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転生したら武器が恵方巻きで山  作者: 鼻ふぇち
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第8章

「これでとうとう、倒す・・というのも今では適切ではありませんね・・解放すべき霊獣も残すはあと1体・・」


彩奈、タカ、くるみちゃん・・


「ここまで、私たちの旅に力を貸していただき本当にありがとうございました。」


最後の霊獣討伐に向かう日の朝、レーヌはダミナートの宮廷にある自室へ集めたメンバー1人1人の手をとりながらそう伝えた。

カッキーには、彼女が『私たちの旅』と2人からの気持ちとして伝えてくれていることが嬉しかった。

今ではカッキー自身、レーヌ・リネサキの騎士であると同時に彼女の傍に寄り添うパートナーとしての自覚が大きく膨れ上がっている。


「俺からも言わせてくれ。みんながいてくれて、本当に心強かった。」


だから、カッキーもレーヌに続けてこのように感謝の意を言葉で表すのだ。


「いやいやいやー、長くて苦しい旅だったケドー。楽しいこともたくさんあったから私もなんとかやってこれたよー!」


なにシレッと最古参みたいな台詞吐いてんだ!?


「目指すものは一緒だからな。だが、レーヌ、柿崎ゆうた。まだ終わったワケじゃないんだ、気は抜けないぞ。」


ウッキー ウッキー!


レーヌは彩奈の言葉に頷いて、壁に貼った大きな地図を指しながら説明を始める。

それにしても・・何気に見てると、みんな邪険にこそしてないものの基本的にくるみの発言はスルーだよな・・

まぁ、基本かまってちゃんなタカと比べて、くるみはあまりそんなの気にしない我が道を行くタイプなようなのでこれで正解か。


「まずこれが、これまで解放してきた霊獣の祠です。」


いつ用意したのか、レーヌは地図の祠が記されている位置に1枚ずつシールを貼ってゆく。

ああ・・キノコやキュウリ・・それぞれの霊獣を表しているのか・・


「このように、祠の位置はダミナートから等距離の東西南北とその狭間、いわば円周上に存在していました。そして、残るのが。。」


地図にエビのシールが貼られる。


「この、ダミナートの真南にある廃都ミグバルンあたりです。」


「ミグバルンといえば地下文明として有名な遺跡だな。何層にも分かれて・・縦に広い珍しい構造をしている・・」


「そうです。さすが彩奈、考古学には詳しいですね。」


「考古学『には』か・・何にでも詳しいお前に言われても、あんま嬉しかねーなぁ・・」


軽口を叩きながらも、彩奈もレーヌも微笑っている。この2人も、以前よりずっと打ち解けて距離が近くなったようだ。


「だが、そうか・・ミグバルン遺跡か。。それで、ここを最後に回したということか?」


「そうです。祠は太古から存在していると言われているものですし、霊獣のみなさんの証言ともそれは一致していますので・・」


くるみ以外が全員納得したように頷く。


「? え? なになに? ぜんぜんわかんないよ!?」


お前、チンパンジーに負けてんじゃん・・


「だからさ、ずっと昔から地下にあった都市ならその祠も地上にはないんじゃないかってこと。」


「あ、そっか。で、それがどうしたの!?」


こいつは、物事を深く考える前に喋るな・・


「探索に時間がかかる可能性が高いので、その間に他の地域で動きが進行してしまうのを懸念したのです。」


「うむ。私も実際に行ったことはないが、中はかなり複雑な造りになっていて・・隠された道や自然に閉ざされたエリアがたくさんあるらしいんだ。」


学生の頃から一度探索に加わってみたいとは思っていたんだが・・総督を継ぐ身だったんでなかなかそうもいかなくてな・・


思いがけず夢が叶いそうだと、拳を握りしめてやる気を見せる彩奈。


「めんどくさそう! 地面の下で閉ざされたところなんて、どうやって探すの!?」


「くるみ・・お前もうちょっと考えてみてから喋ろうよ・・」


カッキーついに言っちゃった。


「失礼ね! 考えてるよ! んー・・やっぱりわかんない!」


考えてるように見えないんだよなぁ・・まぁいい。。


「あのな? まずドリガロンが祠を破壊して霊獣を魔獣体に縛り付けただろ?」


「うん?」


「ドリガロンが祠まで行ったってことは、そこまでの道は開けたってことだよな?」


「あ、そか!」


「まぁ、そのあと理由があればその道は彼の手でまた閉ざされたかもしれないケド、これまでの祠が放置されてたんだからその可能性も少ないし・・」


「ふむふむ・・!?」


「俺らがまず祠を探す理由ってのも、刻まれた文句から戦う前に少しでも敵のヒントを掴んだり、足取りを追ったりすることだから・・」


「なるほど!」


「・・わかった?」


「もう一声!」


「最後の祠のララングストゥは、祠のある地域からかなり出歩いているようだし。。どんなヤツかも彩奈の証言やブァフウの言葉から大体わかってる。」


「ということは!?」


結局、最後まで言わせるのかよ・・


「あーもー! 祠なんか見つけられなくても、ララングストゥさえ見つけて倒せばそれでOKってことだ!」


どこかで出くわしたら、その場でなんとかしたいとは思いつつ、結局ここまで彩奈以外はヤツと遭遇していない。


「・・ララングストゥは、彩奈の聞いた内容から判断しても、ドリガロンの特命を受けて各地の情報を伝達する役目に当たっていたのではないかと思われるのです。しかし・・」


その行方はいまだ把握出来ていません。ここまできたならば、こちらから出向いてヒントの1つでも探すしかないという結論に達しました。


「あと、もう一つ・・元凶である元ダミナート宰相ドリガロンの所在もいまだ知れませんが・・私は彼もこのミグバルン遺跡のどこかに身を潜めているのではないかと睨んでいます。」


