【♯17】想いは数々あれど、大事な故郷を守りたい。
―TIPS―
【地底空間・アンダーグラウンド③】
一度地底空間に追放された者でも、ゲームの実力次第では地上に復帰する事は可能である。
それ以外にも復帰方法は数々あるが、中には地底空間の暮らしに充実する者もいる為、地上復帰を拒否し続ける者も存在する。
――四人が揃って、自分を育ててくれた故郷・地底空間に赴き、恩人である住民の皆と再会し、改めてFPSゲームの聖地『A.I.M.S』に向かう意思を再確認したエレメント◇トリガーズ。
再び動画投稿サイトには、キッドが企画するA.I.M.Sのランクマッチのプレイ実況動画が、ライブ配信で今日も四人の活躍を視聴者の前で魅せる事となった。
第三者から見れば、何の変哲の無いゲーム実況に見えるかもしれない。
しかしそこに挑むキッド達にとっては、覚悟を決めた直後の一戦となっていた。
〘がんばれー〙
〘地底のヒーロー、トリガーズ!〙
〘差別なんかに負けないで、皆が付いてる!〙
〘神エイム魅せてくれー!〙
今回も数万人もの視聴者が、四人の魅せプレイを拝みに暖かなコメントを寄せつつ応援してくれている。
キッド以外の三人は、今までコメント欄の視聴者を単なる野次馬にしか思ってなかった。
だが実況動画を通じて熱い応援を送ってくれる人達が、かつてキッド達を成長させた地底空間の住民であった事を知った四人の気合は十分だ。
「お前と組んでた時は、コメント欄がこっちも流れてて『物好きが集まってんなぁ』って思ってたが……」
「地底の皆が、あたし達を見守ってくれてたのね」
視聴者からの応援の有難みを、身を持って感じるハリアーとアリス。ライブ配信で同じく魅せる側になった事で新鮮さを感じる二人に、思わずキッドもしたり笑い。
「もうこうなっちゃ、“復讐”とか考えてる暇もねぇだろ。今日は【プレデター】も居ないんだ、楽しくゲームしようぜ!」
「そんでもって、エイムズマネーもガッポリ稼いだろか!」
さり気なくツッチーも強欲さを出してひけらかす。
今まで【プレデター】に対する恨みで動いていたA.I.M.Sのプレイが馬鹿馬鹿しく感じる程に、本気でゲームを楽しむキッドを見て、彼らも感化されていく。
「あー分かったよ! こうなりゃ俺っちも存分に暴れてやるからな、乗り遅れんなよ!」
「あたしの時は〘かわいい〙コメ宜しくね〜」
ハリアーとアリス、無論キッドやツッチーにも怒りを込めて戦う時もあるだろう。その憤りを弾に込めて、打ちのめしたい時もある。
だが彼らをここまで育て上げた恩人・恩師の存在無くしてその使命も無い。
仇討ちも逆襲も止めろとまでは言わぬが、大事な人の存在を無碍にしてはいけない。だからこそ戦う。
地上に立って独立した後も、再び地底へ突き落とされようとも、暖かく見守ってくれていた地底空間の人々に報いる為に……!
《A.I.M.S ランクマッチ カルテット(四人部隊)》
〚生き残り軍隊数 5組(18人)〛
フィールドは近未来空中都市『アトランティカ』。
かつてキッドが単独で実況した際に、ハイキックで【プレデター】を場外へ叩き落としたのもここである。
既にファイアウォールによって殆どのエリアは縮小済み。
更にキッド達を含めた5組の部隊全てが、空中都市の団地地帯『マテマティカ』に集結。
ある者はドーム型の建物に籠もって漁夫狙い、ある者はその天辺に見張っての遠方狙撃を試みる。
他にも水路から辿る地下通路で隠密に隠れながら、相手の出処を待っている部隊もいる。
それぞれが隠れ蓑を装い、攻撃の機会を待ち兼ねている最中。その静寂を打ち破る者が現れた。
「オラァ! 矢でも鉄砲でもアルティマスキルでも鉄砲でも掛かってこいやあああああああ!!」
「撃ってみろよミノムシーー!」
「あたしのハート撃ってご覧なさい☆」
「出来なきゃワテのケツに一発でかまへんで〜」
蛮声張り上げて、全部隊が集結する団地地帯に宣戦布告を仕掛けるのはご存知エレメント◇トリガーズ!
