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Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 外伝

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外伝 第5話 約束の朝

※挿絵はAIイラストを使用しています

朝の光がカーテン越しに差し込み、まだ少し冷たい空気が部屋を包んでいた。

テーブルの上には昨夜の名残り、片付けきれなかったマグカップとノートが並んでいる。


その静けさの中で、アルデンは早くも出発の準備をしていた。

背中に大きなバッグを背負い、淡い白の上着の裾を整える。


「もうちょっとゆっくりしていけばいいのに」


キララが残念そうに呟く。


「そうもいかないんだよ。次の調査先で待ってる星があるからな」


アルデンが苦笑いしながら荷物をまとめる。

声は柔らかいが、どこか後ろ髪を引かれているような響きがあった。


「そっか……」


キララが小さく肩を落とす。

その仕草を見て、アルデンは少しだけ目を細めた。

コーギーちゃんがソファーの上から軽やかに飛び降り、尻尾を揺らしながら近づいてくる。


「アルデン、ちょっと現状の情報交換をしておこう」


「ああ、そうだな」


二人は少し離れた場所で、AURORA関連の機密事項について話し合った。

アルフィオスの政治状況、地球での兄妹の活動進捗、今後の支援体制について、短時間で効率よく情報を共有する。


「分かった。引き続き二人のバックアップを頼む」


「もちろん。そちらも気をつけて」


コーギーちゃんとの打ち合わせを終えると、アルデンは玄関に向かった。


「じゃあ、俺はこれで」


「アル、本当にもう行っちゃうの?」


キララが寂しそうな顔で近づいてくる。

彼女の声には名残惜しさが滲んでいた。

まるで幼い日のような表情で、彼を見上げる。


「せっかく久しぶりに会えたのに……」


その様子を見て、アルデンの真面目な表情が緩んだ。

頭をくしゃくしゃと掻きながら、いつもの軽い調子に戻る。


「キララは相変わらず可愛いこと言ってくるな!」


「もう!そういうこと言わないで!」


キララが顔を真っ赤にして、アルデンの腕をぽかぽか叩く。

十五歳の少女にとって、真正面から()()()と言われるのは少し複雑な気分だった。


「はいはい、悪かった悪かった」


アルデンが降参のポーズを取る。

そして、いつものように笑って言った。


「じゃあ、俺の嫁になるか?」


挿絵(By みてみん)