「確かに・・それだけ入り組んだ地下古代都市なら、身を隠すにはもってこいだもんね。」


レーヌがこれまで少数ゲリラ戦を挑んできたのには、自軍をダミナートの防衛に集中させているからという理由の他に出来るだけ敵軍に動きを読まれにくくする狙いもあるが、ドリガロンから見れば出来るだけ大軍による捜索から身を隠したいと考えたはずなのだ。


「ララングストゥの能力が『防御』に特化しているというのも、彼がドリガロンの潜んでいるミルバルン遺跡を護る最後の盾の役目も担っていると考えるとしっくりきます。」


『魔獣体の記憶によれば、レーヌ姫の考察はほぼ合っていると思われますわ。』


桜でんぶスティックに宿った霊獣ヴァフゥが口を挟んでくる。


『そのララングストゥが魔獣体に縛られた者はドリガロンの腰巾着のような存在で、他の7体の働きを監視する役目を負っていたので正直なところあまり良い印象は抱かれていませんでしたので・・』


他の霊獣たちも、同じであったと言う。


『まぁ、拙者は覚えがないでござるがな。』


霊獣烏丸悟浄だけそのような思念を感じなかったということは。。やはり、あの魔獣体とは最初から繋がってはいなかったということか。


『ボクも、いきなり都市を支配しろと言われただけで、ララングストゥやドリガロンのことは後から知りましたからね・・』


烏丸さんも、霊獣悟浄に同調する。


「霊獣のみなさん、他に何かヒントになりそうな情報はありませんか?」


『とはいえ、私を同化していた魔獣体はあの地から離れずに、早くリヴィンの住民を配下に収めるよう命令されていたからな・・』


『ワシんとこもじゃ。あの村の者全員を魚人間にした後は近隣の村に進出する予定だったことは知っておるが・・』


『麻呂のとこはでおじゃるな・・もう既に人の住んでいる場所がなかったので、あの辺一帯の過去に存在した町や村をこの時代に出現させてから一気に鳥人部隊を作り出すつもりだったでおじゃる。』


『・・・(あのまま全ての村民を同化して、巨大な生物兵器になろうと目論んでいたようでちゅ。)』


『俺様の子孫は、やはり純血種の能力が高い上に成長も早いからな・・純血種を増やしに増やしたところで最強の軍を敷くつもりだったようだ。生後何歳という若さで戦場に駆り立てる気だったんだぜ、あのゲス野郎は!』


『あの破廉恥な女はまず、痛みも苦しみも感じない兵を作るために町中の人を快楽漬けにしていましたわ。』


うーむ。ここぞとばかりに既に過去のものとなった野望の内容は寄せられるが、誰もこれ以上ララングストゥやミルバルン遺跡、ドリガロンについての情報は知らないようだ・・

聞くと、そんなに急ごしらえの戦力を確保しようとしていたようにも思えないんだが・・


『ひょっとすると、ゆくゆくはそのミルバルンという古代都市もそっくり現代に蘇らせて巨大な戦力にするつもりだったのかも知れないでおじゃるがな。』


「確かに、その可能性もありますが。。なら順番でいえばミルバルンの方が先のような気もしますね・・」


「まぁ、レーヌ。だいたい情報も出尽くした感があるよ。ここでこうして話していても時間が過ぎてしまうだけだから、あとは行動を起こしながら考えていこう。」


みんな、何か思い出したことや気がついたことがあったら言ってください!


実はこれでも、既に総勢13名もいたりする。考察や相談には事欠かないはずだ。これで新たに有益な意見や情報が出ないということは、おそらく今の時点ではもう動き出すしかないのだ。


「それでは、スタグホーンさん。いつものように頼みます。」


『うむ。ユータもずいぶんと腕をあげ、私の力をほぼ100%引き出せるようになったからな。この距離もそうは時間はかからないだろう。』


「最初のポイントはこの辺りか。。これなら半刻もあれば大体の位置には着けると思う。じゃあレーヌ、みんな、また後で!」


カッキーは2階の窓から恵方巻きを放ると同時にヒラリと飛び乗る。

部屋の中で発動させるとエラいことになるエアロスクーターも、このようにタイミングを試行錯誤することによってかなり乗り降りの場所を自由に出来るようになっていた。


「調子に乗って落っこちないでくださいよ、ユータ!」


ウッキー! ウッキー!


