話して
帷を見た瞬間に涙が出そうになった。しかし、ここで泣いたらきっと変に思われるから必死に堪えた。
「なごちゃん何か用事?」
「……久しぶりに帷と話したいなって思って」
「へぇ、珍しいね」
にっこり笑う帷の顔に何ら異変は感じられなかった。こういうときどうしたらいいのだろう、どうしたら過去を変えられるのだろう。
「あ、なごちゃんこれあげる」
そう言って帷は私の手のひらに小さなどんぐりを落とした。艶々のどんぐりを私は久しぶりに見た。よく見れば帷の制服は何だか汚れている、また草むらに入っていたのだろう。
「ありがとう」
私がお礼を言うと帷は嬉しそうに笑った。帷は小さい頃から優しいところはまったく変わっていない。どうしてこんな人がいじめられるのだろう。
私には分からない、理解できない、理解したくない。
「最近僕ね心理学に興味があるんだ」
「心理学?」
はじめて聞いたことだった、過去ではそんなこと聞いたことがなかった。
「うん、人間の心理ってさとても深くて面白いんだ。僕、まだ高校生にもなってないけど大人になったらそういうことたくさん学びたいんだ」
心理学、名前は聞いたことあるけどどんなものかはよく分からない。
「何だか難しそう」
「うん、難しいね」
「でも、きっと帷なら大丈夫だね。頭いいもん」
「頭は、そんなによくないよ」
帷は少し悲しそうに言った。
「え、だって……」
帷の行っている中学はこの辺りでは一番の進学校で高校もエスカレーター式で進むことができる。私も行きたいなくらいは思ったことがあるがいかんせん進学校なので倍率も高く私には到底無理なことだった。
しかし、その中で帷は好成績で入学することができたらしい。
「……帷」
「何?」
「何か、困ったこととかがあったらいつでも相談に乗るから言ってね」
「……うん、ありがとう。なごちゃんはやっぱり優しい」
「そ、そう?」
「うん、優しい」
何だか面と向かって言われると照れてしまう。
「帷だって優しい」
「僕?」
「うん、小さい頃から変わらないしね」
帷は何も言わなかった。そして表情も変わらず微笑んでいた、私にはそれが帷が無理して笑っているように見えて違和感をもった。
こうしてよく見てみると異変は小さいながらもあったのだ。
「もう、暗くなってきたから帰った方がいいよ」
「……うん、そうするね」
「またね、なごちゃん」
「うん、バイバイ」
私の家は帷の家から歩いてすぐのところだ。帷はもう帰ったかなと振り替えるとまだ帷は立っていて私に気づくと手を振った。
私は家に帰り自分の部屋に戻ると泣いた。帷に会えて、話せて嬉しかったのだ。
私は過去を変える、絶対帷を救う、たとえそれが帷にとって幸せでなくとも、自己満足とわかっていても、命がなくなるとしても私は帷に生きてほしい。




