【一閃にすべてを込めて】
※挿絵はAIイラストを使用しています
「なるほど……。構えは“鞘を引き、刀を押す”動きと連動して――」
書籍と守冠で事前に見た抜刀術の動作を、頭の中でなぞりながらピカルは道場の砂敷きに立った。
足を肩幅に開き、両膝を軽く曲げ、腰を落とす。
動きに理はある。
知っている。
だが。
「……実際にやると、重心がこんなに難しいとは……」
肩に力が入る。
足裏の踏みしめが浅くなる。
次の瞬間、講師役の剣士が声を飛ばした。
「構え直せ。構図は正しいが、心が浮いているぞ」
「—はい!」
ピカルは軽く息を吸い直し、再び腰を据える。
風が止む。
「……この“静寂”の中にこそ、動くべき一瞬がある」
一拍の静けさのあと。
ピカルは、刀に手をかけ、思い切って一閃した。
シュッ、と空を裂く音が広がる。
斬ったのは空気だけ。
だが、彼の顔には確かな達成感があった。
「ふぅ……なるほど。これは、思っていたより遥かに複雑で、そして……楽しい」
体を通して理解するということの、深さと面白さ。
理論だけでは決して届かない領域が、そこにはあった。
道場の隅ではキララがその様子を眺めていた。
稽古を終えて戻ってきたピカルが、満面の笑みで語りかける。
「キララ、今の見た? 抜刀はね、ただ速さだけじゃない。“心”と“重心”と“静”のバランスがあってこそ――」
「うんうん。お兄ちゃん、すっごく楽しそうだったよー!」
にっこりと笑って返すキララに、ピカルは少しだけ口をつぐんだ。
「……話の深みが、全然伝わっていない……」
だがそれも、悪くはない。
心の中で何かがスッキリと晴れ渡った感覚。
そして彼の心には、確かに“何か”が刻まれていたのだから。
「やはり、体験は実際にやることに意味がある」
参加者リクエスト:ピカルにサムライ衣装・剣術体験
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