恒例のトラック何かされるやつ
佐藤健一、30歳。
一人暮らし歴8年
職業、会社員。
趣味、深夜アニメ鑑賞と料理系動画視聴
人生で彼女がいたことはない。
正確に言えば、いたような気がした時期はある。いたとは言ってない。
そんな佐藤の人生は、ある日、唐突に終わりを迎えた。
原因はトラック。
異世界転移業界ではもはやベテラン俳優のような存在である、あのトラックだ。
佐藤は会社帰り、横断歩道でスマホを見ながら歩く小学生をかばい――
「危ない!」
と叫んだところまではよかった。
問題は、佐藤自身が運動不足すぎて、助けに行く速度が絶望的に遅かったことだ。
小学生は自力で横断歩道を渡り切り、佐藤だけが見事にトラックの前へ取り残された。
「えっ」
運転手も言った。
「えっ」
佐藤も言った。
そして次の瞬間、佐藤の人生は異世界転移テンプレートに則り、盛大にフェードアウトした。
気がつくと、佐藤は真っ白な空間に立っていた。
床も壁も天井もない。
ただ白い。
あまりにも白いので、佐藤は一瞬「ここ、歯医者の天井かな」と思った。
「ようこそ、佐藤健一さん」
声がした。
振り向くと、そこには禍々しい老人が立っていた。
紫の魔女帽・紫のローブ・しわがれた長い鼻・とがった目つき
どこからどう見ても魔女だった。
しかも、手にはタブレット端末を持っていた。
「えーっと……佐藤健一さん。享年三十歳。死因、トラックとの接触事故。備考、童――」
「うおおおっい!」
佐藤は即座に叫んだ。
「失礼。」
「・・・・」
「いやあ、最近は転生者が多くてね。管理が大変なのじゃ。トラック案件だけでも週に二百件はある」
「トラック、働きすぎでは?」
「異世界業界の物流も兼ねておるからの」
「兼ねないでください」
佐藤は額を押さえた。
「嘘じゃが?」
「うそか~~~~い!」
再び額を抑えながら
「ええと・・・あななたは・・そのぉ」
「わしか?見たままじゃろ?」
「まじょ?」
ばちこぉぉぉん!!!
目の前の人物に思いっきり平手打ちを食らう佐藤・・
「なんだって?」と耳に手を添える目の前の人物
「いや・・ええと・・・あれですよね?偉い人的な!」
佐藤はおもった
美女な女神様とか美少女なあれとかでもなく・・・
せめて神様とか天使とかそういう・・わかりやすい姿でくればわかるけど・・・
「それそれ!正解じゃよ!」
「えええぇぇ?か・・かみさま?」
「そうじゃ?お望み通りの美少女女神様じゃよ!」
佐藤は再び思った
いやいや美少女って完全に老・・
ばちこぉぉぉぉぉぉんんん!!!
さっきの5倍の強さで殴られる佐藤・・・
死んだ。・・・とおもったがすでに死んでるっぽい・・・
どうやら本当に死んだらしい。
もしかして。
これは、あれではないか。
異世界転生。
チート能力。
美少女ハーレム。
魔王討伐。
スローライフ。
領地経営。
あと温泉回。
佐藤の胸が高鳴った。
「佐藤健一さん。あなたには、剣と魔法の異世界へ行ってもらいます」
「来た!県と魔法!」
思わず声が出た。
女神?はにこりと微笑んだ。
「その県じゃないじゃろ・・馬鹿かおぬし・馬鹿じゃな・・」
「・・・・」
ゴホンッ
「本来ならば、おぬしの人生はまだ続く予定じゃった。しかし手違いで死亡してしまったのじゃ」
「手違い」
「なので、異世界セットとは別にお詫びとして一つ、スキルを授るのじゃ」
「スキル!」
佐藤は拳を握った。
来た。
ついに来た。
これまでの人生、モテなかった。
告白したこともなければ、告白されたこともない。
バレンタインデーは毎年、母親からのチョコを「これは家族愛だからノーカウント」と自分に言い聞かせてきた。
だが異世界ならば。
剣と魔法の世界ならば。
自分にもワンチャンあるのではないか。
いや、ワンチャンどころか百チャンあるのではないか。
佐藤は期待に目を輝かせた。
「神様! ちなみにスキルって、選べたりしますか?」
「ふむ。多少なら可能じゃ」
「じゃあ、その……魅了とか」
「魅了?」
「いや、別にやましい意味じゃなくてですね。人望的な。カリスマ的な。周囲から自然と慕われる感じの」
女神?様は目を細めた。
「なるほど。モテたいのじゃな」
「違います!」
女神?様はさらに目を細めた
「モテたいのじゃな」
「違……まあ、結果的にそうなる可能性は否定しませんけど!」
佐藤は顔を赤くした。
女神?の冷ややかな目線が刺さる・・・・
「佐藤健一30歳童・・」
「だぁぁぁぁっしょ」
目線が刺さる・・・・
「ちなみにの、魅了のスキルじゃが・・・・持っておることがばれた時点で・・・」
と言いながら神様は両手首をそろえて前にさしだす。
「まじです?」
「うむ」
思わずうなだれてしまうが頭の中はハーレムでいろいろな種族の女性を思い浮かべてしまう・・・
「お・・おまえに魅了は・・なんかあぶなそうじゃの・・」
女神?はしばらくタブレットを操作したあと、ぽんと手を叩いた。
「では、これにしよう」
女神?の前に、光り輝く文字が浮かび上がった。
{ルーレット}
「魅了じゃないんですか・・・」
「いや6割魅了にしておいてやったぞ・・・これで当たらなければあきらめもつくじゃろ・・」
「神様・なんですよね?」
「め・が・み・じゃ」
「め・・・女神様なら出る目は思いのままにできるんじゃ・・」
「誓ってそんなことはせん!はよひけ!!童・・・」
「だぁぁぁ!もう!わかりましたよ!」
ぽち!
だららららららららららん!