隠れる気なんか更々御座んせん!!
〘wwwwww〙
〘今日はどした?w〙
〘撃たれる気満々で草〙
〘俺はアリスちゃんのハートは撃ちたい〙
参加する者は当然ながら、視聴者も緊張する終盤のA.I.M.Sに起きた御乱心か。
鉄砲はあっても無鉄砲な行動にチャット欄は困惑と笑いを呼ぶ『草』を生やす。
当然キルポイントを狙う為に、躊躇わずスナイパーやマークスマンのライフルで狙い撃とうとする他の部隊達。
先程まで安全地区に隠れていたプレイヤー達が、そのカモを狙いに自ら姿を表した時点で、本当の罠に掛かったのは彼らの方だと、存分に思い知らされる事も知らずに。
「……キッド!」
「よっしゃ、ちょっと時期早めの花火大会おっ始めますか! ――PAS発動!!」
◇――――――――――――――――――――◇
・キッドのPAS『サラマンダー』確認。
◇――――――――――――――――――――◇
――目覚めよ、四大精霊の魂!
キッドの胸に宿り、炎を司る精霊『サラマンダー』の波動が、彼の周囲に迸ると同時に凄まじい覇気で強烈スキルを発動させた!
「火龍の火遊びに用心しとけよー! アルティマスキル【火龍星群・爆裂波】!!」
◇――――――――――――――――――――◇
・PASアルティマスキル
【火龍星群・爆裂波】発動
◇――――――――――――――――――――◇
キッドの指先から放つは赤いレーザーポイント。天高く突き抜ける赤の直線は、VR空間の宇宙から何かを呼び起こすサインとなっている。
その数刻後に彼が放った直線の真上から、烈火の色をした無数の炎の玉が『マテマティカ』の上空から降り注いでるではないか。その正体とは……?
「げぇっ!?」
「隕石群だーーーー!!!」
「逃げろ!!」
その威力たるや、凄まじいことこの上なし!
隕石の強固さから、建物の天井をも突き破る威力にプレイヤー達は隠れる場所を失い、次第に衝突する大ダメージ!
一発150ダメージの隕石によって、キッドに蓄積されるダメージポイント。
既に25キル以上を獲得した彼のポイントは5000をオーバーし、このアルティマスキルにもって一気に勝負を付けるつもりだ!
「よっしゃ、今ので殆どの部隊が“ロー”だ! 行くぞー!!」
「「「おーー!!」」」
“ロー”とは、皆さんはもう分かりますね? シールドも体力も殆ど無い状態の事。
漁夫を狙うプレイヤーを畳み掛けるように漁夫を狙ったキッドの作戦に、ハリアー・アリス・ツッチーと一斉に続いた!
ハリアーの疾風の如く、SMGの弾丸乱れ撃ち。
アリスの澄み切った水面の如く、狙い澄ましたスナイパーの会心の一撃。
ツッチーの大地を揺るがす根性の如し、パワーを活かしたショットガンが敵の零距離で撃ち放つ。
そして止めは……!
「ヤロォォォオオオオオオッッッ」
怒り心頭に突っ込む敵プレイヤー部隊。
残り3名のラスト部隊が、キッドを中心に四方八方のクロスファイア戦法で、蜂の巣にしようと銃爪に触る直前に放つは、脅威のクイックドロー!!
