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ぶつかる立場

「つまり、脱走したメカの居所が分かったのね。」

「そういうことです。辺境戦争のような事態になる前に、地球・ヒルタ連合軍でメカをたたこうと。」

「正論ね。」

センカは、ユリアン・ゲープハルトから渡された報告書を見て、ちょっとため息をついた。秋も深まり、故郷である日本からは冬の便りが聞こえてきた。

「また山ほど課題か……。」

「え?」

「ううん。なんでもない。それより、ヒルタ宇宙軍の最高司令部は何と?」

「サメロトリアテロ型戦艦と太陽系防衛軍の協力を求めています。」

「唯一の実戦経験者か。」

「ええ。自衛システムと戦ったことのあるヒルタの軍人なんていませんからね。」

「ゲープハルト少尉。」

「ああ、すみません、つい。」

思わず笑い声が響く。

「しかし戦略部長、こちらのほうが我々の関心を引きますね。」

「ええ。気になる。」

「戦略部長たちが例の通信を受け取ったのは……。」

「辺境戦争の最後の最後。もう半年以上もたっているわ。」




脱走したメカの本格的な調査が始まると、すぐにある方面からメカらしき機械群が、宇宙の裂け目の中、『藍色の宇宙』を通った痕跡があることが分かった。それがどうやら未知の宙域に繋がっているらしい。

さらにチームゼロの関心を引いたのは、かつてK作戦を終えたメンバーが受信した謎の通信と、似た謎の通信を、パトロール中のヒルタ宇宙軍の戦闘機ジュラーダが受信したという知らせだった。それは例の未知の宙域の方向からだったという。

「それで、わが軍の最高司令官様は何とおっしゃっているのかしら。」

センカがわざと上品な口調で尋ねると、ユリアン・ゲープハルトは困った顔をした。

「いえ、まだ聞いてないです。」

「ちょっと聞いてみる。あと、辺境移民協会のユウキかカズマは今どこにいる?」

「先ほど戦略部に来ていたので、まだ日本には戻られていないと思いますよ。」

「地球にはいるのね。よかった。」

センカは少し笑った。

「チームゼロ内でも相談したいし、防衛軍派遣となると、人類宇宙委員会や国連総会でもいろいろ立ち回らなきゃいけないし。」

「ではこの案件は?」

「検討中とだけ返信しておいてくれると助かる。」

「わかりました。そのように返信しておきますね。」










その日の夜、職員用アパートの一室、タケルの部屋に、チームゼロの10人が集まっていた。

「おじゃましまーす。」

「あ、タケル、お土産。」

「おうスズナ!ありがとう!ハルカもいつもすまないね。」

「お邪魔してるのこっちだから気にしなくていいよ!」

「おっ、スズナ気が利く!」

袋を開けながら、タケルがにやりと笑う。

「で、ハルカのはなんだこれ。」

「中国人の部下からもらった栄養ドリンク。なかなか美味しいわよ。健康にもいいらしいし。」

「まじかよ。」

「仕方ないでしょ。残業してて何も買えなかったんだから。」

チームゼロの面々は、テラポルトスにそれぞれアパートを支給されていた。タケルの部屋は2LDKのなかなかきれいな部屋である。

チームゼロの面々の中で一番インテリアに凝ってて使いやすく、きれいなのはタケルの部屋なので、自然とここに集まるようになっていた。

「明日は実家から学校行きたかったんだけど。」

「ゆーて、リンカは明日も学校サボる気満々じゃなかった?」

「コウスケに言われたくないよ。」

テーブルにはお菓子やおつまみが並んでいた。未成年ゆえ、アルコールはなかったが、さながら宴会のようであった。

「で、コウスケ。盗聴器の類は見つからなかったんだよな。」

トウキがコップを並べながら聞いてきた。

「ああ。俺がチェックした限りでは盗聴器は見つからなかった。念のためタケルの許可を得て、微弱だが妨害電波を流していた。」

「まぁ盗聴器はなかったけれど、おかげでそのあいだにYURIKAの新しいプログラム作れたから、ありがたかった。」

「よく言うよ。」

トウキが呟く。

「さっきまで強力な電波発生しすぎて、俺の携帯がだめになりそうだったんだぜ。」

「まぁ盗聴器の類は大丈夫なんだな。」

ショウタは平然として言い放った。


「悪い悪い。」

「遅くなった。」

ユウキとカズマが飛び込んできた。

「ごめんな呼び出して。」

「いやいや。」

「日本に帰る前でよかったよ。」

「地球にいたし。」

ユウキとカズマはそういって笑いながら、手土産を渡す。

「これでいいか?」

「うおー。ありがたい!果物か!」

「タケル、手伝うよ。」

スズナがさりげなく台所へ立った。

「あとは、センカか?」

「なんか残業が入ってしまったらしい。」

「ごめん、お邪魔します!」

やっとセンカが入ってきた。





「かんぱーい!」

「今日もお疲れ!」

さっそくジュースが飲み交わされた。

「ところで、今回集まってもらったのは、例の依頼についてみんなの意見を聞きたかったからなんだ。」

「だろうな。」

ユウキがそういって周りを見渡した。

「どう思う?」

「そうだなぁ。」

トウキが呟いた。

「俺はさ、単純に、知らない宙域をどんどん行ってみたい。地球にそのチャンスがあるなら、行きたいよ。」

「なんだそのアニメみたいな理由。」

タケルが突っ込みを入れる。

「ただ宇宙の裂け目をはじめ、僕たち人類が知らない宇宙セカイがまだたくさんある。今のうちに調査をして、航海の経験を積むことが、今後の太陽系の発展を考えると大切だと思う。僕らにはまだ経験が足りないからね。」

「私は、ちょっと反対。」

ハルカが続ける。

「外宇宙もいいけれど、太陽系の中にも目を配ったほうがいいわ。辺境の復興もまだまだなのよ。余力があるのなら、そちらに全力を注ぐべきだと思う。」

「わたしも同じ。」

リンカはそういってタブレット端末を見せた。

「今日届いた脅迫状だけでもこれだけあるのよ。今の世界は歪みつつある。その歪みを直すほうが先決だと私は思う。」

しばらく沈黙が続いた。

「俺も実は反対派だ。太陽系と鉄の星ヒルタの行き来の安全の確保や、太陽系の安定がまずは先ではないか。」

タケルがそう言いながら、果物をどんどんと机に置いた。

「やっぱり意見が割れていたか。」

カズマが頭をかいた。

「この情報を、リンカ経由で教えてもらってから、これは大変だと思っていたんだ。」

「辺境移民再建協会としては、まぁ反対派が多いかもしれないが。メカへの復習を考えると、行くべきだけどな。」

ユウキがそう言ってジュースを飲み乾した。

「太陽系防衛軍の最高司令官として言わせてもらうと、俺は行くべきだと思う。防衛軍としてはだな。」

ショウタがため息をついた。

「こんなこと言いたくないが、こちらの軍事力を見せつける必要がある。鉄の星との交流はまだお遊戯会みたいなもんだ。いつ何が起きるかわからない。」

「ええ、残念ながらそうよ。」

センカはみんなを見渡した。

「今断れば、向うがどう出るか、私たちにはわからない。」

「しかし、今の太陽系の現状はお前らもわかってるだろ!?」

「じゃあ、行かないっていうの!?」

タケルの部屋は次第に熱を帯びた議論に包まれていった。



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