27、俺の煩悩は108じゃ収まらない
「これはどうかな?」
黒基調でスリットの入ったスカートがとても綺麗で高校生離れしている
「はい、先輩の大人っぽい雰囲気に良く似合ってます」
「じゃあこれは?」
美しい造形の中にも可愛らしさを取り入れたフリルが先輩のイメージが変わり新鮮だ
「あまり見せない可愛らしさが強調されててとても良いですね」
「凄いな、ここまで褒めてくれるとは。大分女の扱いに慣れてるとみえる」
「姉から英才教育を受けてますからね」
試着室のカーテン越しに話しながら俺はどうにかカーテンの中を覗けないか考える
そうこうしている間に着替えが終わり天戸が出てくる
ボーナスタイム終了。そういう所だぞ、俺。
「じゃあ買ってくるからそこで待っててくれ」
「了解です」
カーテンを閉め切り、日差しが入らない部屋にはパソコンの画面からの光と何やら男女の会話が聞こえる
「なんだが恋人みたいなじゃないか?」
「さぁ、付き合った事がないので良く分かりません」
ギリィッ
聞きたくもない男女の会話を聞きながら奥歯を噛み締める
「遊びに行っても良いとは言ったけどそこまでして良いとは言ってないよ、お兄ちゃん」
「これはお仕置きかなぁ...」
お茶とお菓子を摘みながら闇堕ちした妹を眺める姉の梓
「ねー、ちーちゃん。流石に盗聴器はどうかと思うわけよお姉ちゃんは。」
「お兄ちゃんの貞操の危機だよ!?お姉ちゃんはもっと危機感持って!」
「えー、かなくんにそんな度胸ないと思うけどなー。この前だってお風呂場で私の裸見て赤面して逃げていったくらいだし」
カダガタッ
血走った目で詰め寄って来る千咲
「家の中ではそういうの禁止って約束だよね?」
「ごめんごめん、不可抗力だよー。そもそもかなくんが気付かず入ってきたのが悪いんだし」
奏汰の動向を探るべく2人は部屋で盗み聞きをしていたが言い合いを始めてしまう
「ふぅ」
強制連行、じゃなかった。デートも中盤、俺にはひと時の息抜きを満喫していた。
天戸先輩はお手洗いだ
俺の横には大量の買い物袋、コスメ、バッグ、服
今日のメインの収穫物。
「女性って買い物好きだよなぁ、こんなにあったら数える程度しか使わないし着なさそうだ」
女性用トイレには列が出来ている、暫くは帰って来れなさそうだ。
そう思い俺はスマホを取り出しLINEを見る
梓と千咲からそれぞれ連絡が来ている
まずは梓から
「どれどれ...」
「かなくん、紗恵子と出掛けてるんだって?私はかなくんがモテモテで心配だよ。私の可愛い後輩なんだから変な事しちゃ駄目だよー、変な事ならお姉ちゃんにしてね。あと今日はちーちゃんがご機嫌斜めです。
帰って来るなら監禁位の覚悟は必要ようかな」
「....」
「千咲の見たくねぇ」
覚悟を決め千咲のLINEを見る
「お兄ちゃん、楽しんでるかな?お兄ちゃんを尾行して邪魔しようだなんて考えてないから安心してね。」
思わず辺りを確認してしまい、特に何もない事に安堵し再び画面に目をやる
「今絶対周り確認したよね?ね?」
うちの妹はエスパーか何かなのかな?
最近狂気じみた行動、言動が多くなってきた気がするなぁ。お兄ちゃん心配...主に俺自身の安全が、な。
「あの人と別に遊んでも良いんだけど気を持たせる様な事だけはしないでね、約束だよ。お兄ちゃん。」
めちゃ機嫌悪いじゃん
そうこうしている間に天戸が戻って来る
「お待たせーって、どうしたの?自殺志願者みたいな顔して」
「実は....」
俺はLINEでの状況を天戸に相談した
「成程ね、千咲ちゃんにはかなり目の敵にされてる様ね」
「なんかすみません...」
「良いのよ、可愛らしいじゃない」
流石先輩。意に介さない所か大人の余裕まで見せつけて来る。今の所千咲は先輩にことごとくあしらわれ、小娘扱いだ。天戸先輩は千咲が嫌いではない様だが。女狐だなんだと千咲は嫌っているみたいだ。
良い先輩なんだけどな、仲良くして欲しいものだ
椅子から立ち上がり天戸はジーンズの太もも辺りを手で軽く叩く
「さぁ時間は有限だ、早く行こう」
天戸はそう言いながら手を後ろで組み歩き始める
「行きますか」
奏汰は重い腰を上げ天戸の横まで歩く
「どこに向かってるんですか?」
「もう買い物は終わったし特に無いな。このまま解散って所じゃないか?」
「せっかく来たんだしもう少し遊んで行きましょうよ」
「おや?目的を果たし終えても尚付き合ってくれるのかい?いうならば今の君は既にお役御免だよ」
まるでその言葉を待っていたといわんばかりのいじらしい表情でこちらを見つめて来る
「そこまで冷たい男ではないですよ、俺は。」
「大体の男は買い物など興味が無く、ウィンドウショッピングの楽しさが理解出来ない。といった者が多いイメージなんだがな。兄も実際そうだ」
グサッ。まるで自分の事を言われてるかの様に具体的
確かに買い物など買いたい物が決まっているから大して時間はかからないし、見るだけなんて時間の無駄とさえ感じる時はある。
だが姉妹と出掛けている内に楽しそうにしている相手を見るのも楽しみの一つになっていた。
2人で出掛けているのだから全く同じ楽しみ方じゃなくても良いのだ。
「どこか行きたい所はありますか?」
「いーや、正直行きたい所は特にない。エスコートしてくれるかい?」
手を差し出す天戸に対して貴族の様なポーズをし手を取る
「任せて下さい」
2人は可笑しくなり同じタイミングで笑う
「か、かわいぃ」
ガラスケースに顔を近づけ中にいる犬を眺める天戸
先輩、顔が蕩けているな
「ここまで好きだとは知りませんでした、結
構お互いの知らない事多いですね」
「あぁ、好きなんだが何故か動物には懐かれなくてね、大体吠えられたり、引っ掻かれたりだな」
「私は、君の事を知っているがな」
ニヤリとこちらを見つめてくる
「恐いなぁ、一方的に知られているのは」
「まぁ全て梓さんから聞いた情報だよ」
「あの人があれだけ言うんだからどんな男かと思っていたら、確かに成程。と納得したよ。
まさか姉弟とは思ってもみなかったが...」
そのままショップでやっている触れ合いコーナーへと進む
「むぅ、君の所には犬が寄ってきた羨ましいな」
嫉妬の表情を向けてくる天戸に俺は子犬を手渡そうとする
「犬は人の本心が分かるって言いますからね。
心優しい天戸先輩の気持ちも伝わると思います。」
グルルルルルゥゥ...
