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Project Alpheos(プロジェクト・アルフィオス) ~あなたのリクエストで星の未来を取り戻せ~  作者: だしのもと
Project Alpheos 本編

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16/91

地球編・4 届く形⑦

地球編4・届く形⑥の続きになります。

※挿絵はAIイラストを使用しています

 翌朝。


 キララは、ゆっくりと目を覚ました。

 昨夜は、久しぶりにぐっすり眠れたせいか、頭がスッキリしている。



「おはよう、キララ」

「おはよう、お兄ちゃん」


 朝ごはんを食べながら、キララはふと思い出した。


「そういえば‥‥‥まだ、やることが残ってた」

「え?」


 キララは、立ち上がってクローゼットを開けた。

 そこには、まだ未使用の服がいくつか残っていた。

 この前に買ったタグのついたままのニット。


「これ、持って行く」

「リサイクルセンターに?」

「うん」


 キララは、服を丁寧にバッグに入れた。


「私、この服たちをちゃんと手放したい」

「‥‥‥そうか」


 ピカルは、静かに頷いた。


「でも、後悔しないか? せっかく買ったのに」

「後悔しない」


挿絵(By みてみん)


 キララは、はっきりと答えた。


「私‥‥‥今まで気づかなかったんだ。リアナス領の、しかも領主の子供っていう立場にいたから」


 キララは、クローゼットの中を見つめた。


「他の人達よりは簡単に『足りなくなったら補充できる』。そういう環境に慣れすぎてて、『持ちすぎること』の意味が分からなかった」


 キララの声が、少し震えた。


「そして地球(ここ)に来て、着ない服を何十着も持ってた。買ったことすら忘れてた服を。それって‥‥‥すごく、おかしいことだったんだ」

「キララ‥‥‥」

「恵まれてたから、見えなかった。守られてたから、気づけなかった」


 キララは、バッグを抱えた。


「アルフィオスでも、きっとこれからも資源不足で、人が移動するかもしれない。みんな、荷物を減らさなきゃいけなくなる。大事なものを選ばなきゃいけなくなる」

「‥‥‥」

「私も、見極めておきたいの。『何が大切か』を」


 キララは、窓の外を見た。


「いつか、私も同じ立場になるかもしれない。そのとき、『何を持つか』『何を手放すか』を、ちゃんと判断できるように」


 ピカルは、妹の横顔を見つめた。

 キララは、本当に成長した。


「重くなったもの」を手放すことで、「本当に必要なもの」が見えてくる。 

 それは、服だけじゃない。

 生き方も、考え方も、全部。


「じゃあ、行こうか」

「うん!」


 キララは、元気よく頷いた。

 二人は、コーギーちゃんと一緒に拠点を出た。

 青い空、そして冷たい風。

 でも、心は軽かった。


「キララ。お前、すごいな」

「え? 何が?」

「いや‥‥‥なんでもない」


 ピカルは、少し照れたように前を向いた。

 でも、心の中では思っていた。

 妹は、もう一人で歩いていける。

 そして——その背中を、自分も追いかけていきたい。


 リサイクルセンターで、キララは服を佐藤さんに手渡した。


「これ、お願いします」

「ありがとうございます! また来てくれたんですね」

「はい。今度は、ちゃんと『届く形』で」


 キララは、にっこりと笑った。

 佐藤さんは、少し驚いたような顔をして、それから優しく微笑んだ。


「キララさん、またいつでも手伝いに来てくださいね」

「はい! 絶対に!」


 キララは、元気よく返事をした。


 センターを出ると、ピカルが待っていた。


「終わった?」

「うん」


 キララは、空のバッグを見せた。


「ほら見て! 全部、手放した」

「そうか」

「軽くなったよ、すごく」


 キララは、バッグを振ってみせた。

 そして——ふと、真面目な顔になった。


「お兄ちゃん。私、これからもっと学びたい」

「何を?」

「運用のこと。人が動くときに、何が必要で、何が大事なのか」


 キララは、拳を握った。


「アルフィオスに、ちゃんと役に立てるように」

「‥‥‥うん」


 ピカルは、キララの頭を撫でた。


「一緒に学ぼう」

「うん!」


 二人は、拠点へと歩き始めた。

