第5話 『 魔法少女達のチープな魔法 』
※注意※この物語はフィクションです。実在の人物、団体、事象とは無関係です。
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「……………」
「……………」
「……………」
「━━━━━………」
目は口ほどに物を言う。
目つきというのは時にダイレクトに心象を伝えるものだ。
目と目が合った瞬間、以心伝心として相手の心が自分の心へ反映される━━━━━かのようにワタルリは思う。実際。
3人の少女たち1人1人の目は一様に「ガッカリ」を表しており、思いを受け取ったワタルリ少年はなぜか傷ついた気持ちになった。
ワタルリよりもやや低い位置にある彼女らの目線からの、責めるような視線。
小柄でかわいい顔をした少女たちの無体な眼差しを(或いはご褒美か)と発想の転換ができるほどワタルリは器用ではない。普通に思春期男子としてグサリと刺さってしまってる。もっとも、ワタルリが自分で勝手に傷ついたような感傷に思っただけとも言えるが。
「…何でそんな目で俺を見るん……?」
つい口をついて出た言葉だったが、日本語を解さない少女らから応答はない。3人共、解らない言語に眉根を寄せては互いに顔を見合わせている。
しかし少女らの視線がワタルリを刺したように、ワタルリの心象もまた、ワタルリの目を見た彼女らに伝わったのだろう。
黒髪のゆったりしたツインテールの子が目を伏せて、表情を気まずそうな澄まし顔に変えた。
「━━━━━…」
彼女はそのまま無言の溜息をひとつ付くと、足元の状況を見やっている。
床にはあちこちに何やら小瓶や小石や本や鏡や甕や短剣や植物など、他にも雑多なものがポンポン置いてある。兎っぽい小動物の死骸もあった。ワタルリが尻餅をついた際に右手が濡れたのはこの死骸の血液であるらしい。最悪である。
「∮≫@pdさrmvだlpg$」
黒髪の子がそれら1つ1つに手をかざしては何か言葉をかけると、全て灰のように崩れて消えた。
その現象にワタルリは驚いたが、それよりも黒髪の子の容姿が可愛いのに目を見張っている。
彼女は張りのある質感の肌の色がミルクみたいに真っ白で、頰がちょっと赤っぽいのが桃みたいだ。唇が少し厚ぼったいのも可愛らしい。地味な土気色のローブに包まれた姿が逆に一際幼く見える気がする。フードから溢れる豊かなツインテールをゆらゆらさせながら小さな体をちょこまか動かして作業しており、袖から出ている小さな手で長い杖をしっかりと握っている。はいかわいい。
かわいい女の子を眺めていたいが、ワタルリはさっき手についたままの血液らしきものが気になる。ネチョネチョするのだ。なんか拭く物ないのか。
金髪の子に手を見せてアピールした。
「━━━━━………」
が、無視された。マジかよ。
彼女はワタルリから顔を背けて歩いていき、壁際に寄っては戸の無い小さな穴のような窓から外を伺ったり、キョロキョロしては聞き耳を立てたり、何かに警戒する素振りを見せている。周囲の何を気にしてるんだろう。
彼女は真剣な顔をして細い眉根を寄せているのだが、睫毛がすごく長くてややタレ目なのでとぼけた感じに見えてしまう。プニプニした感じの頰の間にある小さい口を終始引き結んでいるのがかわいい。頭髪の毛量がめちゃくちゃボリュームがあり、太腿あたりまで隠すほどで、顔や手足はそこからひょっこり生えているみたいに見える。全身覆うほどのローブを被っているから余計にそう見えるのかもしれないが、マスコットキャラみたいでかわいい。
だが、この子はワタルリにバケ猫と契約をさせようと企てた子らしい。よくわからんけど、油断ならない。
床に描かれた魔法陣のような模様を確認している少女は茶髪で三つ編みで巨乳だ。じゃなくて、彼女は床の模様を念入りに調べては小首を傾げている。
ワタルリも床の模様を見たが、ワタルリには理解できない文字や記号のようなものばかりだ。落書きみたいに見えなくもないし、胡散臭いオカルト感がある。━━━━━はっきり言って、素人目に見てもちゃっちい下手くそなドローイングだな…。
「:ぴh@おjgf*>>…」
三つ編みの少女が何事か囁いた。そして手に持つ細い杖の尻で床を打つと、魔法陣は一瞬で青く燃えて消えた。
「おぉ…!」とワタルリが感嘆すると、彼女はワタルリの顔を見てうっすら微笑んだ。その表情には少女らしからぬ艶めかしさがある。思わずワタルリが胸の内に恋に似た疼きを感じたのは、彼はまだちょろいスクールボーイなので仕方がない。
だがワタルリは(ここで調子に乗ってはならない)と自分を戒めて平静を装う。女の子との距離感が解らないワタルリだが、過剰反応はよくないだろう。
ドギマギしているワタルリを尻目に、三つ編みの少女は床にペタッと座り込んで足を投げ出してはダラダラしている。何だその仕草は。仲間の少女2人を眺めている様子だが、何を考えているんだろう。お片付け手伝わんのか?
