【♯19】黒い稲妻と共に、堕天使は這い上がった。
――TIPS――
【A.I.M.S 登場武器②】
〘VZ-369カービン〙
・弾倉数:18〜27発 ・装填可能弾丸:ライトアモ
・装着可能スコープ:倍率1〜4倍/ホロサイト/レンジャーサイト/可変式AOGスコープ
・高連射力と低反動を誇るアサルトライフル最高性能の銃。近・中距離をメインに活躍できるが、高連射故に弾丸消費が激しく、頻繁なリロードが必要。
――A.I.M.Sランクマッチでは、戦場のフィールドがランダムに変わる仕組みとなっている。
今回は初お披露目となる新フィールド。絶海の無人島が舞台の『ブルーウェーブアイランド』だ。
空中都市や荒野のキャニオンとは違って、果てしなく広がる平野、それと緑に覆われた森や草木が、プレイヤー達にとっての隠れ場所となっている。
そんな無人島が舞台のA.I.M.S。
シルバーランクになってもキッド達四人、エレメント◇トリガーズの目覚ましい活躍は、生配信や投稿動画を通じて益々知名度を上げていくのだが、今回も例外では無かった。
ブルーウェーブアイランド・北西エリア、島の作物を保管する保蔵庫の役割を果たす二つのドーム状の建設物『ミル・ダブルドーム』。
――ドガガガガガガッッ、バシュッ!!
〔エネミー66 ノックダウン!〕
高性能アサルトライフル『VZ-369カービン』を手に、無駄のない動きで確実に敵を射撃し、ノックダウンさせていくのはご存知キッド。
いつもはマグナムリボルバー『ファイアバード』を持ってる彼が、珍しくアサルトライフルを手に戦っていた。
「『ファイアバード』が落ちてなかったの! しゃーないからアサルトで間に合わせてるけどさ、反動の振動がどうも肌に合わねぇ」
「お前369で文句言うなよ! こっちは3点バーストでやってんだからさ!」
キッドの愚痴に、戦いながら物申すは相棒のハリアー。彼は元々アサルトライフルは得意分野だが、持ち合わせてるのはアサルトの中でも最も癖のある『トリニティビート』というAR。
そして銃の特徴の一つである【3点バースト】。FPSをやる人や、銃器系に詳しい人は聞いたことあるでしょう。
これは装填した弾が切れるまで連射される“フルオート”と違って、一回引き金を引くと瞬時に3発ワンセット発射される仕組み。
3点バーストのメリットとしては、弾丸の節約と精度向上、そして銃の破損防止にもなるという。
しかしFPSでは弾薬節約くらいの利点しか目立たず、正確なエイムが無いとその効率は発揮出来ない。玄人の性能と言ってもいい。
『じゃ武器交換するか? 今そっちに向か―――』
ダダダッ、ダダダッ、バシュッ!!
キッドの心配は、無線越しに聞こえた3点バーストの3連射音の連続と、血飛沫が弾ける音で掻き消された。
〔ハリアー・エネミー58 ノックダウン!〕
「要らねー心配、痛み入るぜキッド。俺っちはエイムは滅茶苦茶良いみたいだ!」
『そいつは結構!』
キッドの三人の仲間の中でも、特に信頼に厚いハリアーの無事に安心するが、別の不安が無線越しに聞こえた。
『キッド助けてええええええ!!!』
「……やべ、お嬢様がピンチだ」
アリスの悲鳴に苦笑いしつつも急遽駆け付けるキッド。何しろこの地帯は数多くのプレイヤー部隊が投下される人気スポット。
それに適応する程の物資と武器が用意されてる訳も無し、アリスはそれに取りそびれて、敵に狙われ付け纏われていた。
「何てしつこい奴らや、まるでハイエナやで!」
アリスと同行するツッチーがボディガード。お得意のスキル、ノームパワーのシールドでアリスを援護するが、十字射撃相手に完全な防御は望めない。
「もう、何でこれしか残ってないのよ!」
アリスもどうにか残り物であるピストル、ハンドガン最弱の『D-1999』で応戦するも、セミオートで引き金連射しなきゃいけない仕様にやきもき。
早く来てきてと、キッドの援護を頼りに必死に延命を試みるアリス。シールドも破壊、体力もあと僅かな所で炎と共にやってくる奴!
◇――――――――――――――――――――◇
・ノーマルスキル【ファイアークラック】発動
◇――――――――――――――――――――◇
修羅場に放たれた打ち上げ花火、高熱と弾ける火花が敵の動きを封じ込める。
炎のスキルを放ったキッドの援護が間に合った!
「ナイト様参上仕る〜ってか? キルポイントは頂いてくぜ!!」
打ち上げ火花の次は弾丸の火花。VZ-369の高連射攻撃で複数部隊を一網打尽! 漁夫の利も狙えたようで一気に8キル達成!!
