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超魔法少女グレンオー  作者: 窓井来足
第四章
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「アバレハートはギンギン中 その2」

どうやら、嵐は桜の家に泊まったらしいのですが。

そんな二人が、お昼として食べているもの、それは……。

 さて、日付は変わって。

 超魔法少女グレンオーこと、暮無桜。

 超魔法少女ストームこと、永礼嵐。

 二人の戦士は今、向かい合って――

昼食のカップ麺を食べていた。

 ずずずずずー。

 麺をすする音が、部屋に響く。

 仮にも、虹華夢幻郷では美少女戦士で売っている二人である。

 変身後はどう見ても特撮ヒーローだが、少なくとも変身前は美少女――と、言い張る二人である。

 何故、その美少女キャラとして売り込み中の二人が、昼食にカップ麺なのか。

 その理由を説明するために、前日のサラリーマン風怪人との戦いの後まで、一度時間をさかのぼるとしよう。


 ☆ ☆ ☆


 前日。あの戦闘の後。

 嵐は桜の家を訪ねていた。

 これは勿論遊びに来ていたというのではなく。

 先に二人が話していた「決め台詞、決めポーズの打ち合わせ」のほかに前回のエピソードで二人を鍛えた、先輩戦士のシンこと、咲野心が二人に出した宿題、「超魔法少女の今後の方向性」について、二人で話し合おうという目的があった。

