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Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 番外編

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番外編『星からの声』

※挿絵はAIイラストを使用しています

 夜空に花火が散り、にぎやかな音が響く。

 祭りも終わりに差し掛かろうとしている。

 ピカルが浴衣の袖からそっと端末を取り出した瞬間、[着信:ノヴァ]の表示が光った。


「……このタイミングで」


 眉をひそめ、通話をオンにする。


『地球の文化体験とやらは、随分満喫しているようだな。』


 画面越しのノヴァの冷静な声に、ピカルは軽くため息をついた。


「学習の一環です。報告は後ほどお送りしますが」


『ああ、期待している。リアナス家の観(・)察(・)眼(・)とやらにな。』


挿絵(By みてみん)


(……最後の言葉は嫌味か?)


 言葉尻に苛つくピカル。

 そのやり取りを遠くから見ていたキララは、りんご飴片手に小声でつぶやいた。


挿絵(By みてみん)


「もしかしてノヴァ様? お兄ちゃん、すっごい仏頂面」


『今の声は、妹か?』


「なんでもありません」


『成果を忘れるな。次に必要なのは、お前たちの――』


「ノヴァ様! 私たち、がんばってますよ!」


 突如、キララが画面の前に割り込む。


「ほら! お兄ちゃんだって今日こんなに金魚も取ってくれたし、花火の構造とかもいっぱい説明してくれたし!それに――」


「キララ、やめろ。……恥ずかしいだろ」


「え~、いいじゃん!! こういうのはハッキリとしたアピール必要だよ!」


『大層なことだ。今後の報告を楽しみにしている。ああ、特に妹の報告書は、もう少し報告ら(・)し(・)く(・)しろ。』


 意味ありげな言葉を残し、通信は途切れた。

 ピカルはしばらく夜空を見上げ、息をつく。


「報告書らしくって何ー!?」


「キララは、もうちょっと『日記じゃない文章』で書けってことだよ。」


「むぅ……! 相変わらずノヴァ様厳しすぎる!」


 頬をふくらませるキララ。

 だが次の瞬間には、いつもの笑顔でりんご飴を差し出した。


「まぁいいや! はい、お兄ちゃんひと口あげる! あ、でもちょっとだけだからね!」


「相変わらず切り替えが早いな……」


 ふたりの笑い声を、最後の花火の音がやさしく包み込んだ。

______________


―――アルフィオス・執務室―――


 通信を切ったノヴァは、端末を机に置き深く椅子に身を預けた。

 静寂が支配する部屋。

 窓の外には、かつて栄華を誇った中央都市の夜景が広がっているが、その光はまばらで暗闇の方が目立つ。

 エネルギー供給の限界が、こうした場所にも影を落としている。


「満喫……か」


 ノヴァは小さく呟き、赤い瞳を細めた。


 画面越しに見えた兄妹の姿。

 特にキララの笑顔が、妙に目に焼き付いている。

 浴衣姿でりんご飴を片手に、花火の光に照らされて笑う少女。

 その背景には、色とりどりの提灯、賑わう人々。

 生命力に満ちた地球の祭りの光景。


「あれが……希(・)望(・)というものか」


 ノヴァは自嘲気味に笑った。

 アルフィオスには、もうあんな光景はない。

 祭りも、笑顔も、無邪気な歓声も。

 あるのは秩序と管理、そして生き延びるための効率だけだ。


 机の上には、ピカルから送られてきた前回の報告書が表示されている。

 几帳面な文体で綴られた観察記録。

 地球の循環システム、文化の多様性、人々の相互扶助。

 どれも理論的で、的確で完璧な報告書。

 その隣には、キララのものがあった。


「今日はお祭りに行きました! すっごく楽しかったです! 金魚すくいは難しかったけど、お兄ちゃんが3匹も取ってくれて……」


 ノヴァは思わず、口元をほんの少しだけ緩めた。


「……日記だな、確かに」


 だがその日記には、地球の人々の温もりと生の声が、確かに刻まれている。

 ピカルの冷静な分析だけでは見えない、もうひとつの真実がそこにはあった。


 ノヴァは立ち上がり、窓辺へと歩く。

 暗闇に沈むアルフィオスの都市を見下ろしながら、彼は静かに問いかけた。


「リアナス家……お前たちは、本当に星を救う鍵を見つけられるのか?」


 そして、自分自身にも。


「それとも......俺が間違っていたのか?」


 赤い瞳に映るのは、遠い過去の記憶。

 かつて、両家が手を取り合っていた時代。

 信頼と協力によって、星が輝いていた時代。

 だが今、その記憶は分断と疑念に塗り潰されている。


「……報告を楽しみにしている」


 ノヴァは再び呟き、執務室の灯りを落とした。

 暗闇の中、彼の脳裏には、花火に照らされたキララの笑顔。

 そしてその隣で小さく笑うピカルの姿が、消えずに残っていた。


「次の報告が、何をもたらすのか……見届けさせてもらおう」


 静かな決意を胸に、ノヴァは夜の闇へと視線を向けた。

 その瞳にはほんの僅かだが、まだ言葉にはできない、期待の光が宿っていた。

※星レベル8に達した際に発生した番外編ストーリーです


お読みくださりありがとうございます!

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