レーヌの冗談っぽく叫ぶ声を背に、カッキーは一路目的のポイントを目指す。彼女とは、以前よりちょっと軽口で話し合えるようになったのも嬉しい。

あと少しで旅の目的が達成出来るという思いも相まって、頬に叩きつけられる空気の圧も今日はいつもより心地よく感じていた。


ん? なんだあれは!?


順調に距離を稼いでいたカッキーは、前方の空を飛行する謎の物体を発見した。かなりのスピードで同じ方向に進んでいるようだ。

当初の目的からは寄り道となってしまうが、ミリテスランの空に一体あれほどのスピードで移動する何があるというのか? 気になったカッキーは軌道を少し修正してその飛行物体を追尾する。


速い・・今のカッキーの最高速度ならば距離は詰めていけるものの、通常の自然物ではあり得ない速さである。ましてや、鳥などでは絶対にない。


そこから更にかなりの距離を費やしてようやくその形状が視認出来た時、スティックに宿る全ての霊獣たちが口々に同じ警告をカッキーに伝えた。


『 あれは!? ララングストゥ!!』


「何!? 本当か!?」


それは大変奇妙な光景だった。まさしく彩奈から聞いていた『エビ人間』と形容するに相応しい異形の怪人が、本物のエビさながらに腰を曲げた体勢で、どんな原理かは知らないが高速で空を飛んでいる。


「待て! ララングストゥ!」


なんという予想外な場所で出会うのか? だが、ここで仕留めることが出来たならば、困難が予想されていた遺跡探索も楽になる。

こいつさえ倒せば、あとは諸悪の権化ドリガロンを押さえるのみだ。


エビ人間ララングストゥは、首を後ろに向け。。ることは出来ないようで、短い柄の先に着いた目をグリグリと蠢かすと後方から追ってくるカッキーの姿を捉えた。


『・・カキザキユータ・・思っていたよりも速いな・・』


「やっぱり、俺たちのことイロイロ嗅ぎ回っていたんだな!?」


『どう思おうと貴様の勝手だ。私はただドリガロン様の命令に従って行動するのみ。』


「へえ・・ヴァフゥはお前の能力はつまらないと言っていたが・・お前、性格のほうもたいしたつまらない奴だな!」


『・・私は私だ、性格云々まで貴様にとやかく言われる筋合いもないが・・私の能力が本当につまらないかどうか試してみるか?』


お!? 挑発に乗ってきたぞ!?

お堅いヤツだとかからないかと思ったが、どうやらララングストゥは己が能力にはかなりのこだわりがあるようだ。

それならばと、カッキーは続けて次の挑発の言葉をかける。


「それは願ってもないね。聞けばお前の能力というのは馬鹿みたいな硬さだけだというじゃないか。それなら、一旦地上へ降りろ!」


『地上へ・・? なぜだ?』


「空じゃ俺の攻撃力は制限されるんでね。どうだ? お前も生半可な攻撃ではその自慢の防御力とやらを俺に見せつけることは出来ないだろう!?」


『馬鹿が付くほど正直なのは貴様の方だな・・まぁ、言い分は分かった。それでは貴様に絶望を感じるまでの防御力というのがどんなものか見せてやるとしよう。』


しめた、頭に血が上っているようにも見えないのに、結構根が単純なヤツだ!


まぁ、ララングストゥにしたところで攻撃にまで転じようとすれば地上の方が都合が良いのかも知れないが、少なくともあの分厚くて堅そうな装甲をスコール恵方巻き如意スピアーで突破するのは難しそうである。

カッキーの方もなんとか最強の攻撃力を誇るライトニング恵方巻きブレードで勝負を挑みたいところだったのだ。


「よし、じゃあ付いて来い!」


カッキーはララングストゥを先導するようにエアロスクーターの軌道を変え、弓なりに降下しつつ地上を目指す。

ララングストゥもUターンに転じ、カッキーの後を追うと思われたが・・!?


「う・・!? 何をする!?」


空中で背後からあっという間に追いついたララングストゥが、カッキーをその鋏型の両腕で羽交い締めにした!


『貴様には私の完璧な防御力と・・同時に絶望を見せてやると言ったはずだ!』


そう叫ぶと、ララングストゥはカッキーの四肢の関節を極めながら、奇妙な態勢に固めてゆく。


「サブミッション!? いや・・これは・・」


『これが、お前の自慢の武器・・そしてスタグホーンの力か・・それではこうしてやろう。よりハッキリと分かるはずだ!』


ララングストゥは、恵方巻きに接着していたカッキーの足首を鋏に捉えるとグイと捻りあげる。


「うぐあ!!」


鋏の強い握力で捻り上げられたことによる痛みがカッキーの足首に加えられた次の瞬間、カッキーはララングストゥのもっと恐ろしい狙いに気がついた。


エアロスクーターの噴出口を上に向けられたことで、絡みあった2人の身体が下に向け急速で落下してゆく。


「スタグホーンさん! 空気の噴出、止めてください!」


慌ててエアロスクーターの推進力を止めたカッキーだったが、ララングストゥの技そのものは今なお進行中である。


『さすがに恐ろしいか? このまま地面に激突するのは免れないにしても、死を少しでも早めるようなことは・・』


ララングストゥがその無機質で無表情な顔でカッキーを見上げながら、余裕の言葉を投げかける。


本能的に恐怖を感じないわけがない。すでに100メートルは降下しているが、それでもここは地上300メートルはある空の上だ。


カッキーは既に逆の面から空気の噴出をすることで落下のスピードを抑える試みをしたが、挟み込まれて極められた足首からは新たに念を送るのが困難でほとんどコントロールが効かない。


