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いつか神殺しのアマデウス  作者: 焼き29GP
第一部 王国の動乱
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一章〜非望〜 千八十二話 企みを感じる中で

 深き因縁(いんねん)──そう言われ、真っ先にアレルが思い浮かべるのは妖精との(つな)がりで、オルフェから聞いていた千年前の事になる。

 しかし、それにしたって自身には直接的には関係がない事柄ではあるし、オルフェだって何があったのかまでは話していない。だから、本来ならば知らないくせにと(ののし)られようと気になる(はず)はないのだが、(みょう)な引っ掛かりを覚える所にアレルは気持ち悪さを感じる。

 だが、それ以外で考えると『荒ぶる(たましい)』が口にしていた信奉者(しんぽうしゃ)って言葉の(ほう)因縁(いんねん)めいて聞こえてくる。それも、目の前にいる幽鬼君主(ファントムドミヌス)がその信奉者(しんぽうしゃ)傀儡(かいらい)だと言うのだから、その信奉者(しんぽうしゃ)とは一体(いったい)どんな存在なんだとアレルは想像するのも怖くなる。


 ただ、今は目の前にいる幽鬼君主(ファントムドミヌス)を倒す事が先決で、何よりも発せられた言葉自体がこちらの注意を散漫(さんまん)にさせる意図の可能性もある。そう考えるアレルは、(みょう)な疑問は忘れて戦いに意識を集中させる。

 そうして、改めて見ると幽鬼君主(ファントムドミヌス)変貌(へんぼう)は、あくまで真の姿を現しただけなのか、それとも(いく)つかある変身の内の一つなのかが判らない。


「······まさかとは思うけど、どこぞの悪の帝王様みたいに変身をあと二回残してるなんて言うなよな」


 そんな冗談を口にして、アレルは考え過ぎになりがちな自身の思考を一旦(いったん)落ち着かせる。何なら、その冗談で幽鬼君主(ファントムドミヌス)が再度言葉を口にするかもと期待もしたが、返事の代わりに返ってきたのは三本の腕から連続して(はな)たれる火球だった。


「チッ──!」


 言葉が通じるなら、会話で言葉(たく)みにコンラート達が人々を避難させる時間を(かせ)ごうとしたアレルだったが、その(たくら)みは(はな)たれた火球によって打ち(くだ)かれる。

 (はな)たれた三つの火球は、それぞれが(はな)つ間をズラされており、その速度もそれまでのものより速くなっていた。それでも、風詠(かぜよみ)により軌道(きどう)は読み切れるのだが、大きく()けると幽鬼君主(ファントムドミヌス)が三本の腕それぞれに構えた次弾で狙われてしまう。それが判っているからこそ、アレルは()えて(みずか)ら火球へ突っ込んでいく。


 如何(いか)に速度が増そうと、火球には追尾性も無ければ湾曲(わんきょく)する事もない。そうであるなら、下手(へた)に大きく()けるよりも紙一重(かみひとえ)(かわ)しつつ間合いを詰める選択をする。

 その(ほう)が、余程(よほど)魔法使い系の幽鬼君主(ファントムドミヌス)には脅威(きょうい)に感じられるだろうとアレルはそれを実行する。一発目、二発目と()けるも流石(さすが)に三発目は()け切れずに、アレルはそれを騎士剣を振るって斬り()く。しかし、奇妙(きみょう)な事に幽鬼君主(ファントムドミヌス)に逃げる素振りがなく、アレルが間合いを詰めるのもお構いなしに追撃の火球を(はな)ってくる。

 そうなると、逆に至近距離で火球を三つも(はな)たれたアレルの(ほう)が追い詰められてしまう。


「クッ──!?」


 ドンッ、ドンッ、ドンッと、咄嗟(とっさ)に交差させた前腕の籠手(こて)から続けて重い衝撃が伝わる。一応、念には念を入れ籠手(こて)(ほう)にも魔力を(まと)わせていたが、受けてみて威力(いりょく)も上がっていると判った火球をそのまま受け続けるのは不味(まず)いと、アレルは横に転がる事で更なる追撃を防ごうと考える。

