疑惑と疑念
俺は全て思い出した・・・
ログインしてくるとアーテルたちが倒れていたこと・・・
アテナ、アルマと同じ顔をしたアニス、アギラに強襲されたこと・・・
さらにジェスター・・・いや、ジェスターの顔をした何者かが現れたこと・・・
そして【ガティアス】の核を埋め込まれて・・・
それから・・・それからのの記憶は無いな。
たしか、核を埋め込まれて意識を失ったようだから、ある意味で当然だが・・・
俺は胸の辺りをさする。
・・・特に何も無いな。当然ながら【ガティアス】の核が埋め込まれているなんて事もないし、アニスたちに操られているという自覚も無い。
「・・・アルク?」
そもそもアイツらはどこに行った? まさか、いまだにホームのどこかに潜伏してるなんて事は無いだろうな?
「・・・アルクさん?」
それに何で俺は今の今まで思い出せなかった? ・・・まさかアニスに記憶まで封印された? そんなバカな・・・だが、他に理由も思い至らない。
「おーい! アルク-?」
となると俺が今、突然思い出せたのは・・・【固有能力】とやらのおかげ? だがそんな項目、ステータスには無いんだが・・・
「どうしたんですかー?」
そもそも・・・【天醒者】・・・だっけ? いや【天醒:浄化】? だかなんだか分からんが使おうとした覚えは無いんだが・・・なんで発動したんだ? いや、確かに思い出せれば良いなぁとは思ったけど。
「ちょっと!アルク!!」
「おわっ!?」
思考の渦にずぶずぶと使っていたら誰かに肩を叩かれた。
「なんだよ、おっぱ・・・いや、アテナ」
「アンタ今、私をなんて呼ぼうとしたのかしら?」
ノーノー、俺は悪くない。ただ、俺がイスに座っている状態で、アテナが立って俺の肩を叩いてきたわけだから、俺の目の前にアテナさんの母性の象徴が来る形になっただけだ。俺は見たままを答えそうになっただけだから、俺は悪くない。
「皆さん、作業が終わりそうですよ? アルクさんだけ手が止まっていたので・・・胸をさすっているようですが気分でも悪いのですか?」
アルマも心配そうに話かけてくるが・・・うーん、どうもアニスとアギラの顔が頭の中をよぎって二人の顔を直視できん。そもそもこの二人はアニスとアギラのことを知っているのか?
それに俺がログインした時、アテナとアルマは俺より先にログインしていたはずだ。そこをアギラに捕まった・・・はず?・・・直接見てはいないが状況的にはそのはずだが・・・なぜか今はカイザーの話だと俺より後にログインしてきた事になっているっぽい。
・・・一体どういうことなんだ?
「・・・おいおい、アルマ。ここはゲームの世界だっての。状態異常にかかったわけじゃあるまいし、気分が悪いとかないって・・・ただ重大な事実に気づいてしまっただけだ」
「「重大な事実?」」
「ああ、実はな・・・」
「「「「「「・・・」」」」」」
二人はおろか、アーニャたちまで手を止めて俺の話に聞き入っている。
「本当についさっき気が付いたんだが・・・」
・・・ゴクリ。
誰かは分からないが真剣な様子に思わず息を呑んだ。
「・・・アテナよりアルマのほうが少しだけ胸がおおき」
ズビシッ!!!
「ぐああああ!? 目が! 目があああ!?」
アテナの目潰しをもろに食らい、思わず地面に転がってしまう俺。
「さあ、皆!このアホはほっといて作業を終わらせましょう!!」
「「「「は~い!!」」」」
・・・おおう、ご無体な・・・目から血涙が流れ出そうな俺をシカトするとは。
・・・自業自得? ・・・その通りだ!!
「だ、大丈夫ですか? アルクさん」
「あ、ああ。大丈夫だ」
なんとか薄目を開けると、唯一俺を気にかけてくれるアルマの姿が見えた。
アルマは優しいなぁ・・・胸の大きさと心の広さが比例してるのか・・・な・・・?
「・・・待て、アルマ。その構えた二本の指はなんだ?」
「・・・いえ、一撃では効果が無かったようなのでもう一撃必要か、と・・・」
・・・おうふ。
全然許されていなかったでござる。それどころか追い討ちかけようとするとは・・・俺が悪いですね、スイマセン。だからどうかその二本の指を下ろして下さい。
・・・ふーむ・・・いつもの二人だな・・・いや、確かにいつもより過激な気もするが・・・俺のせい?・・・俺のせいだな。
そ、それはともかく二人が何かを隠してるようには見えないな・・・もっともこの二人がアカデミー女優賞ばりの演技をしている可能性もなくは無いが・・・仮にアテナたちがアニスたちの仲間だった場合、なんで未だに【アークガルド】に残っているのかが分からない。
そもそも連中の目的は結局なんだった?