 しかし。

 熱狂的な特撮とアニメ好きなオタクである桜。

 熱狂的な特撮とアニメ好きな腐女子である嵐。

 二人が、特撮やアニメのグッズであふれる、桜の部屋にそろった時。

 宿題とか、そういうものは適当な扱いになり。

 オタクなトークに花が咲いて、止まらなくなってしまったというのは、まあ、この手の作品を好んで読む読者の方々には、何となく想像がつくと思う。

 ついでにいえば、その「花」の三割程度は薔薇か百合なのも想像できると思う。

 で、何とかその、オタクトークが止まったのがもう、深夜時間帯。

 止まった理由が「あ、そろそろ深夜アニメやるじゃん」だったのがどうかと思うが。

 それは、さておき。

 女子高生である嵐は、こんな時間帯に外を出歩くと色々と問題があるので、帰宅できなくなってしまったのだ。

 嵐は実家が武術の道場であることもあって、幼い頃から格闘技を習っている。

 なので、それを使えば不審者からは身を守れるかもしれない。

 しかし、女子高生が、深夜時間帯に出歩いていると、お巡りさんに注意される可能性がある。

 そうなると、場合によっては、そのまま高校の方に連絡が行くことも考えられるのである。

 それは、色々と、まずいんじゃないか。

 桜はそう思ったので、嵐を家に泊めることにしたのだった。

 ちなみに、桜の両親は、仕事が忙しく、そろって海外に出張中という、この手の作品によくある設定によって、現在桜の家にはいない。

 また、桜には嵐と同じ高校に通う弟もいるが、彼は部活動の合宿に参加しているので、やはり家にいないのだ。

 こんな理由もあって、桜は嵐を気安く家に泊めたというのもある。

 で、この晩、あれこれ色々あった――らしい。

 筆者(わたし)は、この「色々」に何か、非常に気になるんだが。

 桜も、嵐も中々、何があったのか明かしてくれないので。

 ここは読者の妄想、いや想像に任せるとして。


 ☆ ☆ ☆


 翌日。

 つまりカップ麺のシーンと同日の午前十時。

 遅めの起床をした桜と嵐は、朝食も兼ねた昼食、いわゆるブランチを作ろうと試みた。

 適当なもので済ませるなら、もっと遅くに作り始めても、あるいは近所のコンビニで弁当などを買ってきてもいいのだが。


「こういう、変身ヒロインが集まったシチュエーションなら、一緒に料理っしょ!!」


 という桜の思いつきによって。

 桜と嵐は、お互い、ちょっと手間のかかりそうなものを作ることにした。

 桜は得意料理の一つである「キャベツとツナのサラダ」を。

 嵐はおばあちゃんから教わったという「トマトソースとサンマの蒲焼きのパスタ」を。

 それぞれ作ることにしたのだ。

 だが――


「ちょっと、キャベツ茹でたお湯捨てたいんですけど」

「僕が洗い物をしているの。見てわからないのかい?」

「野菜の下準備がしたいんだけど、包丁はどこだい?」

「ゴメン! これ以外、ちゃんと研げていない」

「あーっ!キッチンペーパーがない!」

「いや、まさか桜も使うとは思っていなかったから。全部使い切っちゃったんだけど」

「と、いうか、一緒に作業すると、移動しにくいな」

「最近の家の台所は、普通、数人で料理するようにできてないんだから、仕方がないでしょ!」


 と、まあ、こんな感じで料理が進み。

 完成したものは、見るも無惨な状態になってしまったのだ。

 それでも美少女キャラとして売っていく以上、何とか自分たちで作った料理を用意しなければ。

 そう思った桜は、二人での料理を失敗した後に、冷凍してあったご飯を解凍し、海苔なんかを使って、キャラ弁的なおにぎりを作ってみたのだが。

 よりにもよって、頭に「毒」と書いてある怪人をモチーフに作ってしまったので。

 これまた、食べる気が失せるようなものになってしまっていたのだった。

 ちなみに、これら失敗料理は桜の相棒・龍型機械生命体のオウリュウと、嵐の相棒・虎型機械生命体のフーコーが食べて片付けた。

 彼らは、人間と同じものを食べて、体内で分解し、エネルギーとして利用することができるのだ。

 ただ、今回、失敗料理を食べる際、彼ら二人は、口内の各種センサーをOFFにして食事をしていたので。

 残念ながら「スタッフが()()()()いただきました」とはいえないのだった。


 ☆ ☆ ☆


 で、ようやく冒頭の二人が向かい合って、カップ麺を食べている場面に戻る。


「前から気になっていたんだけどさあ」


 といいながら、桜はテーブルに「姉貴塩」と書かれたカップ麺の丼を置き、自分の所有する変身ベルト、グレンオードライバーを取り出す。

 そして、そのベルトのバックル、ハートになっている部分を、軽くいじり、三つに分解した。


「なんで、これ、三つに分解できるわけ? 玩具としての今後の展開とかあるわけ?」

「あ、本当だ」


 カップラーメン「妹味噌」を食べていた嵐も、自身の変身ベルト、ストームドライバーを取り出して、桜と同じように操作。

 こちらの方も、やはり三つに分かれる。

 そう、このようにグレンオードライバー、ストームドライバーは三つに分解できる構造になっているのだ。

 しかし、第四章まで、このギミックは何にも使われていない。

 まあ、第一章でグレンオーの紹介、第二章はストームの紹介、第三章はシンの紹介となっていたので。

 ベルトのギミックの紹介が、第四章以降に回されてしまっているのは、当たり前と言えば当たり前なのだけれど。

 桜的には「新しい能力とかあるのなら、詳しく知りたい!」というところなのだろう。

 無論、それは「戦士として」の考えではなく「一人のヒーローオタク」としての感情的なものなのはいうまでもない。

 この、桜の疑問に対してオウリュウとフーコーが、


「それはだな」

「我輩たちが開発中の、新たなフォームに変身するときに――」


 などと、ベルトのギミックを説明しようとした。

 まさに、その時だった。

 グレンオー感覚に感知あり!

 どうやら、虹華夢幻郷で、ネガティヴハートが暴れているらしい。

 これは、直ちに駆けつけなければならないだろう。

 桜と嵐は、色々いじって遊んでいた、否、動作確認をしていた変身ベルトのバックルをハート型に急いで組み直し。


「「魔導填身!!」」


 変身して、虹華夢幻郷に向かったのだった。


(続く)

ちなみに。作中で登場した。

キャベツとツナのサラダと、トマトソースとサンマの蒲焼きのパスタは。


一応、著者自身が作ることがある料理なので。

レシピにまとめようと思えばまとめられたりします。

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