「俺と心中する気か、ララングストゥ!?」


見下ろすカッキーが、どんどんと距離を詰めてくる地面に慄きながら叫んだ。

そう、体勢でいえばカッキーが上でララングストゥが下なのである。このまま落ちると先に脳天を地面に叩きつけるのはララングストゥの方だ。

もちろん、それでもカッキーも助からない。相打ち狙いと思って当然の状況だった。


『さて、どうかな? まぁ、この方が眺めは良いだろう。貴様の行きたがっていた地上へすぐに連れて行ってやるぞ。』


200メートル、150メートル、100メートル。。落下は速度を増し、地表に到達するまであと数秒!


『言うまでもないが、私の身体はこれしきの衝撃ではビクともせんぞ! さあ絶望しろ! ララングストゥドライバスター!!!』


ララングストゥが更に横に回転を加えて技を完成させようとした時、その身体が何かにピクリと反応した。


『!? は・・はい・・かしこまりました、仰せのままに!』


ララングストゥは何者かと会話をするような素振りを見せると、地上50メートルの位置でガッチリと極めていたカッキーの身体を急に解放し、上に向けて蹴り上げる!


『あとは自分でなんとかしてみろ! これ以上は私も面倒見切れんぞ!』


「!? スタグホーンさん! 下に向けて頼みます!」


カッキーはわけもわからないまま、右足からスタグホーンの宿る鹿肉ソボロスティックにあらん限りの念を送り込む。


数瞬の後、ララングストゥの丸まった身体が流星のように地面に激突してめり込み、やや遅れてカッキーの身体も地表にドサリと叩きつけられて転がった。


ララングストゥの蹴り上げと強力な空気の逆噴射により、大部分の衝撃を緩和することが出来たものの、凄まじい怪力で一本背負いを決められた程のダメージはある。


全身に走るあまりの痛みに、カッキーは土まみれになってのたうち回った。


地面に開けた大穴から、ララングストゥが平然と這い出し近づいてくる。

そして、苦痛に顔を歪ませるカッキーを冷めた目で見下ろした。


『少々事情が変わったのでな・・まぁ、生きてはいるようでなによりだ。だが、これで分かっただろう。私の身体の防御力は並みのそれではない、絶対防御だ。いかなる打撃、斬撃、衝撃をも無にすることが出来る。』


貴様が、それでもつまらぬと言うならそれでも構わんが・・私としてももう少しは抵抗してくれることを期待したんだがな。


『もし、再び私と一戦交えることがあれば、その時はもう少しだけ楽しませてくれ。』


ハッハッハ!


ララングストゥは高らかな笑い声をあげ、飛行形態をとるとあっという間に大空の彼方へ飛び去ってしまった。


『何をしておるのじゃ、カンピオーネ! こういう時こそおぬしの出番じゃろう! 早く治療するのじゃ!』


『俺に指図するな、マグロのジジイ! ・・まずはキノコ、こいつの脳に麻酔をかけて痛みのショックを和らげろ。』


『・・・(わかりまちた。賢明な判断でちゅ)』


煮椎茸スティックに宿るヴォグムーアが麻酔ガスを噴出し、それを鼻腔から吸い込んだカッキーは幾分息を落ち着けた。


『よし・・まずは安静にしていてもらわんとやりづらくてかなわんからな・・』


カンピオーネの干瓢スティックから、カッキーの体内にさまざまな薬品が投入されていく。


『ふむ・・隅々まで滞りなく行き届いたようだ・・強心・・精神安定・・滋養・・これで一安心だ。やはり、毒と薬は兄弟みたいなものだの、キノコよ?』


『・・・(否定はちまちぇんが、兄貴面はしないで欲しいでちゅ。)』


『まあまあ、ヴォグリン。カンちゃんも悪気があって言っているわけではござらんので穏便に・・』


『もしかして、カンピオーネだけに干瓢スティックでおじゃるかの?』


『知るか! 今そんなくだらんこと言ってる場合じゃねえだろが、この鳥公!』


『おぬしは少し言い方を変えた方が良いでおじゃる。麻呂のように雅にの。』


『・・・(そんなのきもちわるいだけでちゅよ。)』


『お前ら、俺様をナメてんのか!?』


『まあまあ、内輪でケンカ腰になってどうするでござるか。』


『そうよ、あんたたち。ユータさんの身体にも触るからちょっと黙ってなさい・・』


ヴァフゥの桜でんぶスティックから声がすると、カンピオーネもペリノニムもヴォグムーアもピタリと大人しくなってしまった。

ヴァフゥは姉御肌なのか? それともみんな彼女に惚れてたりするのだろうか?


