【豊穣の神様・キララ】
※挿絵はAIイラストを使用しています
「えっとね、この神様は……えーと……」
キララは手元のパンフレットをぐいっと近づけ、声に出して読み上げ始める。
「うか、うが……うがのみ……たま? うがのたまがみ……?」
「宇迦之御魂神だな」
ピカルの低く穏やかな声が、横からさらりと挟まった。
「日本神話においては、穀物、特に稲の神として信仰されていて、神名の“宇迦”は“食”に通じ、古代の生活と深く関わりが――」
「はいはいっ、長い長い!」
キララは手をぱたぱた振って兄の解説を遮る。
「あ!お兄ちゃん見て見て!じゃーんっ!」
キララは声を弾ませ、背後に視線を向けた。
視線の先には神社の境内に併設された“神様体験コーナー”。
和紙の灯籠がほのかに光り、木の香りが漂う空間には、祭壇を模したセットや神具、狐の置物が並んでいた。
『衣装試着できます』
と書かれた立て札と、カラフルな布がかけられたラックが目に入る。
「わたし、こういうのやってみたかったんだよね~!」
キララは袋から金色の布を取り出し、勢いよく羽織った。
布は光を受けて、ひらりと揺れるたびに黄金のきらめきを放つ。
そして楽しげな飾り紐を髪に絡めると、まるで即席の神様。
ピカルは立て札の説明をちらりと見て、小さくため息をついた。
「……なるほど。神様体験コーナー、ね。」
その言葉とは裏腹に、彼の視線はキララの笑顔に引き寄せられていた。
「見て見て!キララ、うかのみたま神様に就任しましたっ!」
「……就任?」
ピカルは目を瞬かせる。
肩で袖口から覗く金の布が揺れ、光を反射してキララの笑顔をいっそう明るくしていた。
おかしい。
でも、どこか似合ってる。
そう思った自分に、ピカルは小さく息をもらし、ふっと笑みをこぼす。
「意外と似合ってるよ。……神様らしく、なにか祈願でもしてみたら?」
「えへへ、じゃあ……」
キララは金色の布をそっと整え、胸の前で両手を合わせた。
まぶたを閉じ、頬が少し紅潮しているのが分かる。
「アルフィオスにたくさんの“たのしい”と“おいしい”が実りますように。
それでみんなが、にっこり笑えますように――って!」
ぱちん、と小さく手を打ちぱっと目を開いた。
その笑顔には、まるで小さな太陽みたいなあたたかさが宿っていた。
一瞬ピカルの胸に、故郷の未来がほんのり灯る。
「……悪くない祈りだ」
彼の声は、わずかにやわらかくなっていた。
参加者リクエスト:キララで日本神話の神様
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