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Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 本編

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地球編・1 青き星に降り立って①

【序章 終わりの星、始まりの兄妹】の続きになります。


※挿絵はAIイラストを使用しています

 風が違う。


 澄み渡る青空と、遠くに伸びる水平線。

 見たことのない鳥たちが自由に羽ばたき、木々は陽の光を受けて柔らかく揺れていた。


 ピカルは、ゆっくりと地に足をつけた。


「‥‥‥重力、気圧、酸素濃度‥‥‥問題なし」


 手元の端末で簡易スキャンを終えると、彼は周囲を一望し、静かに目を細める。

 この惑星は、アルフィオスがまだ輝いていた頃をどこか思い出させる。


「‥‥‥本当に、よく似ている」


 すぐ隣で、キララが目を輝かせていた。


「うわぁ〜〜! 空がすっごく青いよお兄ちゃん! あっ、あれ見て! すごい! 本当に空飛ぶ生き物いるんだ!!」


挿絵(By みてみん)


 ぴょんぴょんと跳ねるように歩き回るキララ。

 手にした端末で写真を撮りまくっている。


「キララ、まずは周辺の安全確認を──」

「えへへ、わかってるって! でも、ちょっとだけ、ちょ〜っとだけ感動させて!」


 ピカルはため息をひとつ吐いたが、その顔にはどこか優しげな微笑みが浮かんでいた。


 こうして、ピカルとキララの地球での旅が、幕を開けた。


 ____________


 ほどなくして、二人は「ここに行け」と示された座標へと向かった。

 静かな草地に到着したが、周囲には誰の姿もない。


「この座標で合っているはずだが‥‥‥」


 ピカルが端末を確認する横で、キララがしゃがみ込んで何かを見つけた。


「お兄ちゃん見て! かわいい! もふもふしてる! これなぁに?」


 茶色と白の毛並み、小さな足、つぶらな瞳。

 愛らしい生き物が二人の足元を元気にくるくると回っている。


「これは犬という動物か‥‥‥」


 ピカルはじっくりと目の前の生き物を観察し始める。


「わんわんっ!」


 突然発した声に、キララはビックリしてのけぞる。


「も、もしかして地球の犬っていうのはこんなしゃべり方するの!?」 


「いや、そこまで調べてないが‥‥‥守冠をつけてみよう」


 不可思議そうな表情でピカルが守冠を装着し、静かに犬を見つめる。


『守冠』リアナス家に代々受け継がれる記録装置付きの冠の力が起動し、ピカルの視界にはこの星に関するあらゆるデータが流れ込んできた。

 気温、動植物の分布、文明レベル、そして目の前の動物に関する情報まで、瞬時に整理され脳内でリスト化されていく。


 冷静な表情のまま、ピカルは情報の洪水に集中し、一つひとつを丁寧に精査していった。


「種別、コーギー。地球原産‥‥‥」


 ピカルが冷静に読み上げたその瞬間、


「やあっ!! 待ってたよ!!」


 甲高い、けれどはっきりと意味を持った声が響いた。


挿絵(By みてみん)


「「!!!!???」」


 二人はほぼ同時にのけぞり、互いの顔を見合わせた。

 ピカルは、思わずデバイスを握る手に力が入り、キララは尻もちをついて後ずさる。

 キララは一瞬息を呑み、目をまん丸にしてピカルを振り返った。


「い、今のって‥‥‥この子が‥‥‥? ありえないよね? でも声したよね? ちゃんと、意味のある言葉だったよね?」

「確かに守冠を通して言語は成立していた。誤作動じゃない‥‥‥これは明らかに意思をもった発話‥‥‥」


 二人の声が小さく重なりながらも、動揺と興奮で頭の整理が追いつかない。

 明らかに、動揺の色が隠せない二人は、それぞれに戸惑いの表情を浮かべていた。

 ピカルは眉間にしわを寄せながらメガネを押し上げ、キララは目をまん丸にしたまま口をパクパクとさせている。

 どうにか落ち着こうとするものの、言葉がうまく出てこない。


 無理やり平静を装おうとする動きが、逆に驚きの大きさを物語っていた。


「ふふっ、ビックリした? ボクは『コーギーちゃん』! 宇宙ネットワーク『AURORA』所属のサポートエージェントだよ!」


「AURORA‥‥‥? ということは‥‥‥」


 聞き覚えのある名称にピカルは一瞬だけ目を伏せた。


 AURORAオーロラ

 それは、銀河中の文化・環境・文明のバランスを見守る中立組織。

 基本的には星々に干渉しない方針を持っているが、統治者からの正式な要請があった場合に限り、限定的な支援を行う。


 今回、アルフィオスの次期統治者ノヴァの依頼によって、彼らの地球での活動をサポートすべくエージェントが派遣されたのであった。


 ノヴァがこの手配をしてくれていたのか。


 あの冷徹な態度の裏で、こんな配慮をするとは思いもしなかった。

 驚きと、少しばかりの戸惑い。

 そしてどこか、心の奥に微かな安堵のような感情が生まれる。


 しかし同時に、彼は考える。

 これは単なる温情ではなく、任務遂行のための“最低限の支援”に過ぎないのではないか。


 ──成果を出せ、という無言の圧。


 予想外の一面に触れたことで、ほんのわずかにノヴァへの見方が揺らいだ。

 けれど、信頼とはまだ遠い。


「そう! この地球での活動を支える任務を任されたんだ♪」


 お尻をフリフリしながら愛嬌をふりまくコーギーちゃんに、キララは目を輝かせる。


「~~~~~かっわいい~~~♡♡  お兄ちゃん! 連れて帰りたい! ねえ!」


 キララはすっかり虜のようで、コーギーちゃんの頭を撫でまわしている。

 ピカルも手を伸ばしかけたが、ひとつ咳払いして姿勢を正した。


「‥‥‥で、コーギーちゃんさん?」


()()じゃなくて、()()()! ()()()()()()()って呼んで!」


 コーギーちゃんは元気いっぱいに尻尾を振りながら、つぶらな瞳をキラキラと輝かせてピカルを見上げた。

 その瞳には疑いのかけらもなく、まっすぐな期待と信頼がにじんでいる。

 ピカルはその視線にたじろぎ、思わず視線をそらしかけた。

 彼の冷静な仮面がわずかに揺らぎ、心の奥で「押しに弱い」という自覚がひょっこりと顔をのぞかせた。


「‥‥‥コーギーちゃん。地球でのサポート、よろしくお願いします」

「まっかせて! 君たちの任務は本部から聞いてるよ! ボクが、君たちの体験ミッションをばっちり支えるからね!」


 そう言ってコーギーちゃんはくるりと振り向き、草地の先をぴょんぴょんと跳ねるように歩き出した。


「さ、こっちに来て! 君たちが滞在する拠点を案内するよ!」


 キララがぴょんと立ち上がり、嬉しそうにそのあとを追う。

 ピカルも少し警戒を残しつつ、後をついていった。

最後までお読みくださりありがとうございます。


地球編1の②に続きます。

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