第四章 その5 機屋リューリ『恋心の裏側』
また、だわ。
また。
私は胸が締め付けられる感覚に襲われて目を覚ます。
わへいが北海道に行ってから。
夜中にふと目が覚めることが増えた。
寂しい?
恋しい?
お腹が空いたのならば食べればいい。
だがこの胸の中が空くような感覚はどうすれば良いのだろう?
胸の中が空っぽだからソトからの圧に耐えられないのかやたらとギュウギュウと締め付けられる。
違う。
いつも彼の事を考えて小言をずっと頭の中で言い続ける。
わへい。
私の話を聞きなさい。
私の言うことを聞きなさい。
私のそばにいなさい。
何故私のそばから離れるの。
許さないわ。
悔しいわ。
疑心暗鬼生ずるというけど、多分今の私はそう。
自分でも恐ろしいくらいにわへいが信じられなくなる。
ひょっとして、あっちで別の女の子と仲良くなっているのではないか?
あの松山とかいう男だか女だか分からないのはわへいと仲が良い。
それは知っている。
でも身体が女ならわへいとセックスは出来る。
二週間も一緒にいたら間違いがあってもおかしくはない。
いや、そういえば夏休みに入ってから最近ハナと会ってない。
まさか。
ハナが北海道に行って一緒にいるのではないか?
わへいにカーリングを教えているけどハナはわへいに近すぎる。
私はわへいと寝ている。
だからわへいは私のモノ。
そう思っていた。
でも本当にそうかしら?
今頃、ハナとわへいが…。
重なる二人のシルエットを想像して空っぽの胸の奥にバチリと黒い火花が生じ、嫉妬というドス黒いガスに引火する。
そうなってしまえば燃え上がった黒い炎は私の全身に燃え広がる。
頭を振る。
違う。
冷静になるんだわ。
馬鹿げている。
夜に考え事をしてもロクな事にならないわ。
だから考えてはいけないんだわ。
いっその事彼を忘れてしまおう。
彼のいない生活を考えた方が楽だろうか。
辛い。
私の中はこんなにも醜い。
自分の中の恋心なんて乙女チックなものは認めたくないわ。
彼がいて話をして、私が彼を抱いて。
そんな当たり前がなくなると途端にわへい不足に陥る。
黒い炎が下火になると心の底の底から。
蹲って震える少女が現れる。
話したい。
会いたい。
わへい、どこ?
嫌だよぅ。
一人は嫌だよぅ。
なんで。
人を好きになるんだろう。
恋をすれば人は美しくなるというけれど。
ならば私がいま見つめているぐちゃぐちゃのヘドロみたいな醜い私はなんだろう?
こんな想いをする為に恋をするのだろうか。
こんなに。
人を好きになる事は苦しい事なの?
私は自分自身ではどうにも出来ない葛藤を抱え、眠れぬ長い長い夜を耐える。