『みんなでうるさくしてごめんなさいね、ユータさん・・これで少しばかり眠っていればじきに動けるようになるでしょう・・安心なさい、こう見えてカンピオーネの力は本物だから・・』


桜でんぶスティックからピンク色のモヤが溢れてカッキーの身体を優しく包み込む。


『さあ、ひと時何もかも忘れてお眠りなさい。大丈夫、私たちがあなたを護っているのですから・・』


ブァフウの優しい力に包まれたカッキーは次第に身体中に走る痛みを忘れ、夢の中へと落ちていった・・


ーーーーーーー


違う! 俺は・・こんなことを望んで生まれてきたんじゃない!


目の前には、武装した馬にまたがった満身創痍の騎士。その震える両手で振り上げられている大剣にはいくつもの意識が宿っていた。


6・・7・・8・・全部で8の意識がその剣の中から感じられる。


彼らがこの人間の騎士に力を貸し、よってたかって自分を倒しに来た!?


生まれを同じとする、いわば兄弟のような存在である彼らを全て敵に回して・・俺は・・俺はひとりぼっちで消えてゆかねばならないのか・・!?


消える? どこへ? 自分たちは完全に死んだり、無に帰したりするということのない存在のはずだ・・


ならば、今この目の前にいる鎧を血に染めた騎士が先ほど口にした、俺を消し去るというその先はいったい何処なのか・・?


騎士・・リトロマインと名乗っていたか・・せめてその最期の一撃を放つ前に教えてはくれないのか・・?


なぜ、お前は・・己の命の終わりに臨むこの時にも、そんなにも光に満ちた顔で微笑っていられるのだ・・?


対して、この俺は・・なぜこうも闇に囚われた悲しみに溢れてこの世界から消えていかねばならないのか・・?


どうしてこのようなことになったのかすらも・・俺にはわからないのだ。なぁ頼む、兄弟たち、答えてくれ。


ああ・・意識が遠のく・・俺は何処へ行くのだ・・なぁ、リトロマインという名の騎士よ・・


ーーーーーーー


・・カッキーが目を覚ましてみると、すでに辺りは暗くなっていた。


『お目覚めになったようですね、ユータさん・・』


実体がないので膝枕というわけにはいかないが、ブァフウのエネルギー体がカッキーに覆い被さるような形で寄り添ってくれている。


「ブァフウさん・・ありがとうございます。ずっと護っていてくれたんですね?」


『身体の具合はいかがですか? たぶん、とうに傷は癒え、痛みも消えていることとは思いますが・・』


カッキーは、両手両足の指を握りしめる動作から、少しずつ身体全体の状態を確認しつつゆっくりと起き上がった。


「うん・・もう、どこも痛くないです。」


『柿崎ユータよ、俺様にも礼の一つくらいあってもいいのではないか?』


ああ・・たしかにちょっとばかりウザいかなカンピオーネ・・


「もちろんです。お世話になりました、カンピオーネさん。身体中軽くなりましたよ。」


『治療に必要なもの以外にも、色々とサービスしておいたからな! 血の巡りも良くなったであろうし、蓄積された疲労も・・』


『・・・(おしつけがましいのはなしにするでちゅ。)』


『そうでおじゃるカンピオーネ。いい加減、奥ゆかしさというものを知るでおじゃる。』


『またお前ら、なんだってそう俺様に突っ掛かってくるんだ!?』


『フゥ・・ハイハイ、そこまでになさい! ほんとにもう、あなたたちは昔からそう!』


ヴァフゥの嗜めに、またもや一触即発になりかけた3体は一斉に口を噤む。


『それで、どうするのだユータ? ゲートも開けるようになったし、みんなを呼ぶか?』


「いえ、スタグホーンさん。約束していた時間から随分と経ってしまいましたので、みんな心配していると思います。今ゲートロールを広げたところで、繋がることすら分からないと思いますし・・一度ダミナートまで戻りますよ。」


大体の方向は分かりますし、ダミナートの夜景なら遠くからでも飛んで行けばたぶん目につくと思いますので・・



レーヌは自室の窓を開け放ち、小寒い星空を見上げながら祈りを捧げていた。


どうか、ユータを無事にお返しください・・お願いします、お父さま・・


朝、彼がこの窓から勢いよく飛び出して行った時には、今こうして張り裂けんばかりの思いで星となった父に祈っている自分の姿など思いもよらなかった。


いつもと同じように、ほんのひと時限りの別行動だと思っていた。だが、約束の時間が過ぎても彼の持って行ったゲートロールには一向にアクセス出来るようにはならなかった。

時を置いて、何度試みようともダメなのだ。


彼の役目は、そもそもがおおよその地点を目指すというだけのこと。目的地が見つからずに迷っているという理由は除外される。

半刻と言って出たならば、半刻で到達した場所にゲートロールを設置すればそれでいい。


それが果たせなかった時、自分や仲間たちにどれほどの不安を抱かせることになるのか、分からないような人ではないはずだ。


とすれば、考えられる理由はいくつかしか残されない。ひとつは、ゲートロールがなんらかの理由で機能しなくなったということ。

破損したか、もしくは途中で落っことしでもしたか。だが、それならば、すぐに一度戻ってくればいい。


それも出来ないということは。。加えて移動の要であるエアロスクーターを発動させる為に必要な霊獣スタグホーンの鹿肉ソボロスティック、もしくはエホーマキそのものになんらかの不具合が起こったか・・


