第6話 伝わらない乙女心
見回りが終了した後は、またメンバー証を提示して町の中へ。
そのまま家に帰るのがいつもの事だが、今日は本部によって行かなければならない日だった。
早朝から朝の時間になって賑わいが出ててきた町の中を歩きながら、同僚について話をする。
「そういえば、最近マリオンのおっさん見てないな」
何となく話題に出すのは、同じ仕事をしているはずの男性。
マリオン・デザトリアの事だ。
キャロは、そういえば、という顔になる。
彼女もここ最近マリオンの事をみかけていないようだ。
「そうね。ちょっといい加減な所がある人だけど、見ないと心配。そこらへんで死んでないと良いけど」
「怖い事いうなよ。でも、あのおっさんだったらありえそうだな」
路上でアルコール飲み過ぎて、凍死してそうだ。
前に一度、そういう事あったんだよな。
賭け事で、全部もってかれたとか言って、薄いシャツとパンツしかはいてない状態だった。
……本当に心配になってきた。
あのおっさん、大丈夫なんだろうか。
しかし、そんな心配も彼女はすぐに忘れ去ってしまったようだ。
「そんなおじさんの事より。フラウの方はどうなのよ。彼女可愛いわよね。この間プレゼントもらったそうじゃない」
代わりに出されたのは、知り合いの女の子の話だ。
一般人で、戦える子じゃない。
「ああ、うまいお惣菜だった」
「何だ、ただのお惣菜? 心配して損した」
「え、何がだよ」
どうにもどういう話題でこの話をふられたのか分からないでいると、とげとげの態度で言葉を返された。
「うっさいわね、この鈍感」
脛を蹴られた。
……ちょーいたい。
この流れはちょっと理不尽だって思うけどな。
脈絡もなくキャロンが怒り出すのはいつも事だ。
ここに他の女の子がいればまた、会話が面倒な事になるんだよな。
何だか俺が悪いみたいな流れになって「早く気づいてあげなよ」「振り向いてあげなよ」って感じにさ。
何に気づけばいいのか分かんねぇから困ってんじゃないか。
振り向いたって別に誰がいるわけでもないし。