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超魔法少女グレンオー  作者: 窓井来足
第三章
8/19

「鍛える鬼 その2」

さて、前章で登場した超魔法戦士シン。

どうやら彼女の正体にまたも桜は心当たりがあるようなのですが。


果たしてその正体とは何者なのか……。

 翌日。


「嵐、今日暇?」


 桜は再び嵐を尋ねて母校の文芸部にやってきていた。

 ちなみにオウリュウとフーコは学校では目立つし、見つかったら玩具を持ってきていると誤解され、色々厄介な事になる可能性もある。

 また、文芸部の活動の一環として持ち込んでも、今度は他の部員にいじられるかもしれない。

 なので、今回、彼らは家で留守番をしているのだった。

 で、桜は嵐に超魔法少女の正体が彼女かどうか確認しに来てからというもの。

 自分の仕事が休みの日は特に用がなくても頻繁に文芸部に来るようになっていたりするのだが。

 あまりに頻繁にやってくるので、文芸部の顧問など「あれ? 桜ってうちの生徒だったっけ? もしかして留年したの?」と冗談をいう始末であった。

 そんな感じで、今回も桜は遊びに来ているだけだと思った嵐は、


「暇って」


 呆れたように呟いてから、


「これでもネガティヴハートを生み出している魔法少女の手掛りを探すのに忙しいんだけど?」


 と、遠回りに「本当は先輩も戦闘だけじゃなく調査の方も手伝うべきだ」というニュアンスも含んだ返答をした。

 だが、その答えの意味を深く考える桜ではない。

 それどころか「忙しい」と言われて「じゃあ、今日は付き合えないな」というような配慮さえせず、


「いや、ちょっとあたしのバイト先に一緒に行かないかなって思って」


 とりあえず話を自分寄りに進める。

 この桜のバイト先。

 嵐は以前桜から「将来の夢のために模型専門店でバイトをしている」と聞いていた。

 アニメや特撮のオタクでもある嵐としては当然気になるところではある。

 が。


「先輩のバイト先には興味があるけれど……今日は魔法少女の方を何とかしようと思っていたんで」


 先に立てたスケジュールを優先しようという意志を持っていた嵐は模型専門店の誘惑を押しのけ先輩の誘いを断った。

 この返事に、


「魔法少女ねぇ……」


 と頷いた桜は、


「実は今回バイト先に来て欲しいっていうのも魔法少女絡みのことなんだけど」


 と口にした。


「魔法少女? 何か例の魔法少女に関して手掛りがあったということ?」

「いや、例の魔法少女の方じゃなくて。昨日出会った『元・魔法少女』の心当たりについてなんだけど……」

「ああ、心先輩とかいう……」


 この時、嵐の頭には「魔法少女としての先輩のことは桜先輩に任せて、自分は事件を追うべきだ」という考えもあったのだが。

 同時に「先輩の先輩に挨拶に行かないのは失礼じゃないか?」という考えもあった。

 そして何より「先輩の先輩とか、どんな人なのか気になる」という好奇心が強く彼女の思考を押した。

 結果、


「そうか……そういう事なら行ってみようかな」


 嵐は予定を変更して桜に着いていくと決め。

 こうして二人は桜のバイト先である模型専門店に向かうこととなったのだった。


 ☆ ☆ ☆


 で、その模型専門店に着いて早々、


「いらっしゃい……って何だ桜か。今日仕事だったっけ?」


 声をかけてきたのが例のシン先輩こと心であった。


「あ、先輩こんにちは」


 先輩に挨拶した桜はそのまま続けて。


「昨日はどうもありがとうございました。あ、こっちが超魔法少女ストームの中の人、永礼嵐です」


 と、特に雑談をしたりすることすらなく、いきなり昨日のお礼と後輩の紹介を始めた。

 勝手に紹介された嵐だったが、ここ最近桜につきあわされていたこともあって。

「まあ、先輩ならこんな感じか」と特に慌てることもなく、


「中の人って。まあ、そうだけど」


 などというところに冷静にツッコみを入れた。

 それに対して。


「昨日? 超魔法少女? 何のことです?」


 普段と違う口調になるほど動揺した心。

 彼女としては魔法少女絡みの話をこっちの世界の、しかも自分たち以外にもお客さんなどの人がいるところで、いきなりふられるというのはやはり恥ずかしいのだ。

 そして、そんなところで桜が、


「何とぼけているんですか? 先輩も元・魔法少女でしょ?」


 と言ったから、これは大変なことになった。

 何せこの手の店に来る普通のオタクが思う「魔法少女」とはいわゆる「ひらひらしたコスチュームを可愛く纏って戦う女の子」である。

 そんなコスチュームをあの男っぽい性格の心がかつて、おそらくはコスプレかなんかで纏っていた。

 お客たちはそう解釈して「へえ、以外」「あの心さんにそんな趣味が……」と誤解し、妙な目つきで彼女を見るようになったのである。

 そして、その目線に気が付いた心は、


「桜、今日仕事がないからって遠慮なんてしないで奥の方へ来てもいいんだぜ? 何なら友人の嵐……だっけ? お前も来いよ。ちょうど二人前ぐらいアイスがあるし、食っていけって」


