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魔法が使えない落ちこぼれ少女、人格持ちの魔杖を拾ったら最強になりました ~クーデレ杖と一緒に魔法学園の頂点を目指します~  作者: 岩柄イズカ


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21話 最強の魔法使い育成計画


 三日が経った。


「先生は数時間で全快したのにぃ……」


 ハルは自室のベッドの中でため息混じりにぼやいていた。

 三日前。ロキアとの激闘を制し無事アリシアを守り抜いたものの、その代償として魔力路を酷使した反動は酷いものだった。

 全身がまるで金槌で殴られているかのような凄まじい筋肉痛が襲ってきている。


「うぅ、トイレ行くだけでも地獄なんだけど……」

『……申し訳ありません、マスター』


 ハルのベッド脇で、アリシアが申し訳なさそうに俯く。


「あ、違う違う! そういう意味じゃないよアリシア。これは私が自分で望んだことなんだから。アリシアのせいじゃないって」

『でも……』

「ほら、アリシア? そんな顔しないの」


 沈んだ表情を浮かべるアリシアに、ハルは優しく笑いかける。


「私達は相棒だもん。お互い相手のために頑張るのは当たり前、そんな落ち込んだ顔してちゃ私の方が気負いしちゃうよ? 感謝してくれてるなら、むしろ笑顔でいてほしいな?」

『……ありがとうございます、マスター』


 穏やかな空気が二人の間に流れた。これまでももちろん大事な友達だったけど、先日の一件で本当の相棒になれた気がする。


「というわけで改めて、これからもよろしくね、アリシア!」

『はい、マスター。当機があなたを最強の魔法使いにしてみせます』

「うん、まぁ……お手柔らかにね?」


 少しだけ苦笑いを浮かべながら、ハルは応えた。


「……ところで、アリシア?」


 ふとあることを思い出してハルがニヤリと笑う。


『何でしょう?』

「そういえば、『帰ったら何でも言うこと聞きます』って言ってたよね?」

『……え?』


 アリシアの顔が強張る。


「さて、なにをお願いしよっかな~?」

『え、あの、あれはその場の勢いというか……』

「だめだめ、約束は守らなきゃ。う~んそうだな~……」


 ハルはしばらく何をしてもらうか考え、いいことを思いつくとその内容を伝えた。


『ま、マスター!? 話し合いましょう!』

「うふふふ……やだ~~♪」


 部屋の中にアリシアの悲鳴じみた声が響いた。


 †


 夢の中。


 アリシアには所有者の夢の中に入り込み、それを自由に操作できる能力がある。試験前には訓練の場として利用されていたが、今は──


『マスター……こ、これは一体……?』


 まるで絵本から抜け出したようなお姫様の寝室。

 ベッドに腰掛け困惑するアリシアの前には、ハルがにこにこと嬉しそうに並べている大量のフリフリ衣装があった。


「前から一度、アリシアにはいろんな服着せてみたかったんだよね~♪ だってアリシア可愛いんだもん。お姫様みたいなドレスとか絶対似合うと思うんだ~♪」


 ニコニコと楽しそうに笑うハルに、アリシアは戸惑いを隠せない。

 ハルは目を輝かせながら衣装の一つを手に取る。


「ほらほら、まずはこのドレスからいってみよ~!」

『……マスター、正気ですか?』

「うん超真剣だよ? 約束したよね?『何でも言うこと聞く』って」

『うぅ……』


 観念したアリシアが衣装を着替える。ポンッと可愛らしい音と共に、アリシアの服が童話のお姫様が着ていそうなドレスへと早変わりした。


 普段は常に落ち着いた雰囲気の黒いローブを着ているアリシアが、フリルをたくさんあしらったいわゆる甘ロリ系ドレスを着ている破壊力たるや凄まじいものであった。


 抱きしめたくなるような小柄で華奢な身体を包む可愛らしいドレス。普段はクールであまり感情を出さないアリシアが顔を真っ赤にして恥ずかしがってるのも非常にポイントが高い。


「きゃぁぁぁぁぁ~~~~~!! 可愛いぃぃ~~~~~~!!」


 ハルは大絶叫。興奮に目を輝かせてアリシアに飛びつく。


『マ、マスター!? ほ、ほっぺたスリスリしないでください……』

「だってかわいいんだもん!! ほらほら、次はこのリボンもつけよう! あ、猫耳カチューシャの方が良いかな?」

『あうう……』

「いやぁ~~~ん!! かわいすぎるよぉ~~~~~!!」


 大興奮のままアリシアを抱きしめるハル。アリシアは恥ずかしがりつつも、それでもどこか幸せそうだった。


 だがふと、何か気がかりを思い出したかのように顔をしかめる。


『……マスター。……一つ気になっていたことがあるのですが、質問してよろしいですか?』

「へ? うん、どしたの?」


 何だろう? とアリシアから顔を離す。アリシアは躊躇うように、しかし真剣な顔でハルを見ていた。


『…………ミルカさんとキス、したんですか?』

「え」


 一瞬質問の意味がわからなかった。

 だが質問の意味がわかると、ボッと一気に顔が熱くなるのを感じる。


『ロキア先生との戦闘中、粘膜接触によるものと思われる魔力供給の痕跡を確認しました。また、マスターの唇に付着していた唾液の遺伝情報がミルカさんのものと一致しています』

