最強剣士の弟子、旅に出る。
「「おはようございます・・・」」
ボロボロの服を着替え、マナとカルラは寝室からのそーっと出てきた。
「先日までポーションで必死に回復していたのがバカバカしいですね」
マナがぼやいた。
「仕方ないわよ、世界樹の葉っぱはそれほど貴重なのよ。師匠の枝は葉っぱがもっさりついてるだけで、あれはもう国宝級よ」
カルラがハジメの枝を見ながらお茶を飲んだ。台所の奥からハジメが顔を出し
「ああ、起きたのだね。夕食用意してあるからみんなで食べよう」
そう言っておにぎりとみそ汁、ドラゴンテールのステーキを並べた。
「む・・・・・?これは懐かしいが・・こっちは・・・」
ルゥが興味深げに料理を眺めた
「ルゥさんは初めてですもんね、これは私の故郷の料理なんですよ」
マナが手を合わせ、みそ汁を啜る。
「これは以前師匠が命からがら切ったという、伝説のドラゴンの尻尾・・・。えーと、確か・・・」
「サンダードラゴン」
ハジメがおにぎりを食べながらそう答えた。
「ド・・・ドラゴン・・・・?」
ルゥが何気ないその会話を聞きながら絶句している。
「私は良くわからないんですよね~ドラゴンっていうものが何か。おいしいことは確かですね」
マナはすでに食事を平らげており、お湯を沸かしに台所に立った。
「「キュイッ」」
ドラゴン達が同時に鳴いた
「成る程・・・・確かに旨いな。ほう・・そうなのか?なるほどなるほど」
ルゥがドラゴン達と会話を繰り広げていた。
「こういう時、魔族がうらやましく思うよ・・・世界は広いもんだね。俺も話ができたらな・・・」
ハジメがそれを見てうんうんと頷いていた。
「・・・・・師匠も旅に出てみては?」
カルラが箸を止め、ハジメの方を向いてそう言った。ハジメは無言でカルラを見つめる。
「マナに会ってから、師匠・・・心ここにあらずといった様子ですよ。勇者一行では楽しみはあまりなかったと聞きます。我々もある程度の力を付けましたし、ルゥも同行するとのこと。心配は無用ですよ」
カルラがハジメを見つめ、そう話す。横ではいつの間にか食事を食べたルゥとドラゴン達が床でじゃれつきながら「成る程、成る程」と呟いている。
「・・・そうだね。俺は世界樹の秘密を知りたいと思った。カルラがそういうなら、行ってみようかな」
「良いと思うが、その魔剣は置いて行けよ。命を削らなくとも、お前なら・・・今の世界なら十分やっていけるだろう?」
「「キュイッ」」
ルゥがいつの間にかドラゴン達を両肩に乗せハジメにそう言った。
「師匠、私もそれがいいと思いますよ。人生は一度切り、好きなことをしないとだめです」
マナがお茶を入れ、並べた。
「いいじゃないですか、私は友達を探しに、カルラはドラゴンを探しに、師匠は世界樹を探しに、ルゥさんは・・・」
「私は魔法の探求と化け物討伐だ。魔法は何でもいい、知ることに意義があるからな」
ルゥは胸を張って空中に小さな花火を飛ばした。
「へぇ・・・そういうこともできるのね。ではみんな目的があるということね。それが旅の始まりというものだと思うわ」
カルラがお茶を飲みながらそう呟く。
「そうだね・・・・明日まで考えてみるよ。さぁ今日はもう遅くなった。先に寝るよ」
ハジメはそう言うと、日記を持ち部屋に入った。
「キュイキュイ」
アイスちゃんがルゥに向けて鳴く
「ふむふむ・・・「筋肉だるまにもナイーブな一面があるのだな」だそうだ」
「「・・・・・・」」
アイスちゃんの辛辣な言葉に弟子たちは言葉を失った。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
「おはよう、三人とも、もう出るのかい?」
ハジメが起きたときには三人は準備万端といったところであった。
「はい、あまり遅くなっても出たくなるばかりだと思いますし・・・」
マナが少ししょぼーんとした顔でそう答えた。
「とりあえず、私たちは東の方に向かっていきたいと思っています。というのも、マナがどうしてもどうしても欲しいという武器があると言うので」
カルラが大きな荷物を背負いながら、革靴を履き始めた。
「成る程、前も言っていた、あれだね。俺の注文している魔剣も少し難航している様だから・・・そうだ、この家をみんなの拠点にしよう。幸い世界を回る中心と考えても不便ではないだろうし。俺も時折帰るから手紙のやり取りをしよう」
「キュィッ」
ドラゴンちゃんがそう鳴いた。
「ふむふむ、ハジメ、俺も大きくなってお前と戦える日を待ち望んでいるぞ。魔剣は使うな。だそうだ」
「「「えぇ!?」」」
「ど、ドラゴンちゃんから謎の宣戦布告ですね・・・」
マナは困惑した様子でぼーっとした顔のドラゴンちゃんを抱きかかえる。ドラゴンちゃんの口角が軽く上がっていた。
「あ、ああ・・・かまわないけど・・・俺何かこの子に恨みを買うことしたかな・・?」
ハジメは悩み始めた。
「さぁ、ではそろそろいきましょう。では我々は東に進み、サヤと刀の謎に迫ってきます。そのあとは一度ここに戻ってまいりますので、師匠もご武運を」
カルラが拳を前に突き出す、しょぼーんとしていたマナもそれに習って拳を前に突き出す。
「お、近衛流だね。では、みんなの遠征の幸運を願って。解散!」
三人の拳が重なる。
「おお、かっこいいなあれ・・・我々もするか」
「「キュイッ」」
その横でドラゴン達がルゥにお手をしていた。
「ふむ、確かに・・・また大きくなれば様になるかもしれないな」
ルゥがそういうと、ドラゴン達はルゥの両肩に乗った。
ハジメの家を後にした三人。ハジメはいつもの如くお茶を飲みながら送り出してくれた。
「それにしても、最近ドラゴンちゃんたちはルゥさんの上にばかりいますよね」
マナがじとーっとルゥの上のボケーっとしたドラゴンちゃんの顔を見ながらそう言った。
「そうね、戦闘時以外はほとんどルゥの上に載っているわね。何故かしら?」
カルラも不思議そうな顔でアイスちゃんをつつくと
「キュィィ・・・」
アイスちゃんが少し呆れた顔で鳴き、ドラゴンちゃんがそれに対して頷く。
「ふむふむ・・・どうやら私の方が安定しているらしい。どうも二人では足の突っかかりが悪いとかなんとか?それ以降は謎の言語で誤魔化された、二匹では通じたようだが・・・」
「どういうことでしょうねぇ・・・?つっかかり・・・?」
マナが考え込む。
「よし、じゃあ首都まで行きましょうか、そこから東の街道に出るわよ」
「了解した」
ルゥだけが返事し、マナだけが悩んでいた。ドラゴン達は興味無さそうにルゥの胸元に移動し、抱きかかえられるとスヤスヤと眠りはじめた。
「くっ・・・そういうことでしたか・・・!!!」
「さぁな。置いていくぞ」
プリプリと怒り出したマナにルゥが声をかけて進む。
「あはは」
カルラが笑顔でそんな二人を見ていた。
そんな三人と二匹の後をつける影があるとは露知らず、最強剣士の弟子+αの旅が始まったのだ。