 コーギーちゃんが、嬉しそうに尻尾を振りながら、先を歩く。


「なんだか、お父さん達に連絡したくなっちゃった!」

「たまには連絡してあげたら、喜ぶよ」

「――だね!」


 キララの中で、何かが完全に変わっていた。


『欲しい・楽しい』だけで選んでいた過去。

 それを手放し、『本当に必要なもの』を見極める力。

 そして——『届く形』を作る責任。


 恵まれた環境にいたからこそ、見えなかったもの。

 守られていたからこそ、気づけなかったこと。


 この地球での体験が、キララにそれを教えた。

 そして、その気づきは——やがて、星の未来を変える力になる。

 それは、まだキララ自身も気づいていない。

 でも、確かに『種』は、蒔かれた。

 リメン・ゲート――アルデンの故郷で。


 そこから、全てが始まる。


 ______________


 ―――アルフィオス リメン・ゲート―――


 リアナス領の端にある、小さな境界集落。

 かつては静かな村だったこの地は、今——移民であふれていた。


 資源の枯渇により、故郷を失った人々。

 行き場を失い、最後の希望としてこの地に流れ着いた人々。

 狭い路地には、仮設のテントが並ぶ。

 食料配布の列は、毎日長くなる。

 水は不足し、衛生状態は悪化している。


 そして——


「また割り込みか!」

「子どもがいるんだから、優先させろ!」

「ふざけるな! 俺たちだって必死なんだ!」


 小競り合いが、あちこちで起きていた。

 その光景を、一人の少女が見つめていた。

 白いボブカットの髪に、澄んだ青い目。

 17歳くらいに見える、華奢な体つき。


 彼女もまた——移民だった。


 資源不足で故郷を失い、わずかな荷物だけを持って、この地に辿り着いた。

 何も持たない者だけが滅んでいく。

 弱い者だけが、置き去りにされる。

 そんな日常に、彼女は苛立ちを感じていた。


「‥‥‥上が変わらないなら」


 彼女は、小さく呟いた。


「私たちが変わるしかない」


 彼女は、中央管理棟の掲示板に貼られた告知を思い出した。


『再生可能エリア実証プロジェクト 人員募集

 リメン・ゲート地区にて、再生可能エリアの実証実験を開始します。

 運用人員を募集します。』


 多くの人は、その告知を見ても、立ち去った。

 危ない。面倒だ。

 どうせ失敗する。

 でも——彼女は違った。


「これしかない」


挿絵(By みてみん)


 彼女は、拳を握った。

 自分には、何もなかった。

 財産も、地位も、力も。

 でも——一つだけ、持っているものがあった。


 村に残る歌。

 故郷で歌い継がれてきた、古い歌。

 資源が豊かだった頃の記憶を歌った、希望の歌。

 その歌を完全に継承できるのは、今や彼女だけだった。


「歌だけじゃ、何も変わらない」


 彼女は、自分に言い聞かせた。


「でも、歌と‥‥‥行動があれば」


 彼女は、中央管理棟へと歩き始めた。

 その足取りは、軽かった。

 でも、その一歩一歩には確かな意志があった。


 面接室の前。

 彼女は、深呼吸をした。


「‥‥‥大丈夫。私にもできる」


 彼女は、ドアをノックした。


「失礼します」


 扉が開き、面接官が彼女を見た。


「応募ですか?」

「はい」


 彼女は、はっきりと答えた。


「リメン・ゲートの再生可能エリア。私も、力になりたいです」

「‥‥‥名前は?」

「――」


 彼女は、自分の名を告げた。


 その名は、やがてリメン・ゲートで、多くの人に知られることになる。

 拠点運用の実装者であり、希望の歌を歌う者。

 そして『希望を繋ぐ者』として。


 もう一つの物語が今、始まろうとしていた。

 小さな種が、芽吹き始める。

 未来を変える——小さくても確かな、一歩として。

※ここから分岐として、ピカルとキララの学びを故郷アルフィオスで、どう動かし変えていくのかを語った別の物語【星の大樹】の投稿を始めます。

不定期になりますが、今現在のアルフィオスの様子がお伝えできたらと思います!


お読みくださりありがとうございます!

ブックマーク、評価、コメントを頂けると大変嬉しいです!!


リクエスト企画の方は不定期で参加者様を募集してます。

Xで最新情報を投稿してますので、よかったらご覧ください。


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