彼女の顔は頰にそばかすがあって、眉毛が無い。独特な長い三つ編みは後ろ髪と側頭部に結われている。顔が隠れる長い前髪の間から覗く目つきが鋭くて、ちょっと怖そうな雰囲気がある。だが形のいい唇が艶々に潤ってる所とか妖艶な感じだ。日に焼けた感じの肌の色といい、なんだかヤンキーぽいぞ。かわいい。
そんな風にしてワタルリが3人の魔法少女をじろじろ見て品評しているうちに、少女らのお片づけは滞りなく進捗していく。
とはいえ━━━━━━━━━━
━━━━━━━━━━魔法陣と小物と呪文?何だそりゃ
こんななんか古典的というか稚拙な感じの、お遊びのオマジナイみたいな方法で召喚魔法みたいなことが出来て、俺がここに現れた?
本当にそんなこと出来るの?
ワタルリは考えるうちに、何だか彼女らの使う魔法が滑稽なものに思えてきた。おままごとかな? w
でも彼女らが使う、その手品のようなちょっとした魔法らしき技は見ていて面白いのは面白い。
宙空に水の塊を出して操作し、床を洗っては火や乾風を出して乾かす。
霧か光のようなものを出して漂う匂いを消す。
そういえば不思議なくらい作業中の物音がほぼしない。これも何か防音の魔法とかだろうか。
少女らが魔法を使う度にワタルリがいちいち近くへ行って「おぉ」と感嘆すると、3人ともちょっと得意げな感じで、ワタルリが見やすいように立ち位置を変えてくれる。サービスいいな。
「gaoigawmふぁanefあmg?」
「eargvみえanあva…ww」
「www」
ワタルリがいちいち魔法を見に来る様子が面白いのか、彼女らが何か話しては笑っている。
たぶん「魔法を見るのが初めてなのかしら?」「かわいいわね…ふふ」とか言ってるんだろうと思っておく。そうであってくれ。
こうして見ていると彼女らは本当に単にかわいい魔法少女だ。
ワタルリより背が低い子ばかりだから、子供なのは間違いないだろう。
━━━━━足ほっそ
顔ちっちゃいな〜
化粧とかしてるのかわからんけど、人形みたいな可愛さだな…魔法で可愛くしてるんだろうか?
これから仲良くなれたら嬉しい。もしかしたら、これから色々とこの世界の事を教えてくれる予定だったのかな?言葉が解ればな…
てゆうか、3人ともモッサリした布を全身に羽織ってる格好なのがちょっと気になるな…屋内なんだから脱ぎなよ〜
少女らに言葉が通じないと分かっているので、ワタルリは一人であれこれ考えたり観察する他ない。
部屋を見回すと、少女達にばかり目を奪われていてほぼ見ていなかったが、やはりここは一個の閉ざされた部屋だ。金髪の少女が作った仄かな明かりだが、暗さに目が慣れてきたのもあって周囲がよく分かる。
畳で言えば10畳ぐらいの大きさの部屋だろうか。広くは無い。
古そうな姿見の鏡や、棚や箱や樽や壺などの備品や家具がポツポツ置いてある。だがどの収納にも物は置かれていない。
床も壁も天井も、でかい巨岩を組み合わせた感じの形でできているように見える。部分的には木材の柱や梁や筋交いがある箇所もあるようだ。
壁の1箇所のやや高い位置には、通気口かと思うほど小さな穴みたいな窓と思しき箇所があるが、戸はついていないように見える。
部屋の隅にある扉はドアノブが付いてるだけの飾り気のないドア。ドア枠が無いからか立て付けが悪く、隙間がちょっと目立つ。
部屋全体に生活感がないのに、割と小綺麗に整頓などしてあるのがなぜか違和感があった。なんの部屋だろうここは。
少女達が静かになった。
お片づけが終わったようだ。彼女らは結構念入りに作業していた。
小道具や魔法陣といったものの片付け自体はすぐに終わったはずだが、その後も何度も何か文言を唱えたり、3人が独特の所作をしていた。
3人が立ち位置を変えつつ後ろ向きに歩いて片足でケンケンしたり、宙に杖で何か描くマネをしたり、お互いの頭の上を手で払いあったり、ブーツを脱いで投げ捨てては変なポーズをしたり、紙を取り出して折ったり切ったり破いたりしてばら撒き…お片付けしたばっかなのにええんか?
それらはどうも何か意味があっての事だったのだろうとは思うが、そのいずれもワタルリには訳が分からなくて、なんかシュールな光景であった。
彼女らは集合してワタルリを一瞥し、沈思黙考。思案に暮れている様子である。ワタルリもずっと黙ったままで、気まずい。
━━━━━俺をどうする気でいるんだろう
nanasino twitter
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なおそんなに嘆かない模様