「・・・アルクさん? 地面に寝転がりながら真剣な顔で唸っても逃げ場は無いですよ?」
・・・おっと俺はまだ大ピンチな状態を抜け出せていなかったようだ。
「・・・気にしないでくれ。こうやって視点を変えると今まで見えてこなかった物が見えてくるようになるものなんだ」
「アルクさんはまずセクハラ発言を気にしなければいけないと思うんですが・・・そんな体勢で何が見えるって言うんですか? スカートの中とか言ったら・・・」
フッ、バカな・・・この俺がそんな下品な事を言うはずが無いじゃないか。
俺はクワッ!と(赤く充血した)目を見開いて言ってやった!!
「・・・足の細さではアテナの勝」
ズビシッ!!!
「ぐわぁあああああ!?」
目が!目が燃えるように痛い! 心無しか、視界が赤く染まってるような気がする!!
「さて、皆さん。そろそろ調べ物も終わるでしょうから解散にしましょう」
「そうね。アルマ、アーニャちゃん、アシュラちゃん? ちょっとデパートの方、見に行ってみない?」
「ハイなのです! アーニャも新しい調理器具を見に行ってみたいのです!!」
「わかったっす。ボクも練習場の拡張をしたいと思ってたところっす」
「ならば我は【機甲界】に行って来るのだ。これだけの資金があれば部品を買いたい放題なのだ」
「では僕も畑を見に【精霊界】に行きますね。ついでに店にも寄って買う物も見てきます」
・・・こうして我がクランのメンバーたちは思い思いに会議室を後にしていった。・・・俺一人を残して。なんか悲しい・・・自業自得である事は分かってるんだけどね?
「・・・さて、と」
俺以外のメンバーがクランホームを後にしたのを確認して立ち上がり、中庭に出る。アテナたちは【眷属】たちも連れて行ったようで、今現在クランホームに残っているのは俺と中庭で遊んでいたアーテル、アウル、カイザーだけ・・・のはずだ。
「クルッ!」
「だうっ!」
「オ疲レ様デス」
「おう」
飛びついてくるアーテルとアウルを受け止めつつ返事を返す。・・・やはりアーテルたちにも特に変わった様子は無いな。【看破】で見てみてもいたって正常のようだし・・・
「・・・なあ、カイザー、アーテル、アウル。確か俺が来たときはカクレンボをしていたと言っていたな? それは良いとして本当に俺以外は誰も来てなかったのか?」
俺の質問に三者三様の顔しているが・・・誰も心当たりは無いようだ。
「敷地内ニ誰カ立チ入レバ、センサーニヨリ補足可能デス。本日、最初ニセンサーデ補足シタノハ、マスターアルクデ間違イアリマセン」
・・・うーん、少なくともカイザーはアニスたちの侵入を認識していないということか。・・・いや、俺たちが覚えていないようにカイザーのメモリーも消去されている可能性がある、か?
「ヤハリ、オ気ニナルノデスカ?」
「・・・ああ、自分が覚えていない内にっていうのがどうも、な。その間に何かあったんじゃないかってな。・・・もしかしたらラングかガット辺りがイタズラ目的で忍び込んでいた、とかな」
・・・すまん、ラング、ガット。多分、お前らはまったく何の関係も無いとは思うが槍玉に挙げさせてもらう。
「・・・」
難しい顔をするカイザー・・・いや、ロボットだから表情は変わらないんだけどね? なんとなく雰囲気で。
「まあ、無いとは思うが念のためホームの中を見回ってきてもらえるか? 俺の方でもラングたちに聞いてみるから」
「・・・了解シマシタ」
「クルッ!!」
「だうっ!!」
俺の言葉を聞いた三人がホームの中に入っていく。
・・・悪いな、三人とも。ホームの中は中庭に出るまでの間に既に俺が見て回って異常は無いことは確認しておいた。ないとは思うが、万が一、アニスたちが中に潜伏していて出くわしたら事だからな。カイザーのセンサーに今もって引っかかっていない所を見るともう既に引き上げたようだが念のため、な。
今のうちに、と。
俺は噴水の前まで歩いていき、噴水の中に手を突っ込む。
そして中にあった物を回収する。
やっぱりここにあったか。その物を引き上げ・・・
「透明化解除」
見えるようにする。
そこにあったのは・・・クワガタムシ型メカ【スタッグ君】だった。
説明しよう!【スタッグ君】とは!!
アヴァンが開発した【ビートル君】と同じ小型偵察メカなのだ!!
ただし、【ビートル君】とは違って【スタッグ君】は完全偵察型。空中水中地中宇宙と環境を選ばず活動でき、さらに透明化までできるという素晴らしさの反面、戦闘能力はまったくの0! そのため、トーナメントで活躍させる事はできなかったのだ。
・・・だが、今こそその【スタッグ君】が役に立つ!
この【スタッグ君】に一部始終を録画させていたから俺が意識を失ったあとのことも記録されているはずだ!!
・・・思い出さなかったらこのまま噴水に沈んだままだったんだよなぁ。すまん【スタッグ君】。
・・・いつの間に【スタッグ君】を放っていたのかって? アーテルたちが倒れているのを確認して近寄ったときだよ。念のために・・・な。
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