キララの顔が一瞬で渋面になった。


「またそれ!いい加減にして!」


キララが頬を膨らませると、アルデンは声を立てて笑った。


そのやり取りは、実は昔からの定番だった。


まだキララが小さな子どもだった頃、あの崩落事件で救出された後も、彼女は度々アルデンに会いに行っていた。

いつもピカルが付き添っていたが、アルデンは事件後も落ち込んでいた彼の複雑な心境も感じ取っていた。

そして、彼の住む地区へ兄妹が遊びに行くたび、アルデンは決まって同じセリフを口にしていたのだ。


『キララは可愛いから、俺の嫁にするぞ!』


当時のキララは“嫁”という言葉の意味も分からず、ただ困ったように首を傾げて言っていた。


『よめ....?』


『キララは俺と一緒に生活するんだ!』


『えー!おにいちゃんといっしょじゃないならヤダ!』


その答えに、アルデンは毎回腹を抱えて笑っていた。


無邪気な拒否の言葉が、彼にとっては何よりも微笑ましかった。

そのたびに、傍らで聞いていたピカルは本気でキララが連れていかれると思ったのか慌てて割って入り、「キララはダメだよ!」と真剣に否定するのがいつもの流れだった。

彼らのその反応に、アルデンはさらに笑いをこらえきれず、三人の賑やかな声がよく小さな家に響いていた。


今もその名残が続いている。

あの頃の幼いやり取りが、少し大人びた笑いに変わっても、二人の間の温かい記憶として息づいていた。


「だから、お兄ちゃんにアストロギアで勝てたらね」


キララがふてくされたように答える。


アストロギアは、アルフィオス式のチェスのような戦略ゲームだった。

ピカルは幼い頃からこのゲームに天賦の才を見せており、大人でも彼に勝つのは至難の業だった。


「アレに勝てるヤツはそうそういない」


アルデンが苦笑いする。

実際、ピカルのアストロギアの腕前は異常なほど高く、これまで負けたことがほとんどない。

キララも、本気でアルデンを振るつもりでその条件を出したわけではなかった。


「まあ、挑戦するのは自由だけどなー」


「お兄ちゃんなら負けないもん」


キララが口を尖らせる。

その無邪気な姿に、アルデンの胸に少し寂しさが込み上げた。

どこかで、この時間が長く続かないことを知っていたからだ。


「……また来る時に言うわ」


その呟きには、いつもの軽い調子とは違う、何か複雑な感情が込められているようだった。

冗談なのか、それとも本気の部分もあるのか。

誰にも分からない曖昧さを残したまま、アルデンは背を向けた。


「待てよ、アルデン」


その時、ピカルが資料を抱えて現れた。


「次に来た時は、いつでも勝負するよ」


少し意地悪そうな顔つきで、ピカルがそう言った。

アストロギアに関しては絶対的な自信を持っている彼らしい発言だった。


「おいおい、そんな顔するなよ」


アルデンが振り返って笑う。


「まあ、負けるのは俺の方だろうけどな」


「当たり前だ」


ピカルの返しは淡々としていたが、どこか温かさがあった。

そのやり取りに、キララはくすっと笑う。

コーギーちゃんがため息をついた。


「まったく、懲りない男だねぇ」


「うるさいな」


アルデンが照れくさそうに頭を掻く。

その直後、彼はピカルの方へ一歩近づき、いたずらっぽく口元を寄せて小声で囁いた。


「妹離れしないなら、本当に俺が嫁にもらうからな」


ピカルは目を見開き、思わず息を呑む。

その真剣とも冗談ともつかない声色に、言い返す言葉を失ってしまった。


挿絵(By みてみん)


アルデンはそんなピカルの沈黙を楽しむように、意地悪そうに口角を上げてニヤリと笑った。

その笑みには、からかい半分と、どこか兄としての温かさも滲んでいた。


「じゃあ、本当に行くよ。お前たち、体に気をつけろ」


「うん、アルも!」


キララが力いっぱい手を振る。

ピカルも静かに頷いた。


「またお前たちに会いに必ず戻ってくるから」


「待ってる」


その短い言葉のやり取りに、確かな信頼が込められていた。


アルデンがドアを開け、外の光に包まれながら歩き出す。

背中が少しずつ遠ざかっていくたび、胸の奥がきゅっと締めつけられる。

見晴らしのいい窓から並んで見送る兄妹。

その隣で、コーギーちゃんが静かに呟いた。


「良い友達を持ったね、君たち」


「うん」


キララが微笑む。


「アル、また来てくれるかな」


「きっと来る」


ピカルが言う。


「あいつは約束を破らない男だ」


朝の光が少しずつ強くなっていく。

アルデンの姿が角の向こうに消えたあとも、窓辺にはまだ、あたたかな余韻が残っていた。


挿絵(By みてみん)


また日常が戻ってくる。

でも、昨日までとは少し違う日常だった。

重い現実を知り、大きな責任を背負うことになった。

それでも希望は失わない。

アルデンが信じてくれた道を、きっと歩いていけるはずだ。


窓の外で、地球の空が静かに広がっていた。


Project Alpheos 外伝 完


お読みくださりありがとうございます!


これにて、外伝(全五話)終了です。

このあと、リクエストで頂いたストーリーを進めつつ、本編解放までお待ちください。

あとがきのnoteもございます!

https://note.com/dasi_no_moto/n/n30ff3f57e633


ブックマーク、評価、コメントを頂けると大変嬉しいです!!


リクエスト企画の方は不定期で参加者様を募集してます。

Xで最新情報を投稿してますので、よかったらご覧ください。


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