あとは・・


今日1日何度もこの一連の推察を繰り返してはいたが、その度にレーヌはその可能性を出来るだけ最後に持ってくるよう努めていた。


彼の身そのものに、ゲートロールを設置することもダミナートへ戻ってくることも出来ないような何かが起こった。

本当ならば、これを真っ先に考えた方が色々と回りくどい理由を思い浮かべるより説明は短くて済む。


レーヌの脳裏にも、当然それが先に出ようとはするのだが、敢えて少しでも後に後にと意識しているのだ。それでも、最後にはそこへたどり着かされざるを得ないのがたまらなく切なかった。


遅い時間までレーヌの傍で元気づけてくれていた仲間たちも、今はそれぞれの部屋に戻って休んでいる。


彩奈もユータと共に行った烏丸のことが気がかりだろうに気丈にレーヌを慰め、今夜はウナートラへは戻らずにいつでも彼女の元へ来られるよう、この宮廷の一室に泊まっているのだ。


悟浄は無事な気がする。私には離れていてもなんとなく分かるんだ・・

だから、柿崎ゆうたもきっと大丈夫。必ず元気に戻ってくるさ。


彩奈が部屋を去り際にかけてくれたその言葉に勇気付けられ、レーヌは今もこうして彼の帰りを待っている。

彩奈もああして愛を知ることで強くなれたのだ。自分だって・・


ハッ!?


その時レーヌは、星空に1つの気配を感じて思わず窓から身を乗り出した。

見渡せる範囲をひと通り確認して、それがまだ近くにあるものではないことを感じとる。

だが、それが彼のものであることはハッキリと分かった。

彼が、この広い星空のどこかにいる。そして、まっすぐにこのダミナートへと向かってくる。なぜ、突然それが分かったのかはレーヌ本人にも分からない。しかし、確かに感じたのだ。


「レーヌ! まだ起きているか!?」


その時、ドアを叩く音と共に彩奈の声が飛び込んできた。


「起きています! どうぞ入ってください!」


「レーヌ。感じたんだ、悟浄が今こちらへ・・」


ドアを開けて入ってきた彩奈が開口一番そう言いかけたが、振り返って迎えたレーヌの顔を見るとフッと微笑んでその先を譲る。


「ええ! 私も感じました! もうじきユータもここへ帰ってきます!」


出迎えますよ!