 と言って二人とは店の奥で話すことにしたのだった。

 これを聞いて嵐は、「この心さんも、前の僕と同じか、いやそれ以上に人前で魔法少女の話題は出されたくはないんだな。お気の毒に」と思い黙ってついて行ったのだが。

 桜は、


「え? アイスあるの? よっしゃ、ラッキー!!」


 と単にアイスに釣られて店の奥に入ったのであった。

 ちなみに。

 この桜の反応は心の予想通りであり、彼女は内心で「計画通り」と思っていたのは言うまでもない。


 ☆ ☆ ☆


「……で、つまり俺もお前たちの前に虹華夢幻郷で魔法少女をしていたってわけだ。で、俺の時に悪事を働いていた奴らの親玉に、俺も『貴様は魔法少女の枠に収まっていない』って言われたんで、超魔法少女を名乗ろうと思っていたんだが……」


 約束通り、アイスを二人に与えた心は自分がかつて魔法少女シンとして戦っていたことを一通り説明していた。

 ちなみにカップアイスを食べている二人とは別に、心はタマゴアイスといわれるアイスを食べていたのだが、それはすでに食べ終えていたりした。

 まあ、それはさておき。

 心は、


「ただ、名乗る前に約一年の撮え……じゃなくて、魔法少女としての契約期間が終わって、ベルトを返却しちゃったから、実際にはほとんど名乗っていないんだが……まあ、それはともかく」


 と説明を一通り終えると、自分のベルトを取り出して、


「その時の経験と、模型やコスプレ用のヒーロースーツ作りで鍛えた技を使って自分オリジナルの変身ベルトをつくったってわけだ」


 と今度はベルトについて解説した。

 それを聞いて、アイスをぺろりと平らげていた桜は、


「じゃあ先輩もこれから一緒に戦ってくれるんですね!!」


 といってから、心に「よろしく」と言いながら手を伸ばし、握手を求める。

 しかし心の握手を信じていたその手が握られることはなく、

 代わりに心が告げたのは、


「いや、それはできねぇぜ」


 という返答だった。


「え? 何で?」


 首を傾げる桜に、


「そりゃあ、手助けばかりしていたら、後輩が育たないからだよ……ですよね? 心さん」


 と尋ねる嵐。

 心はそれを聞いて、


「まあ、それもあるんだが……」


 と呟いてから、


「実はこれ、独学で作ったんで変身システムが不完全でさ。まだ五分ぐらいしか戦えないんだ。それを過ぎると魔力が暴走して爆発する可能性があるっつうか……」


 と事実を告げる。


「五分過ぎたら爆発ってまるで……」

「どこかの何でも一番にできる探偵の纏うスーツみたいな……」


 流石に特オタというだけあって、二人は似たようなものを連想して応える。

 それに「そうだぜ」と頷いた心は続けて、


「まあ、顔だけ変身解除してやれば、服としては着れるんだがな……しかし」


 と更なる問題点を仄めかす。


「しかし?」

「何です?」


 尋ねる二人。

 この二人に対して、心はやや申し訳なさそうというか、恥ずかしそうにしながら、


「燃えるんだよ……」


 と呟く。


「え?」

「何が?」


 疑問形で反応している二人。

 だが、実はこの段階で二人は何が燃えるのか大体分かっていた。

 なので、心もこれ以上勿体ぶることはなく、


「ああ、変身前に着ていた服がな……燃えるんだ」


 と口にする。


「なるほど、それじゃあ仕方がないですよね」

「どこかの伝統ある妖怪退治集団と違って、先輩はあくまで個人だから服も支給されないしね」


 そう。

 あくまで一個人の、しかも金持ちでもなんでもない普通の民間人が変身するたびにいちいち服が燃えていたら費用が嵩んで戦えないのである。

 また、服を着ないで人がいないところで変身すればいいのでは?

 とも思われるかもしれないが。

 残念ながら、心に素っ裸で変身アイテムだけ装着するような変態的な趣味はないのだ。

 どこかの一族に婿入りしに来たメモリーのセールスマンでもあるまいし。

 また、一応断っておくと。

 心が変身するときには、彼女の周りを魔力の炎が激しく燃えて包み込むので。

 変身シーンの映像を一時停止しても裸の心を拝むことはまず不可能である。

 まあ、誰もわざわざそんなもの見たいとは思わないだろうけど。一部の人以外は。


「ん? 何かどこかで俺に対して酷いこと言ったやつがいるような……まあ、いいぜ」


 我々の世界(べつのせかい)からの邪念を感じ取った心だったが、それを気のせいだと片付け、そしてそれから、


「ってわけで、俺はお前たちと一緒には戦えない。だが、ちょっとばかし修行を付けてやることはできる」


 と二人に告げる。

 それを聞いて、桜は、


「修行!! やったあ。前から『あたしもいつか、インドの山奥で修行してぇ』とか思っていたんだよね!!」


 と喜び、漫画のキャラクターみたいに飛び上がる。

 それを受けて嵐も、


「そういえば、うちの文芸部にヨガの修行をしようと思って実際にインドの山奥に向かった人がいたけど、なぜか結局修行していたのはお台場(ダイバ)だったような……」


 と言ってから、


「僕も一応戦士だからね。まあ熱血とかは苦手だけれど、修行はするよ」


 と心の提案に賛同する。


「よし、決まりだな……じゃあ早速、虹華夢幻郷に向かって修行しようぜ」


 と言いながらベルトを装着する。

 桜と嵐も同じようにベルトを装着し。

 そして三人一緒に、


「「「魔導充身!!」」」


 と叫んで変身し、虹華夢幻郷へと向かった。

 ちなみに。

 実は心の普段の変身は「はあぁぁぁぁぁぁ……タアァーッ!!」と気合を入れて燃える炎を払いのけるような感じの変身なのだが。

 今回は二人に付き合って、変身をしたのである。

 その辺り、流石は先輩というか、大人なのであった。


(続く)

(その3)では超魔法少女としての修業が行われます!!

 が、まあこんな作品なので、修業の内容も……。

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