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12/22

act,10_友人役Aの日常が異状

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/お気に入り500超えました。いつもありがとうございます

 

 魔王様の説教が終わり、さよなら教科書ようこそ弁当の、お昼ご飯の時間である。

 いつものように、一気にいなくなる我がクラスメイト一同。今日は中庭に行こうと紅君を誘う。また屋上に行って、金坂がいたら嫌だ。同じクラスだから顔は毎日見えるが、必要以上に関わりたくないものだ。これもフラグ回避のためでもあるが、性格が嫌いだし、何よりあの能力があるから。


 金坂満のヤンデレ型は、追憶系殺人ルートだ。

 自分に振り向いてくれないヒロインを衝動的に殺し、亡骸を部屋に飾る。その後告白してきた女をヒロインの身代わりにする、他人を巻き込むヤンデレ型。

 友人役であり椎名楓を殺す理由もないし、ヤンデレ型も僕に害はない。だけど心を読む厄介な力があるから用心しなければならない。正直に言うと超めんどくせえ。



「ああ、生ぬるい」

「言うな」



 屋上に出ると風が体を包む。本日二度目の屋上は、腐女子トークができないためか、少し寂しく思えた。別に紅くんといるのが楽しくないってわけじゃないけど、紅くんは(カップルリングの)対象だからなあ。食事している目の前で、自分が男とラブっているのを幼馴染の口から聞きたくないだろう。勿論幼馴染の口からじゃなくても。


 今は六月。期末テストが迫ってくる嫌な時期である。運動会などのイベントもまだ先だし、ちょっと学校が暇。暇だから休校にしてほしい。

 え、べべべ別に死亡フラグ回避のためとかじゃないし、勘違いしないでよね、ばあか。

 ――ツンデレにただ失敗しただけだね、これじゃあ。僕はツンデレわんこの紅くんの見習うべきだと思う。



「ところで紅くん」

「ん?」

「その弁当を作っていると言う使用人さん……雪路(ゆきじ)さん? とは仲良くしているかい?」

「……してるんじゃねえ?」



 ふむふむ。素直に仲良くしていると言えないのは普段ボッチ気味だからかな。自信はないけど、仲良くしていると思いたくてちょっと恥ずかしいけどまあそうなんじゃね的な今の紅くん、天使以外に何と言えよう。ツンデレを司る女神か。女神じゃないや。

 まあ今のところまだ主従っぽいけど、その内雪路さんが理性を爆発されることだろう。



「ああ、そういや楓」

「どーした天使くん」

「天使……?」

「気にするな」



 小首を傾げる紅くん萌え。

 だが次の言葉は萌えとはほど遠い、あまりにも酷い爆弾であった。



「俺、明日から暫く学校休むから」



ズザザザザ――――がちっ

 ああ、神よ私を見捨てたもうか。と嘘泣きで紅くんを困らそうと、顔を伏せながら後退すると、後ろを見ていなかったたけフェンスに頭をうってしまった。痛いよお。

 それにしても、ああ、なんということか。今までは紅くんが傍にいたから、紅くんを理由に攻略対象に会った時、現実逃避が出来たのに。いざとなれば紅くんを置いて行けば逃れられるよ作戦も実行できないとは!



「言いたいことは顔に出てるから分かる。最近何でかお前に構うようになったからな。特に双子はしつこい」

「ならば何故天使よ!」

「天使……?」

「あ、スルーして」

「分かった。――三時間目が終わった後、電話が来てな。従兄弟の親が死んだらしい。面識が少ないが次期当主としては葬式に出ねえといけねえんだよ」



 成程。親戚の葬式には出ないといけないか。それにしても、面識が少ないといくら紅くんでも、そこまで悲しんだりはしないようだねえ。一番ヤンデレになりにくいと言われているキャラでも、根は薄情か。まあ実際一度か二度会っただけなんだろうけど。



「なるべく早く帰ってこられるようにするけど、なんか総会とか仕事とかも溜まってるから、いつになるか分からねえんだ。わりいな、楓」

「いやいや、元々は僕の都合に合わせてくれているんだから、全然構わないよ。ただ癒しがないのは残念だね」

「癒し……俺があ?」

「ハハッ、紅くんは自分の性格に自覚がないからね」



 ああ、楽しい。これが暫くなくなると思うと、死亡フラグ云々の前にただ寂しく感じるね。明日から(違う家だけど)隣の部屋には誰もいなくなるのかな。夜遅くとかならいるかな。もしかしたらその親戚の家に泊まるかもしれない。



「紅くんがいない間はお姉ちゃんに構い倒さなければ」

「倒すのか」

「これ以上イメチェンが強化されないようにね」

「は?」

「こっちの話さ」



 初日の前夜は酷かった。カツラを茶髪にしてみないか、それならリボンの色も変えよう、笑顔の見せ方はもうちょっと右を向いて、男にこう言われたらこう返しなさい、などなど。経験豊富なお姉さま椛には、頭は上がるが顔が上がらない。上げたならば顔を好きなように変えられる。チークとか二度としたくないと思うところ、どうやら僕の頭の中の辞書にはジョシリョクと言う言葉はないようだ。



「まあ、ハーレム作って帰ってきたなら僕は死んで喜ぶから」

「死ぬなよ!」

「冗談だよ」

「親戚が死んだばっかりなんだぞ。冗談でもそう言うな。帰りも気をつけろよ」

「うんうん。ていうか、結構心配性なんだねえ」

「は? そうじゃなくて、――あれ、言ってなかったか?」



 え、何が?