レーヌは、言うが早いか彩奈の手をとり宮廷の中庭へと走り出していた。


「お、おい! 出迎えるって・・何処行くんだ!?」


「ユータも、きっとあの瞬間私を感じてくれていたと思います。でも、ゲートを使わずに戻るのは初めてですし、夜ですから。。中庭から目印を上げるのです!」


夜の中庭を彩奈の皿ライトで照らしつつ、2人は中庭の木立を駆け抜けて大樹のある広場までたどり着いた。


「ハアハア・・で、何をおっ始めるんだ?」


「ハアハア・・ハナビです!」


「あ? ハナビ?」


「そうです、以前ユータに聞きました。ここへ来る前に彼がいた世界の、夜空に打ち上げる大きな光の花だそうです!」


「お前、それ出来るのか?」


「見たことはないので本当のハナビとは違うかも知れませんが・・大丈夫! 遠くから見て私たちがここにいると、ユータや烏丸さんが気がついてくれればいいのですから!」


レーヌは彩奈に変身解除を促し辺りを暗くすると片手を高く掲げた。


「さあ、彩奈。私と手を繋いで、あなたも同じように!」


レーヌに言われるままにすると、彩奈も空いた側の手を夜空に振り上げる。


「これでいいのか?」


「ウフフ、彩奈。あなたともついこの間までは手を繋ぐなんてほとんどありませんでしたが。。最近はよく繋ぎますよね。」


「・・ああ。悪い気分ではないな。」


「はい! それではいきますよ! ハナビ!」


レーヌと彩奈が挙げた手のひらから、一筋の光が夜空に向かって伸びてゆく。


天高く達した光の帯は、まるでレーザーショーのようにその軌道を変えつつ折れてゆき、大輪の花のヴィジョンを形成してゆく。


「おお・・なかなか派手なもんだな・・これ、都市中がビックリするんじゃないのか。。?」


「ウフフ、そうかも知れませんね。でも、ビックリするのはここからですよ!」


「? ・・うお!?」


2人の手から伸びた光の帯は次々とその色を変え、またヴィジョンはどんどんとその姿を変えてゆく。


時に別れ時に合わさりながら、2本の光の帯は夜空に様々なひと筆書き、ふた筆書の美しい図柄を次々に描き出していった。

しかも、その立体的に映し出された形はクルクルと回転しどの方位からでも全容が確認出来るようになっている。


それは、カッキーの故郷でそう呼ばれたものとはまるで違うものではあったが、レーヌが彼の話を聞きながら胸に描いていた共通の思い出でもあった。


「え!? アレもしかして!?」


彩奈が焦ったのもムリはない。時折描き出される図柄の中に、どう見ても人の顔が混ざっている。


「はい。私と、彩奈の顔のイメージですよ! 遠くからでも、私たちがここで待っていることが一目で分かるように!」


「かぁー! 恥っずかしいー! ・・まぁ、お前の都市でよかったよ・・」


そう言って彩奈は苦虫を噛み潰したように微笑う。それが可笑しくてレーヌも屈託のない笑顔を見せた。


ダミナートの夜は、突如夜空に現れた謎のヴィジョンの話題でもちきりとなった。

道端で立ち止まって眺める者、家の窓から身を乗り出して指さす者、寝ている家族をわざわざ叩き起こしてまで見せようとする者・・


まぁ、レーヌによるヴィジョンのオリジナル投影魔法『ハナビ』は光だけで音が伴わないため、概ねのところは宮廷主催のサプライズイベントとして好意的に受け取ってはもらえたようだ。


そして・・


このサプライズは、ダミナートへ向けて夜空を急ぐカッキーの目にもしっかりと届いていたのである。



それから一刻も経った頃・・カッキーの左頬には、鮮やかな『くれない』が貼りついていた。

先ほど、彩奈の平手打ちを思い切り食らったのである。これは彼女の水掻きが付いた掌の痕だ。


あの後、ダミナートを目指して夜空を飛んでいたカッキーは、星々の下でその輝きを呑み込んでしまいそうなほど派手に披露されていたヴィジョンに導かれ、迷うことなく無事帰還した。


遠くからでも一目でその真下にいるのがレーヌと彩奈であることが分かる、強烈な光のヴィジョン。


それが、自分を導く目印として投影されていたことまでは分からなかったが、とにかくカッキーは誘われるままにその周りを旋回しながら、いつかレーヌに騎士の誓いを行なったあの広場に降りていった。


まず、迎えてくれたのはあの日の誓いを見届けてくれた大樹。そして、その根元あたりにカッキーが着地すると、それまでダミナートの住人を楽しませていたヴィジョンショーはふいに終わりを告げ、レーヌと彩奈が彼の元へ息急き切ってかけてきた。