「!?!?!?」


 そんなことを言われて、あの時の記憶が鮮明に蘇ってきてしまった。

 ……あの時のことはあくまでも緊急時の医療行為として、暗黙の了解的に二人の間でなかったことになっていた。


 だって恥ずかしいし、気まずいし……お互い初めてだったのだし。


 だがあんな衝撃的なファーストキスを忘れられる訳がない。


 ミルカの唇は柔らかくて、温かくて、少し湿っていて……思い出すと、何故か胸がドキドキしてしまって……。


『キス……したんですね……?』


 何故かアリシアの目が不機嫌そうなジト目になってきているのに気付いてハルはハッと我に返った。


「い、いやあれはあくまでも治療行為で! 私もミルカも全然そういうのじゃなくて! ……えと、アリシア? なんか、怒ってる?」

『……怒ってません。怒ってませんが……』


 アリシアは顔を伏せて両手の人差し指をツンツンする。


『私がハルの相棒なのに………………ずるいです……』

「え? 何か言った?」

『な、何でもありません!』


 プイッと、今度はそっぽを向いてしまう。

 なんで不機嫌なのかわからないけど、あの一件以来感情表現がゆたかになったなぁ……なんて思っていると、不意に空から声がした。


「ハル~、起きて~~!」


 ハルとアリシアが顔を見合わせる。ミルカの声だった。


「お見舞いに来てくれたのかな? それじゃ戻ろっかアリシア」

『……はい』





「……起きたか」

「あれ? 先生、お見舞いに来てくれたんですか?」


 目を開けたハルの視界にベッドの横に座るミルカ、そして部屋の入り口に佇むロキアの姿が映る。

 ……筋肉痛でまともに動けないハルに対してやはりロキアはピンピンしている。やっぱり勝った気がしない。


「お前の今後について少し話をしておこうと思ってな」


 ロキアは静かに口を開く。


「……お前は『最強の魔法使いを目指す』。そういうことでいいんだな?」


 ハルは一瞬戸惑った。だが、すぐにしっかりと頷く。


「はい。アリシアとの約束ですから。これからも一緒にいるためにも、強くなりたいです」

 その言葉に、ロキアはふっと小さく息を吐いた。

「ならば、私も協力しよう」

「……へ?」

「そもそもこの学園の目的は優秀な魔法使いの輩出だ。本気で“最強”を目指す生徒がいるなら、指導してやるのも悪くないだろう」


 ハルの目がぱちぱちと瞬きを繰り返す。


「……え? つまり、先生が私の訓練を見てくれるってことですか?」

「ああ。今後は時間を取って、必要な訓練には付き合うつもりだ」

「……!」


 まさかの申し出に、ベッドの横で聞いていたミルカの目も輝く。


「すごいじゃない! 先生のマンツーマン指導なんて学園でも限られた上級生しか受けられないって聞いたのに!」


 しかしその言葉にロキアはぴしゃりと釘を刺す。


「……ミルカ・アルフェン。何を他人事のように言っている? お前にも協力してもらうぞ」

「へ?」

「私はアリシアが危険な存在であるという評価は変えていない。本来であれば平時での所持すら許可しなかっただろう。だがお前がいたからこそギリギリで許可を下した。今後の訓練でフェルシアスの魔力路に深刻な負担がかかる場面もあるだろう。その時はお前が治療しろ」

「え? つまり……」


 ミルカは固まる。

 ロキアが言っているのは要するに、ハルが訓練で魔力路を傷めたらミルカが治癒を施せということ。


 ただ傷んだ魔力路の治療など普通の治癒魔法ではできない。あれは粘膜接触……つまりキスでありったけの魔力を送り込んだからできたもので……。


 つまり──


「これから訓練でハルがボロボロになるたびキスしろってことですか!?」

「正確には粘膜接触による魔力供給だ」

「そういう問題じゃなくてええぇぇぇ!?」


 ハルとミルカは同時に顔を真っ赤にして二人で顔を見合わせる。


「い、いくら治療のためとはいえハルとそんな何回も……!」

「わ、私だってミルカとキスとか、心の準備とか……っ!」

「別に減るものでもないだろう。魔法使いならそれぐらい受け入れろ」

「いや減りますよ!? 乙女の純情とか貞操とかいろんなものが!!」


 叫ぶハルの声が部屋の中にこだまする。


 そして、その様子をそっと後ろで見ていたアリシアはというと──


『……むぅ……』


 ぷくっと頬を膨らませ、不機嫌そうに目を細めていた。


(やっぱり……ずるいです……)


 そんな小さな嫉妬心を胸に抱えながら、アリシアは自分のマスターの隣にちょこんと腰掛ける。





 ――そうして、ハル・フェルシアスの波乱万丈な「最強の魔法使い育成計画」がここに本格始動するのだった。


 ここまで読んでくれてありがとうございます。作者の岩柄イズカです。

 ブルアカに脳を焼かれて、こういう感じの作品を初めて書いたのですがいかがだったでしょうか?

 感想とか! 評価とか! 入れてくれたらすっごく嬉しいです!

 ひとまず、ハルとアリシアのお話はここで一区切りとさせていただきます。WEB投稿にはあまり慣れてないので至らぬ点もあったかと思いますがこれからも暖かい目で見守ってくれたら幸いです。


 で、ここからは他作品に関する情報なのですが、電撃文庫さんからラブコメを、小説家になろうで新作『はじめましてから始まる新婚生活 ~少子化対策で相性抜群(?)の美少女と同棲することになりました~』の連載を開始しました。

 どちらも一生懸命書きましたので、よろしければぜひご一読を。


 それではこの辺で、またどこかでお会いしましょうノシ

 

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