第15話 センサー
そこは、人が歩いて移動する分には、不便のない空間だった。
ジメジメとして暗くはあったが、決して人が行動できないという程ではない。
酸素もしっかりと存在していた。
キャロの魔法で定期的に明かりをつくりながら、奥へ進んで行くとクオンが目を覚ましたようだった。
彼女を背負っていた背中で、身じろぎする気配が発生。
「お、気が付いたみたいだな」
クオンはしばらく寝ぼけたような様子で身動きしていたが、やがて「はっ」っと息をのむ。
そして「おろしなさい!」と今までのやりとりでもついになかった怒号を発した。
まさか急にそんな反応されるとは思わなくて、思わずバランスを崩してしまった。
「うおっ」
そうして地面に倒れた俺に一撃いれてから、クオンは飛び退った。
それを見たキャロンが、抗議をする。
「ねえ、ちょっと。誰があなたを助けたと思ってるのよ。私達はあなたを、崩落現場に置き去りにしてもよかったんだのよ」
「それが恩人にする態度?」とキャロが睨みつける。
するとクオンは二、三回ほど瞬きをした後、視線だけで周囲を見回した。
彼女は信じられないといった様子でこちらに尋ねてくる。
「助けた? なぜですか」
「知らないわよそんな事。でも、オルタがあなたを助けるって言うから。仕方なく助けてあげたってわけ。こっちに危害を加えるのやめてくれる?」
「……」
クオンは警戒を解かない様子でしばらくキャロンをにらみ付けていたが、俺がその場から離れていた事に気が付いたようだった。
「そこの貴方、何をしているのです!」
「何って、調べてるんだろ」
「えっ、あんた何してんのよ。こんなよく分かんないとこで」
キャロンも遅まきながらこちらに気づいて驚きの声を話す。
そして、「こんな時に」みたいな非難がましい事を言いながら近寄ってきた。
あの時はクオンが起きてそれどころじゃなかったけれど、道の先に見えたのだ。
何らかの機械らしきものを。
だから、俺はそれを調べようとしているだけだ。
俺は、手元にあるコンソールの様な物をキャロ達へ示して見せる。
「何かさっきからこいつが光ってんだよ。たぶん、人が来たら起動するもんじゃないのか。うまくすれば地上に戻れるかもしれないぞ」
「体温感知センサーでもどこかにあるのかしら。でも、これ動かせるの?」
横に並んだキャロが背後を気にしながら、俺の手元を見つめる。
しかし、何が並んでるのかは理解できなかったようだ。
「貴方達、私を無視して何をやってるのですか」
背後でクオンが何か言ってるけど、俺は取り合わないようにした。
何となくだけど、あいつは正面から向かって来る敵しか攻撃できないような人間に見えたからだ。
誰かを背後から不意打ちで攻撃できるような人間じゃない。
そう思ったから、これで正解なんだと思う。
レストリアで会話した短い間でも、あいつが真面目な人間だってことは分かってたしな。