「ユータ! ・・よかった、本当に・・」


勢いよく飛びついてきたレーヌの華奢な身体を受け止めて強く抱きしめながら、カッキーはキュウリスティックを彩奈へ放った。


「お、おう・・気が効くな、うん・・」


『彩奈。心配しただろう? ちょっと、予想外の事態に遭ってしまってね・・』


「フフ・・まぁ・・無事に戻ってくれて何よりなんだが・・予想外の事態・・?」


ひとしきりカッキーの温もりを確かめていたレーヌが、その首に回していた両腕をほどいて一歩距離をあけ、彼の顔を見上げた。


「一体、あれから何があったのですか?」


「ああ・・実は・・」


と、全てをありのままに話して・・良かったんだか悪かったんだか・・


「バカ!!」


聴き終わると同時にカッキーの頬を打ったレーヌの平手は最初の1発ですら悲しいほどに非力で・・それも2発3発と打たれるたびに更に力を失っていった。


「バカ! そんな無茶して・・ひとりで。。!」


レーヌはカッキーの頬を何度何度も打ち、声を絞りながら唇を噛んで泣いていた。

死にかけたことまで素直に話してしまったのは迂闊だったと、カッキーも思った。


ついにはペチペチと触れるだけになったレーヌの手を、見かねた彩奈が掴んで止める。


「さすがにキリがないだろ・・下がってろレーヌ・・私が代わりに終わらせてやる。柿崎ゆーた、これはレーヌの想いを乗せた一発だ・・分かるな?」


「え・・!? ちょ、待っ・・」


「歯あ食いしばれ!」


「!? やめて、彩奈!?」


・・これがことの顛末である。


たぶん彩奈はあれでもかなり手加減はしていたんだとは思う。

とはいえ、そこは10人力のカッパの平手打ちだ。それに水掻きがある分その面積も広い。

早い話が、その瞬間すさまじい衝撃でカッキーの首はねじ曲がり、身体ごと数メートルは飛ばされてしまったのだ。

奥歯も何本か、まだグラグラしている。


まぁ、カッキーもその点については反省しているし。。帰りを急いでいる間にも、ちゃんとみんなに謝ろうとは思っていたのだが・・


すぐに、駆け寄って回復呪文を唱えようとするレーヌに、彩奈はやれやれといった表情で肩を竦めた。

カッキーは、そんな2人どちらの気持ちも汲み取ってレーヌの手当ては丁重に固辞させてもらったのである。


うん、これは調子に乗ってしまった自分への戒めとして、しばらく顔に貼り付けておこう・・


気持ちを示して、改めて全員の前で謝ったのでこれ以上の確執は残らない。

タカや、くるみでさえもこの説得力のある痣を目にしては、あまり彼を責めたてたりはしなかった。

あとは、今夜どうこの痛みに耐えながら眠りにつくか、だけである。


「ヴォグムーアか、カンピオーネさん・・せめて麻酔か痛み止めかなにか・・」


『今さら何を言っておるのだ! そんな軟弱な根性の奴に効く薬などありゃせぬわ!』


『・・・(まったくでちゅ。カッコいいこといったんだからガマンするでちゅ!)』


『まぁ、その痛みに耐えてこそのおのこでおじゃるよ。』


『あんたたち、時々すごく仲良さそうなのよねぇ・・ま、仲良きことは美しきかな・・』


・・ヴァフゥさんも今度ばかりは眠りに誘ってくれる気はなさそうだな・・

昼間あんだけ眠ってしまったので、今夜は頼りにしてたのに・・これじゃしばらく寝付けないかもな・・トホホ・・


ウッキャ モッキャ ホンキャー!


相変わらず隣で寝てるタカの寝言はうるせぇし・・

・・それにしても、ララングストゥの防御力があれほどとは・・

全ての打撃、斬撃、衝撃を無にするとなると・・果たしてライジング恵方巻きブレードでも勝てるだろうか・・

いや、勝たねばならない。今度ヤツと相対する時はみんなと一緒だ・・必ず攻略してみせるぞ・・


「うーん・・すみません、すみませんユータ・・はい・・もちろん愛しています・・」


『彩奈・・』

「悟浄・・」

『(最初はまぁ楽しかったでござるが、だんだんとキツくなってきたでござるな・・)』


「私は世界をまたにかける冒険家になるのよ! 死ぬ時は謎と神秘に満ちた荒野に敷く畳の上で・・むにゃむにゃ・・」


『若いというのは羨ましいもんですな。ボルトゥーナさん。』

『そうさのスタグホーン・・まぁ、わしは生まれた時からジジイをやっとるがな。。』


それぞれの思い?を抱いて、夜は深々と更けてゆく・・


ー後日談ー 時は遡り一方その頃・・


「戻ったか、ララングストゥ・・」


燭台が立ち並ぶ薄暗い祭壇に立つ荘厳なブーケに身を包んだ老人に、エビ人間ララングストゥはうやうやしい態度で跪いた。


『ハッ、ドリガロン様・・しかし、なぜあの時私めを止めたのですか? あのまま技を決めていればカキザキユータは確実に屠れましたものを・・』


「まぁ、あそこでお前がヤツに出くわしたのは私にとっても予想外だった・・挑まれたとならばあれも仕方のないことだ。」


『・・それではどうして・・』


「まぁ、慌てるな。生き延びたあやつは再びダミナートへ戻り、レーヌを含む仲間を連れてじきにここへやってくるだろう・・その時一網打尽にすれば良い・・」


『ハッ・・仰せのままに・・』


「他の土地の者は全て倒されたとのことだったな・・間違いはないか?」


『はい。八傑ともあろう者が、揃いも揃って嘆かわしいことでございます。解放された霊獣たちは全てヤツらにつきました。』


「そうか・・時にララングストゥよ、お前に新たな力を授けてやろうと思うのだが・・」


『新たなる力・・それは願ってもない・・して、どのような?』


「ふむ・・お前の絶対防御は護りの面から言えば完璧だ。防御が完璧であれば倒されることもなく、いずれどんな戦いにも勝利することが出来る・・そう考えているであろう?」


『。。違うのですか?』


「それは、お前が1人で戦う時の話だ。他に護るべきものがある場合、先にそちらを落とされてしまっては何にもならん。。レーヌたちだけでなく、いつここへも大部隊が派遣されてくるか知れぬからな。。」


『・・確かに・・』


「そこでだ・・お前が先手を打てるだけの武装・・攻撃の要となる兵器を与えてやろうというのだ。悪くはない話であろう?」


『なるほど・・この完璧な防御に、強力無比なる攻撃力さえ加われば鬼に金棒というわけですな?』


「そういうことだ・・それでは後で私の研究室へ来るが良い。お前の体に素晴らしい改造を施してやる。」


『ハハッ!』


「もはや、他の土地へ赴く必要もあるまい。これからはこの遺跡の入口で、何人たりともここに辿り着けぬよう私を護るのだ・・よいな、ララングストゥ・・」


ララングストゥはしばしの沈黙の後おもむろにスックと立ち上がると、胸にその鋏状の手を添えて深く頭を垂れた。


『畏まりました! ドリガロン様をお護りするのがこの鉄壁のララングストゥの使命! 猫の子1匹、この遺跡の中へは入れませぬ!』



ララングストゥの圧倒的な防御力を見せつけられたカッキー・・

果たして一行は彼を破り、諸悪の権化ドリガロンを追い詰めることが出来るのだろうか?


次回、転生したら武器が恵方巻きで山最終回『最終章』←語呂悪い

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