切り札は最後の最後まで・・・
『おおーっと、ラング選手の【魔法】とアルク選手の【魔法】のぶつかりあいだぁー!!』
『【魔法】の性質などもありますが・・・近い威力同士の【魔法】がぶつかり合うとあんな風に押し合いになることがあるんです。しかし、こんな高威力の【魔法】のぶつかり合いは滅多に見られませんよ』
『ということは~、一体どっちが勝つんですか~?』
『・・・分かりません。どちらかの選手が気を抜いた瞬間、均衡は崩れるでしょう。あるいは・・・』
虹色に輝く光の玉と炎の塊が、互いを押しつぶそうと火花のような物を散らしている。
・・・色合いで負けてる気がしないでも無いが・・・威力では互角だ!!
「・・・驚いたね。【エレメンタルバースト】は【上級魔法】だよ? なのにここまで対抗できるなんて・・・」
「それはこっちのセリフだ。最後の最後にとんでもない物出してきやがって・・・こっちは切り札の一つを使ったんだぞ?」
【魔天の叡智】はいわば【魔法】版の【勇天の一撃】。つまりトドメを刺すための必殺技だ。
【フレイムバースト】自体は【中級魔法】だ。本来であれば【上級魔法】には太刀打ちできないが・・・【魔天の叡智】の効果で上級以上の威力を出す事ができる!!
アルマたちにも秘密のとっておきだったのに・・・ついでに、今のはメ〇ゾーマでは無い〇ラだ、みたいなセリフを言ってみたかったのに。
ここで使わされた上に、使ってもなお倒しきれないとは・・・
「それこそこっちのセリフだよ・・・まさか【魔法】対決でここまで接戦になるなんてね。自信無くすよ・・・」
・・・ラングの奴は自嘲的に呟くが・・・実際、追い詰められているのはこっちの方だ。
【魔天の叡智】は全MPを消費するスキル。その分威力は増大するが・・・後が続かない。何せMPが0なんだからな。使った直後は他の【魔法】も【俊天の疾走】も使えない。
対してラングの奴は・・・【魔道書】でストックしていた【魔法】を消費しただけで自身のMPはほとんど消費していないだろう。
【エレメンタルバースト】とやらをもう一発撃つことは出来ないようだが・・・他の【上級魔法】は使える可能性が高い。
「・・・ッ!!」
「ちぃぃぃ!!」
ギシギシとまるで反発しあう磁石を無理矢理くっつけようとした時のような激しい抵抗を感じる。気を抜いたら腕ごと持っていかれそうだ・・・それに負けず、気合を入れて【魔法】を押し出す。
もはや、俺の【魔法】もラングの【魔法】も原型を留めていない。風船を握り潰そうとしているかのような、今にも破裂してしまいそうなほど歪な形だ。互いに反発し合う二つの【魔法】のぶつかり合いは・・・限界を迎えようとしていた。
・・・そして・・・
バアァァァァァァン!!!!
「うわぁっ!?」
「うおっ!?」
二つの【魔法】は大爆発を起こしながら弾け飛んでしまった。
当然俺も、ヒュントの背に乗ったラングも吹き飛ばされる。
「くうぅぅぅ・・・互角の【魔法】がぶつかり合うとこんな事になるのか・・・いや、それより追撃を・・・」
そんなラングの言葉が聞こえてきた。・・・吹っ飛ばされてもなお冷静なのはさすがだと思うが・・・どうやらそこまで距離は離されなかったらしいな。
・・・俺はニヤリと笑った。なぜなら・・・
「だう!!」
「え・・・?」
ラングたちの直ぐその場には予め召喚しておいたアウルがいるのだから。
『おおーっとおおお!! 何時の間にか、ラング選手の近くに可愛らしい男の子がぁー!!』
『・・・』
『ガンミしてますね、ミューズさん』
「何時の間に・・・」
「お前が放った【白虎】を斬って爆煙を作った時に、だ」
あの爆煙の中、どさくさにまぎれてアウルを【限定召喚】し、さらに煙にまぎれて周りこむように指示しておいたのだ。案の定、俺にしか目が行ってなかったラングは気が付かなかったらしい。
「そういうわけで、やれ、アウル。【オービットソード】!」
「だーうー!!!」
アウルの周囲に現れた20本の光の剣が一斉にラングに襲い掛かる。
さしものラングもこの不意打ちには対応できないはずだ。
そう思ったのだが・・・
「クワーーーー!!!」
「ヒュント!?」
突如としてラングを背に乗せていたヒュントが、あろうことかラングを振り落とし・・・アウルに向かって特攻を仕掛けた!
それはつまり・・・
「だう!?」
「ク、クワー・・・」
・・・アウルの放った【オービットソード】に向かってその身を晒すということだ。結果として全ての【オービットソード】がヒュントの体に突き刺さる。
「ク・・・ワアァァァァ!!!」
それでもなお、ヒュントはアウルに向かって突進をやめない。
「まずい! 戻って来いアウル!!」
「だう!?」
・・・間一髪で回避したアウルが俺の方に近寄ってくる。
・・・アイツ、身を挺してラングを庇いやがった・・・
最後の力を振り絞ったのだろう、突進が空振りに終わったヒュントは光となって消えていく・・・
「ヒュント・・・」
地面に降り立ったラングはその光景を悲しそうに見ている。
・・・敵ながらアッパレな奴だ。だが俺も手を緩めるわけには行かない。
「だう・・・」
「分かってるさ、アウル・・・行くぞ!」
機を逃さず攻撃を仕掛ける。・・・それだけ強敵だからだ、ラングも・・・ヒュントも。
「終わらせるぞ! ラング!!」
「・・・終わり? とんでもない。ヒュントが身を張って庇ってくれたんだ、無駄にするわけないだろ?【限定召喚】!!」
「なに!?」
この期に及んでさらに召喚だと!?
「おいで! ヴァーユ!!」
「ひゃうーー!!」
ラングの召喚によって現れたのは・・・緑の髪と目をし、緑の服を身に纏った・・・アウルと同じくらいの幼い男の子だった。そんな男の子が・・・緑の風を身に纏いながらラングの隣に浮いている。
『今度はラング選手が男の子を召喚だぁー!!』
『・・・』
『何か言ってください、ミューズさん』
その男の子の容姿、風貌、様子・・・そして召喚されてきたという事実から・・・
「・・・【精霊】か」
「そうだよ。紹介しよう、【嵐の精霊】のヴァーユだ。宜しくね」
「ひゃう!!」
・・・野郎、何週間か前は【精霊】を【眷属】にはしていないって言ってたのに・・・いや、あれはこの時のための前フリか。
・・・いずれにせよ【精霊】を呼べるのなら、お互いにやる事は・・・決まっている。
俺は【豪剣アディオン】を取り出した。
「へぇー、いよいよ君も本気ってことかい?」
「・・・俺は何時だって本気だ。ふざける事はあっても、出し惜しみすることはあっても、手を抜いたりはしない」
「勿論知ってるさ」
俺とラングは互いに笑い合う。
「行くぞ! アウル!!」
「だう!!」
「行くよ? ヴァーユ!!」
「ひゃう!!」
「「【精霊憑依】!!」」
さあ、もうひと勝負だ。
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