「唸ってますね」
「唸っているね」
「笑顔、笑顔です!先輩。」
「おいで、わんちゃん」
学内でよく見られる周りがキラキラして見える先輩の笑顔。完璧だこれで落ちない獲物はいないだろう。
笑顔で両手を差し伸べす天戸に対して子犬はその手を払い奏汰の腕から離れる。そして...
シャァァァー
「んな!?」
お小水、だと。
何と天戸の味に小便をしたのだ。慌ててブリーダーのお姉さんが駆け寄る
「お客様!大丈夫ですか?申し訳ございません!!」
「あぁ子犬だからね、こういう事もあるだろう」
店から出る時も何度も謝るお姉さんに天戸は聖母の様な対応をする
「服を買っておいて良かったよ、こうなるとは思ってもいなかったが」
「言った通りだろ?動物から好かれないんだ」
「好かれてないってレベルじゃなかったですけどね...ん?」
さっきまで青空が見えていたが雲行きが怪しくなり、瞬く間に雨が降り出す
「うわぁ、にわか雨だ。走りましょう先輩」
屋根のある所まで走る2人
「参ったね、予報では雨はなかったんだが」
濡れた髪を耳にかけハンカチで顔を拭き、そのままハンカチを手渡して来る
「ありがとうございます...あ!?」
慌てて顔を背けて目に入らない様にする、でもちょっとだけなら...
再び天戸の方を見ると目が合ってしまう。
「見たいなら見ても良いんだよ?別に減る物でもないしね」
そう言いながら雨で透けた下着を見せてくる
黒い下着が透け、雨で服がピッタリしているせいで体のラインが丸分かりだ。何よりも、で、でかい。
何を考えているんだ!紳士に行け、俺。
「いや、そういう問題でもないでしょう。ちょっと恥じらって下さい」
「こういう大胆な女より、恥じらう女の方が好みかな?君は」
「大胆といえば君もだぞ、雨宿りにわざわざこんな所を使わなくても良いだろうに」
堂々と見せるのをやめ腕で胸の辺りを隠し目線で建物を見る
後ろを見るとそこにはラブホテル
気付かなかった、やたら地面がピンクのネオンが映ってると思ったのはこのせいか!
慌てて天戸に弁明する
「これは決してわざとでは無くあくまだ偶然で」
「ふふ、分かっているよ君にそんな度胸はないだろうからね」
からかわれた...
「中々止みませんね」
「そう、だね」
隣をみると雨に濡れ天戸は肌を震わせていた
それを見て俺は先輩の手を取り建物の中に入っていた
「んぇえ!?ちょ!何を」
あまり聞いた事ない先輩の声を聞くがそんな事よりも
「寒いんですよね、このままだと風邪引きます!後で罵詈雑言なら好きなだけ浴びせて良いですから取り敢えずは温まって下さい」
「き、君の大胆はたまにぶっ飛んでいるな、流石にこれは私も想定外だ...」
ゴニョゴニョと何か言っているが気にせずパネルをタッチして部屋へ向かう
初夏とはいえまだ肌寒い、それで雨にあたるとかなり冷える。早く暖かくしなければ!
ザザッザー
さっきまで聞こえていた声が聞き取れなくなる
「あちゃー、雨で盗聴器壊れちゃったかな?ほらほらちーちゃんここまでって事だよ。諦めなさい」
解散、といった雰囲気で千咲を促す梓
「むぅー!さっきから調子悪かったけど完全に壊れた。所々しか聞こえなかったけどホテルがなんだ言ってたよね!?」
「さぁー聞こえた気もするけど気のせいじゃないの?」
「いーや!あの女狐ねらやりかねない。お兄ちゃんの貞操が危ない!!」
頭を抱えデスクの前でジタバタする千咲を見ながら梓はため息を漏らす