――――バゥンッ、バンッ、ババババンッッッ
「「「ぐあぁあああぁあぁあ!!!」」
〘プレイヤー5・98・36 撃破!!〙
【A.I.M.Sランク・チャンピオン エレメント◇トリガーズ】
〘おおおおおおおおおお〙〘おおおおおおおお!〙〘ナイスー!〙〘GG!〙〘おおおおおおおおおお!!〙〘チャンピオン!!〙〘おおおおおおおおおおお〙
我々は西部劇の早撃ちでも見ていたのだろうか。
得意のマグナムリボルバー『ファイアバード』を片手に、ダブルアクション仕様の強烈な反動を諸友せず、弾倉6発分を一気に撃ち尽くし、十字を組んで溢れるは敵のデスボックス。
武器に装着するアタッチメントの一つ、ポップアッププログラム『クイックドローイング』を装着したマグナムが可能にした早撃ち戦法。
反動による隙とクールダウンの処理を極力抑えることの出来るホップアップが、その名高き【早撃ちキッド】を実現させた!
兎にも角にも、四人揃ってランクマッチのチャンピオンとなったエレメント◇トリガーズ、吉報はまだまだ続く。
◇――――――――――――――――――――◇
・A.I.M.Sチャンピオン達成!!
KID ランクポイント 569p獲得!
ランクアップ
【シルバー5】到達!!
◇――――――――――――――――――――◇
これまで幾多のランクマッチで膨大なランクポイントを獲得した事で、トントン拍子にブロンズランクから上がって、ようやく【シルバーランク】に上がった。
これにより参加条件が更に厳しくなり、強敵も増えていくことだろう。しかし彼らには、地底とネットで培った人々の絆がある。
〘シルバーランクおめでとう〜!〙〘シルバーも頑張ってこーい!〙〘キッドさん達なら次も行けます! 頑張って!!〙〘地底の誇りだ!〙
もう一つおまけに、スーパーチャットの投げ銭コメント。
〘かっこいい人に地底も地上も関係ありません! 自分らしくありのままにA.I.M.S頑張ってください。四人とも大好きです!! ¥50.000〙
「おぉっ!」
「これは凄いな」
「わぁ……!」
「アカン泣けてくる」
このコメントには、キッドも他の仲間も感動させられた。差別になどにも躊躇わずにキッド達を大好きだと言い切った事や、この上ない鼓舞で大金も投げてくれた事にも驚いた。
果たしてそのコメ主が、地底空間の人かどうかは定かでは無いが、ここは最大級の感謝を込めて、四人揃って御礼の挨拶。『せーの……』と声を合わせながら、
「「「「スーパーチャット五万円、そしてメンバーへのこの上ない激励、心より感謝します!!!!」」」」
〘◇Now Lording◇〙
ランクマッチのライブ配信を終えて、A.I.M.SのVR空間からログアウトしたキッド達。
すると、何やらキッドはパソコン画面で真っ先に作業に勤しむ様子が見られた。
「忙しないな。もう動画の編集か、キッド?」
「ちげーよ、エイムズマネーの換金」
キッドはA.I.M.Sのランクマッチで貯金してきたエイムズマネーを現金に換算し、約十万円の大金を預金通帳に振り込んでいった。
「何よ、あたし達に無闇にマネー使うなって言ってたのに」
「その金でワテのレトロゲーでも買うてくか?」
「この金は、地底空間の皆に使う御寄付だ」
何処のタイガー◯スクか。エイムズマネーを私利私欲に使わず、お世話になっている地底空間の住民に使うキッド。キャッシュで出すのは無理がある、ならばこの時期にぴったりな贈り物を。
「もうすぐ御中元が近いだろ? 旧都の皆にフルーツセットでも買ってやるか!」
かくして、キッド達四人が本格的に、地底空間に生きる人々の自由を守るために、【プレデター】根絶の為にA.I.M.Sを本気で挑むようになったのは言うまでもない。
次なるシルバーランク、いよいよ敵陣側もキッド達と同じくPAS使いのプレイヤー達が続々登場。本格的な戦いにシフトアップする仕事人ストーリー!
彼らに待ち受けるものは光か、はたまた闇か!?
―――いざいかん、四大精霊の魂を宿すゲーム戦士達。『エレメント◇トリガーズ』に幸あれッッ!!
〘◇You are the A.I.M.S・CHAMPION!◇〙
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エレメント◇トリガーズ、次回も宜しく!!




