる隙すら与えず、大量の鎖が二人を拘束していく・・・いた、拘束なんて生易しいものじゃない。何十、何百、何千という鎖が二人を丸ごと包みこんでいく。二人の姿すら確認できなくなるくらい、何重にも・・・
アーテル・・・アウル・・・
アニスの鎖の前に魔龍のオーラは消え失せ、【豪剣アディオン】と【功鎧アルドギア】も糸が切れたかのように地面へ転がった。
アーテルとアウル。俺の自慢の【眷属】たちに動く隙すら与えず完封したアニス。
さらに・・・
「【固有能力】の発動を確認。【メカロイド】、さらに【オーバーリミット】です」
「グオオオオオオ!!!」
アギラの言葉と共に、【メカロイド】化したカイザー・・・アークカイザーが立ち上がる。・・・搭乗者がいないはずなのに、動いている・・・しかも限界を超えた性能を引き出す【オーバーリミット】を発動した状態だ。
「【クランメカロイド】もですか・・・アギラ」
「了解」
今にも襲い掛かろうとしているアークカイザーの前に立ったアギラ。そしてアークカイザーに向かって掌を向けたかと思うと・・・
「【ラグナ・ショック】」
ドゴッッッ!!!
・・・アギラの掌から放たれたエナジー砲・・・そのたった一撃で・・・アークカイザーがバラバラに!?
「ヒャハハハハ! まったく、とんでもねぇヤツラだなぁ・・・だが、痕跡は残さねぇんじゃな・か・っ・た・の・か・い?」
「心配要りません。メモリーさえ消しておけば、【クランメカロイド】は放っておいても勝手に修復されます。・・・自ら死ぬ事が出来ないロボットですからね」
「ヒャハハハハ! ある意味、俺っちたちと同・じ・だ・ね・ぇ」
・・・何を言ってるのか分からんが・・・コイツラ、人のクランホームで好き勝手暴れやがって!!
「【固有能力】の沈黙を確認」
「こちらも落ち着きましたか・・・覚醒したばかりで長続きしないようですね。今のうちに・・・」
ピコンッ!!
そこにメッセージが入った音が・・・俺じゃない。アニスたちか。
「・・・残・念!! コイツは置いて戻って来・い・っ・て・よ!!」
「そんな・・・なぜ・・・?」
・・・どうも黒幕からのメッセージらしいな。その黒幕もどこかから見ているのか?
「・・・命令は・・・絶対・・・」
「・・・分かっています!!」
どうやらアギラもアニスも不服のようだが・・・撤退するようだ。アーテルとアウルを縛っていた鎖が解けた。二人は気を失っているのか、地面に倒れる。
「戻る前に記憶を封印しませんとね・・・アギラ、そちらの【クランメカロイド】のメモリーを消去してください」
「了解」
そういうとアニスは俺の頭に手を伸ばした。
「【記憶の封印】」
アニスが唱えると同時に俺、アーテル、アウルの頭部が光った。
アギラは・・・カイザーの頭部になにかを差し込んでいる。
・・・これで記憶を封印してなにもかも元通り、なにもかも無かったことにってことか、くそっ!!
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