 やめてよ紅くん。こういった前フリはね、死亡フラグに繋がること多いんだから。



「最近通り魔がこっちに来たらしい。まだ捕まってないらしい」



 地味にフラグ来たなあ。ゲームでは通り魔とかなかったけど、まあそれは現実とゲームの壁と事情ということで。

 そんなことを考えていると、紅くんの携帯が鳴った。画面を見て操作しているところ、電話ではなくメールのようだ。そしてメールに何か凄いことが書かれていたのか、驚いたように目を見張る。



「紅くん? メールがどうかしたのかな」

「あ、い、いや、なんでもない」



 何でもなくねえ。そのキョドりかたでああそう、って納得するのはゲームの世界だけだ。……あ、ゲームの世界じゃん、ここ。まあ、何を書かれていようと、別に僕に関係することではないだろう。普通に答えないで誤魔化そうとしているとなると、家か能力関係のことだろう。友人役Aが攻略対象の中に入ってはいけない。力を知るのは、いくら幼馴染といえど僕はダメで、あの憎たらしいヒロインだけでいいのだ。――こういう設定だからね。

 いくらあんな馬鹿で愚かで無知でイラッとくる子でも、いくらネガティブな自分に酔っていて軽い人間不信でも、根は優しい子で何より美少女だ。紅くんを苦しませるようなことがあれば迷いなくファンクラブに加勢して潰すけど、そうじゃないのなら僕も幸せを願うということだ。

 そういえば今のヒロインの溺愛フラグはどうなっているのだろう。後で見ておかなければ。……気は進まないけど、僕の死亡フラグも。



「ところで楓――」



 ふいに紅くんは、世間話をするような軽さを装い、僕に問う。



「――超能力ってどう思う?」



 一瞬固まった。

 が、そんな様子はまったく外に出さず、逆に問いかける。



「超能力? 紅くん、そういうの興味あるんだ?」

「映画見て……」

「成程ね。――超能力かあ」



 一般的な回答。普通の態度。どれが正解かは分からないけれど。取り敢えず。



「カッコいいよね。僕も超能力使えたらなあ」

「だ、よなあ。じゃあ……もし使えるとしたら、何の力がいい?」



 む、結構引っ張ってくるな。もしや疑われているのは本当だったのか。そういえば金坂と話した後、紅くんの反応を確かめるのを忘れたな。

 でもなんて答えようか? 軽々しくは答えられない。

 もし攻略対象の持つ力を言えば、やっぱり知ってるんじゃ……、みたいなことを思われる。だからといって普通にほしい能力は生徒会が持っている。でも珍しすぎる力を言っても、わざとさけて持ってない力を言っているんじゃないか、と疑われる。どう答えろと言うんだよ。

 ………………シンプルだけど、これが、妥当、か。



「――使えるなら、なんでもいいかなあ」



 そう言うと、紅くんはホッと息を吐く。



「そうかそうか。俺もなんでもいいや」



 君、持ってるもんね。だから欲がないや。僕は疑っていられなければ、なんでもいいなんて言わないで、最強な力とか言ってしまうよ。風間白蓮の言霊とか便利だし。

 食べ終わった弁当を片付けて、話を終わり教室に戻ろうとすると、紅くんがいや、と言った。



「ちょっと先言っててくれ」

「え?」

「い、いろいろあるから……」



 また家か能力関係かな?



「そう? ――じゃあ、弁当箱教室に戻しておいてやろうではないか、フハハハハ」

「誰だよ。まあ、それならよろしく」



 弁当箱を受け取る。



「うむ、苦しゅうないちこう寄れ」

「使いかた違えぞ」

「気にするでないぞ」

「そうか……」


 ふざけていると、ツッコむのを諦めたのか何も言わなくなった。

 紅くんの背を向けて屋上を出る。

 ――まったく、油断も隙もない。メールで指示してくるなんて。


 途中、紅くんがメールで驚いたのは、探れとの指示が出たのだろう。あの反応で考えないわけがない。僕がしないのは、紅くんへの能力についての探り。疑って考えることぐらい自由だ。だって、いろいろ不自然だしね。メールを見てから力のこと聞いてきたし。今、まだ屋上へのドアの前だけど。紅くんしかいない屋上から話し声聞こえるしね。きっと、僕のことを探っていたのだろう。僕が瞬時に分かってなければ、危なかったよまったく。それでも、紅くんが一番疑われているのだろう。なんらかの形で、僕が力のことを知っているかもしれないと生徒会は思っている。ならば、疑われるのは仲のいい紅くん。御免よ。でも、これで疑いは晴れたはず。