 ただ、幽鬼君主(ファントムドミヌス)もそう簡単な相手ではなく、アレルが転がった先にも一発だけ火球を間に合わせてくる。それでも、一発だけならとアレルも立ち上がるのと同時に迫る火球を騎士剣で斬り()き、そのままの勢いで幽鬼君主(ファントムドミヌス)へ斬撃を(はな)つ。


「まずは一つ!」


 実体化させてなかったからなのか、意外な程に容易(たやす)く腕の一本を斬り落とせた事に違和感を覚えながらも、アレルは残る背中側から肩越しに()えてきた二本の腕に意識を集中させる。

 その瞬間、上から()ち下ろすみたいにしてアレルへ二発の火球が(はな)たれる。それへ、即座に反応したアレルは、後方へ飛び退()く事で火球を()けるも追撃が難しくなってしまう。ただ、腕を一本斬り落とせた事で一度に(はな)てる火球の数も減ったので、今までよりも間合いを詰めやすくはなっている。

 更に言えば、それで通常の肩から()えている腕は二本とも失われた為に、背中側から肩越しに生える二本の腕では実体化させて正面からの攻撃を防御するには位置的に少し距離が出来る。その(すき)を突けば攻撃の機会はいくらでもあり、再びアレルにとってほんの僅かに戦況が優勢に(かたむ)く。


「······」


 やはり、何かがおかしい。


 アレルは、再び戦況が自身へ(かたむ)いた事に対して、それが幽鬼君主(ファントムドミヌス)側に何かしらの(たくら)みがある事を確信する。

 それというのも、確かに『荒ぶる(たましい)』の置き土産(みやげ)のお陰で魔力はいつも以上に保有出来ている。それでも、戦闘力自体には一切の変化なんて起きてなどいない。それにも関わらず、明らかに戦闘力を向上させた幽鬼君主(ファントムドミヌス)が自身に(おく)れを取っているのがおかしい。

 つまり、幽鬼君主(ファントムドミヌス)が意図的にそうしているという事になり、アレルはその目的がどこにあるのかを探ろうと考える。


 だが、その意図を悟られまいと幽鬼君主(ファントムドミヌス)も残る二本の腕で再度アレルへ火球を(はな)ってくる。

 その火球は、先程とは異なり威力(いりょく)ではなく速度を重視しているみたいで連射性が増している。ただ、(はな)つ位置が所謂(いわゆる)ショルダーキャノンの位置と同じ為に、どんな()け方をしても最終的な到達点は地面なので流れ弾による被害を気にする必要がない。

 そう判断したアレルは、身体強化の魔力を循環させ膨張魔力を()めつつ、幽鬼君主(ファントムドミヌス)の周囲を回る様にして火球を回避していく。走る速度が一定にならない様に、速度に緩急(かんきゅう)をつけながら連射される火球を()けていく。


「······ハッ」


 何か(たくら)みがあるくせに、あわよくば火球で殺す事も狙ってくる辺り性悪(しょうわる)だなとアレルは口元に笑みを浮かべる。ただ、そんなのは今更かと思い直したアレルは、連射と狙いを定める際のほんの僅かばかり生じる(すき)を狙って膨張魔力を解放する。

 連射とはいえ、単発であるが故に次弾の照準(しょうじゅん)合わせに(すき)が出来る。そこを突いて、アレルは変則強化(トランスブースト)で一気に幽鬼君主(ファントムドミヌス)との間合いを詰める。


「何を(たくら)んでいたか知らねえが、これで終わりだ!」


 そして、アレルは自身の疑念(ぎねん)を振り払うみたいに宣言すると、断ち切る事を意識した斬撃で幽鬼君主(ファントムドミヌス)の体を斜めに両断する。



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