〔エネミー85・62・11・5 撃破!!
キッドが新しいキルリーダーになりました〕
キッドが現時点で多くのプレイヤーを撃破した称号に『キルリーダー』を獲得した頃。
同時にアリスは満身創痍の中でボディシールドを回復するエネルギー回復電池『シーセル』でチャージ。そしてアリスのノーマルスキルも発動させる。
◇――――――――――――――――――――◇
・ノーマルスキル【ヒーリングオブジェ】発動
◇――――――――――――――――――――◇
アリスが発動させたスキルは、周囲のプレイヤーを自動的に体力回復させる癒やしの能力。
発現させたウンディーネのオブジェから放たれるマイナスイオン効果のある周波によって、自分のみならず味方の体力も回復させる優れもの。
キッドもツッチーも、ちゃっかりとオブジェに近づいて回復中。
「いつも助けられちゃってゴメンね、キッド」
「謝る事じゃねぇよ、助け合いは当然だ。ほらマークスマンの『スティングレイ25』。確保しといたから使いなよ、お嬢様!」
キッドは二個目の武器からマークスマンライフルを取り出して、それをアリスに手渡した。彼女の得意武器の一つである。
「ホント、キッドって優しいのね。ありがとっ♡」
「……誘惑よりもコーヒー奢ってくれる方が嬉しいけどね〜」
何処か素直になれないキッド。気付けば『ミル・ダブルドーム』では殆どのプレイヤー部隊の気配は無く、辺りには墓標としてデスボックスが散らばるのみ。
「だいぶ片付いたみたいだ。早くハリアーんとこへ合流しようぜ」
「ほいきた」
三人は周りのデスボックスに収納された武器・アモ・物資を回収しつつ、ハリアーの元へ向かおうとしたその時であった。
『うわああああああああああああ!!!!!』
「「「!!?」」」
無線からつんざく絶叫、ハリアーの位置を知らせるマークを頼りに『ミル・ダブルドーム』の北側のドーム内へと駆け付けた三人。
〔ハリアー・ノックダウン!〕
向かった先では既に、ハリアーが何者かにやられて這いつくばり状態のまま外側の扉を塞いでいた。
「ハリアー、どうした!?」
「大丈夫だ……!」
敵が攻め寄らないうちに、アリスが組成措置を図る。
締め切った扉の向こうで、間違いなく一人の気配を察知。ハリアーの復活と同時に、脚で扉を蹴りARを構えるキッド。
そこには上下共に真っ黒な服と、左眼が隠れている程の長い黒髪に緑の鋭い眼で、キッドを睨みつける男が立ち尽くしていた。
「……漁夫の利でセコい事してる割にゃ、随分余裕な面してんじゃねぇか?」
キッドは『VZ-369』を構えながら威圧の姿勢。だが黒の男はそれに全く屈せず、それどころか無表情の圧で返し、頑なな口を開いてキッドに問い返した。
「―――――寄越せ」
「よこせ? 何の事だ」
「太陽の欠片だ」
“太陽の欠片”、それを聞いてキッドは直ぐにそれが『シャインピース』の事であると悟った。
だが報酬でしか貰えない秘宝を寄越せと豪語し、ハリアーをノックダウンさせた所を見るに、並大抵の実力ではないと判断したキッドは一旦の警戒を解く。
「お前にはチーターとか、【プレデター】みたいなクズな香りはしねぇな。先ずは名を名乗って貰おうか」
すると男の動きは止まり、冷たい目線で彼の方に首を向けながら己の名を口にする。
「俺の名は、―――【ルシファー】」
「ルシファー、なる程ね、確かに堕天使みたいな面してるわ。……じゃ俺達の事は知ってんのかよ?」
「『エレメント◇トリガーズ』。地底空間で悪足掻きをしている偽善者」
感情を無くした堕天使・ルシファーと名乗るプレイヤー。最後の説明が余計だったか、偽善者呼ばわりされてカチンと来たキッドは怒鳴り返す。
「――――抜け、堕天使野郎ッッ!!!!」
キッドの咆哮にピタッと足取りを止めるルシファー。何処の馬の骨か知らない者への挑発は危険を伴うが、キッドはそれを諸共せず、強者に立ち向かう恍惚に震えるように不敵に笑う。
……しかしそれはルシファーとて同じ事だった。
すると彼はニヤリと静かに笑みを浮かべながら、装備していたLMGを構える。
「………?」
キッドは今まで見たことの無いLMGの構造に疑問を抱く。それが不覚の元となった。
「危ないッッ!!!」
ギュイイイイイイイイイイイッッッ
(弾が、エネルギー光弾だと………!!?)
未知の武器の発射、その刹那に感じたキッドの驚愕を他所に、巨大なエネルギー弾の流星群が彼を襲う!
―――エレメント◇トリガーズ、“黒い稲妻”と激突す!!
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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!