「でも、これでもうボロを出さなければ、ばれることはないかな」

 金坂とも、もう話す機会はないだろうし。



 教室に戻っても、生徒はほとんどいなかった。昼休みの時間は他のクラスに言っていることが多い。廊下で話している生徒もいれば、トイレで溜まりこんでいる女子もいるのだろう。

 それにしてもどうしようか。今まで紅くんが昼休みにいないなんてことはなかった。紅くんは友達が少ないし、昼休みにしか(ここ)では普通に話せない。生徒会の仕事があるのも、ずっと放課後だったから。友達が他にいないわけでもないが、もう皆クラスにいない。……何をしようか。



「本を持ってくればよかったな」

 薄いやつとか。ベーコンレタス的なアレを。



 仕方がない、優等生の集まる一組らしく、予習でもして時間が経つのを待つか。

 教科書を出し、読みふける――前に、声をかけられた。



「勉強? 真面目なんだね。流石一組にいるだけある」



 本人は意識していないんだろう。本当は穏やかだ。でも、本人は知らない。その声がどれだけ僕にとっては酷く恐ろしく、そして酷く懐かしいのだと。

 顔を上げると、目の入る空色の目。ウェーブのかかった黒髪が爽やかさを醸し出す。でも、その性格は無意識な冷酷さがあることを、知っている。


 ――空閑聖夜。生徒副会長。あの魔王こと生徒会最強の風間白蓮が、唯一尊敬する人。


 能力は瞬間移動と透視。金坂の心を読む力ほどではないが、透視も心情をおおよそ読める能力だ。どうして、こう面倒なキャラばかり出てくるのだろう。

 ヤンデレ型は強姦系服従ルート。攻略対象の中で唯一艶めかしい表現があった人物。ルート名そのままで、強姦でヒロインを壊そうとする危険人物。

 なんで友人役である僕に害のない人が、能力的に害のある人ばかりなのかな。嫌がらせか製作者よ。そんなはずはないんだけどね。疑いたくもなるよ。おかげで、攻略対象は美形だから腐的な観察をさせてもらおうと思ったりした時もあったのに、迂闊に近寄れないじゃないか。


 おおっと、紅くんがいないのに現実逃避ができたのは嬉しいけど、返事しないとね。できるだけ一般回答。

 ――普通の女子ならどうする? 頬を染めてソンナコトナイヨー?



「……まさか空閑くんに言われるとはね。ありがとう。それだけが取り柄だからね」



 にこり。どうだ、(微)美少女(多分期間限定)の笑顔は。可愛いだろうアッハッハッ。



「それでも凄いじゃないか。一組にいるってだけで凄いよ。僕は二組だからね」



 一組は、入学テストの時に全教科をほとんど満点取らなければいけないため、人数が少ない。普通に少し頭いいと言えるぐらいなのが、二組だ。ところでアナタは生徒の手本になるはずの生徒会ですよね。風間白蓮もそうだったけど、どうして他クラスに入ってきているのかな。駄目でしょ。



「僕は偶然入れただけだよ。いつもは集中力ないから」

「そうなの? ――それよりさ」



 それよりなのか。



「ちょっと、生徒会室に来てくれないかな……?」



 ……。

 …………。

 ……副会長様よ。あまり三点リーザーを使わせるでないよ。

 それにしてもピンチだ。そんなこと言われるなんて、予想できない。いや、双子にああ言われた時点で用心するべきだった。だけど、どうしよう。なんて言って断ろう。



「どどどどうしてかな?」



 ちょっと強引だけど、これで混乱半分、嬉しさ半分の一般女子の反応だ。

 副会長様は笑いました。その言葉は僕にとって最悪なのだけれども、花が舞うような無邪気な笑顔で。地でやっているのだろうか。あと花の演出は無自覚なのだろうか。いや、逆に地でやっていたらコワイにもほどがある。超能力のことは言わないで、笑顔で生徒会室に誘うなんて、怖いよ本当。



「うーん。……ただ話したいっていうだけなんだけど」

「ここじゃ駄目なのかな?」

「駄目ってわけじゃないけど、シアンとシエンも話したいって言ってたし……」

「それって、度会くんのこと?」

「うん、そうだよ」



 双子め! あの悪魔二人め! なんてことだ!

 ――いや、これは逆にチャンスか?

 生徒会は僕を疑っている。それを早く解決したい。僕は生徒会を避けたい。そして能力のことなんて知らないよ、と思わせたい。

 ならば、これはもう行って無知アピールをして終わらせようじゃないか。それで騙されてくれなら、もう僕には付きまとわないはずだ。



「なら、行くよ」

「本当に? よかった、行ってくれないのかと思ったよ……」



 そのキラキラな笑顔をやめてほしい。向けるなら僕ではなくツンデレな紅くんか、それか主従愛の風間にやってくれ。

 教科書を直して席を立つ。教室を出た空閑聖夜の後を着いていく。

 相手は超能力者。しかも心理戦に得意な心をある程度読める。もはや心理どころじゃないね。



 それでも、僕は死にたくない。死亡フラグのためならなんでもやろうじゃないか。



テストがあるので一週間ぐらい更新できません

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