値段と味
お金の使い方や考え方は自由。勿論それはわかっている。しかし、僕にはどうしても好きになれない考え方があるのだ。
ある日のこと。友達の翔と一緒に商業施設に行った。彼は金遣いが良くなく、買い食いが癖になっていて、その日も色々と買い漁っていたんだ。
「なあ、ちょっと買すぎじゃないか?」
「気にすんなって!俺まだ貯金あっから。あ、これうまそー!」翔は笑みを浮かべてコロッケ屋を見ていたが、その目はどこかうつろな気がした。僕は値札を見てひっくり返りそうになった。「一個五百円!流石にやめとけって。」しかし、翔はすでにコロッケを貪っていた。
「なあ、なんでお前は買い食いばっかするんだ?」
「え?うまいもん食いたいからに決まってるだろ。」
「でも、そんな高いやつを選ばなくたって...。」
「わかってねえな!いいか、値段が高けりゃ高いほどうまいんだ。」
「絶対そうとは限らないだろ。」
「いいや、絶対に俺が正しいね。大人たちが高い金払ってコース料理をうまいうまい言いながら食ってるのがなによりの証拠だろ!」僕は何も言い返せなかった。呆れもあったかもしれない。唇を噛み締めた。
後日、転機が訪れた。献立表をふっと見て、「かぼちゃコロッケ」という単語を見出した。待てよ?これなら...。
僕は喉笛に飛びつく勢いで翔に駆け寄った。
「なんだよ急に。」明らか嫌そうな雰囲気を醸し出した顔をする翔がそう言うか言わぬかのぐらいに、僕は言った。「いいか、よく聞け!今度の給食に『かぼちゃコロッケ』がある。」
「知ってるぜ。あのしょぼいやつだろ?」
「そう言えるのも今のうちだ!いいか、改めてあれをよーく味わえ...。もしお前があれをウマいと感じたら、前の発言を取り消してもらう!」一息で全て言い切った。あえて取り消させたい発言の内容は言わなかったが、翔は察した様子で言った。「なに?わかったよ、受けてたとうじゃねえか!」
運命の日がやってきた。今日の献立は、和の心代表ご飯、味噌汁、そしてかぼちゃコロッケ。一旦、約束は忘れて、飯に集中しよう。
まずは焦らず、味噌汁から。味噌汁には、味噌で食欲を誘い、喉と胃をあたため、飯をより味わいやすくする効果がある。...科学的根拠はない。僕の感覚だからね。
だめだ、やっぱり待てない!イントロとかどうでもいい。早速メインに行こう!僕はコロッケの皿を包み込むように持ち上げた。ああ、誰も思わないだろう。まさかこの質素な見た目に反して、とてつもないポテンシャルが秘められているなんて。
コロッケに箸を入れた。慎重に慎重に...。おお、なんと美しい!見よ、この気取っていない、それでいてウマそうな山吹色の断面を!...って、一体誰に言ってるんだ、僕は。
コロッケをゆっくりと口に運んだ。自然と笑みが溢れてくる。はあ、ウマい。わずかにとろみを帯びた柔らかい具が、まるで毛布のように舌を包み込み、口の中にブワッと甘みが広がる。幸せでしかない。
毛布の次は枕が欲しいところ。そこで、米の登場だ。ああ、柔らかい具に米が絡みつき、米の甘みが加わってさらなる幸福をもたらしてくれている!ウマみと甘みの魔力で、顔がほろほろと崩れてしまいそうだ。
ああ。ウマかったなあ、今日も。
僕はふと後ろを振り返った。すると、角っこの席に座っている翔の姿が目に入った。おや?何か様子がおかしいぞ?座り直して、思わず注視した。
翔はコロッケの一切れをまじまじと見つめている。その目は、悲しみにも、喜びにも、はたまた何か悟ったようにも感じられた。
放課後、翔とまたふらふら遊びに行った。コロッケの件を聞き出したかったが、がめつく聞くのもみっともないと思ってしなかった。
空はいよいよ山吹色や紅色に染まってきた。
そろそろ帰ろうかと言うと、翔は駄菓子屋に寄りたいと言った。
缶ジュースを片手に、店前のベンチに腰を下ろした。少しの沈黙の後、翔は静かに言った。「...悪かった。お前のおかげで目が覚めた。前言ったことを取り消させてくれ。」驚いた。少しぎこちないが、翔がこんなにしんみりと話すなんて。きっとこれは嘘じゃない。本当に気づいてくれたんだろう。これ以上言い合う必要はないな。「もちろんさ。」
「本当か。そう言ってもらえれば、心が軽くなる。...そうだ、こいつはほんの償いだ。貰っといてくれ。」翔が差し出したものを手に取った。それは小さく包まれた金平糖だった。それを眺めていると、翔はふいに立ち上がって言った。「さて、俺はお暇させてもらおう。うまかったぜ、あのコロッケ。」彼は夕陽に向かって歩き出した。今見た彼の目は、いつにもなく純粋に輝いていた。
これは実話ではなく、創作です。ですが、金遣いの荒い友達がいるのは本当です(笑
突拍子に何か買って食べ出すし、すぐ「奢ってやろうか?」とか言う。そんな友達が2人くらいいます。
頻繁に「奢ってやろうか?」って言うのは、どういう意図なんでしょうか?当分は理解できなさそうです。
次回も読んでいただけると嬉しいです。




