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 部屋の中にレフィアと二人。その状況に最近は慣れてきて、僕もリラックス出来るようになった。でも、今は少し緊張する。これから彼女の事情を聴くことになるだろうからだ。僕はそれを解決してあげたい。だから真剣に聞かなければならない。


「改まって話すとなると変な気分になるわね。レンもリラックスして聞いてもらっていいわよ」


「うん。でも僕はレフィアの事きちんと知りたいから。真面目に聞くよ……」


 サラに頼まれたこともあるけど、僕自身がレフィアをいい人だと思うから退学して欲しくは無かった。


「そ、そう? まあいいわ。どこから話そうかしら、そうね、私の生まれからにしましょう」


「王女だっていうのは知ってるよ」


「そう、私はこの国の王女として生を受けた。……レンは王族のことをどのくらい知ってる?」


 特に詳しくはない。国からの正式な発表と、街の噂を聞くくらいだろうか。


「噂くらいかな。詳しいことは何も知らないよ」


「じゃあその説明からね。この国の王族は全員なんらかの魔法の才能を持って生まれるの。私もそうだった」


 驚きはしない。血筋によって魔法の才能が操れるという話は研究もされていてメジャーな話題だ。だからこの国トップである王族にそんなからくりがあってもおかしくはないだろう。


「さらに、私は家族たちの中でもとびっきり優秀な才能をもって産まれたわ」


 詳細を聞きたかったけど、今はその才能がどんなものかはどうでもいい。それをレフィアがよく思ってなさそうなのが気になった。


「それは……良い事じゃないのかな?」


「普通の人ならそうだったでしょうね。……でも、私は違った。兄妹達は私を敵視したし、両親も私を使える少女としてしか見なかった。娘として接してくれたことなんてなかったわ。あらゆる人が私に嫉妬して、私の居場所なんてどこにもなかった」


 慰めの言葉は掛けられなかった。レフィアの悲しみは彼女自身にしかわからない。同情して欲しいわけでもないだろうから、その言葉は不要だ。


「それでも私は挫けなかった。何度も兄妹達に妨害されたけど、魔法の才能を磨くことは辞めなかったわ。魔法というものが好きだったし、それだけが私に出来ることだったから」


 そこには、両親達を振り向かせたいという幼心があったのかもしれない。その努力は実らなかったのだろうけど。


「そして時が経って、私はこの学校に来ることになったわ」


「王族がこの学校に来るって噂は僕の元にも届いたよ。かなり盛り上がってたと思う。あの有名なレフィア王女が来るってね。それが嫌だったの?」


 レフィアは王女として扱われる事を嫌っているようだったから、そう思った。


「違うわ。そうなることは予想がついていたしね。私はここに来るのを楽しみにしていたのよ。王女として騒がれてもいいくらいに。……なんでだと思う?」


 この学校の中で、今話してくれた彼女が好みそうな利点はあれだろうか。


「王城を離れたかった?」


 完全な寮制度。僕が思いつくのはこれくらいしかなかった。


「ふふ。それもあるかもしれない。でもそれだけじゃないの。私は、この学校にいる人は全員私と同じくらいの才能と熱量を、魔法に対して持っていると思っていたのよ。馬鹿だと思うでしょ? そんなわけはないのに」


 話が理解出来てきた。レフィアの才能がどのくらいのものかは知らないが、それはもう凄いものだったのだろう。


「そうして幻想を抱いてやってきた私は妬み嫉みの対象になり、周りに残ったのは利用しようとする卑しい人間だけ。幻想は三か月で打ち砕かれたわ。戦う度に相手から非難され、仲間からは形だけの感謝を貰う。結局ここにも、私の居場所は無かったのよ」


 そして魔法も使いたくなくなったと。よく理解できた。


「それでも私にとって魔法は全てで、それがないと生きていけない。少し前まではそう思ってた。でも、そうじゃないってことに気付いたの。チームを抜けてから、ノエルに出会って、サラに出会って、レンに出会って、魔法を使わなければ皆、私を私として受け入れてくれる。それに気付けた。だから私はこの学校を自分から退学する。そう決めたの」


 僕にはレフィアが前向きにその選択をしたのか、それとも魔法というものを諦めて妥協で選んだのか。その区別が出来ない。この理由を聞いてしまって、彼女の退学を止めるのが正しい事なのか分からなくなってしまった。


「だから、私達の事はもう放って置いてもいいのよ。レイラ先生に何を言われているのか知らないけど、レンがわざわざ協力する義務なんてないんだから」


 レフィアは僕がこうやって悩むのが分かっていたのだろう。そして、強引に止めようとしないことも。だから僕とも平然と仲良くできる。どちらにしろあと少しの暮らし。そんなことも思っていたかもしれない。


「レフィアは、魔法の事はもういいのかい?」


「痛いところを突くわね」


 困ったような表情でレフィアは笑う。


「幼い頃からやってきたんだから、今でも魔法の発展には興味がある。それに魔法の事が好き。私を不幸にしたのが魔法だったとしても、それがこれまでの私を支えてきたというのは事実だから」


「なら…………」


 僕は言ってみる。レフィアが諦めきれないと、そう一言だけ言ってくれたなら何の苦悩もなく決断するのに。そう思って。


「でももういいの。いつか何か、代わりの興味があるものに出会えるかもしれないしね」


 もう、レフィアの視点は外に向いていた。現段階では引き留めるのは難しい。そう言わざるを得ない程に。


「一つだけお願いがあるんだけどいい? 別に引き留めようとかそんなのじゃないから」


「いいわよ。何かしら?」


最後の手段だ。僕にはこれしか思いつかなかない。


「僕らのチームの最初の試合。それを見に来てくれないかな?」


サラにも後で聞かなければいけない。でも、同じ気持ちになったのだとしたらその時は全力でしようと思う。


魔法でレフィアをもう一度魅了する。それが僕の考えた作戦だ。この選択が正解なのかどうかはまだわからない。でも、僕は彼女に魔法というものを捨てて欲しくなかった。勝手な願いなのかもしれないが、それでも、彼女が魔法を諦めざるを得ない状況が嫌だった。


僕が一度は諦めかけたからこそ、その道を選んで欲しくなかった。


「そんなこと? 元々サラが心配だったし見に行くつもりだったわよ」


どんなことを考えているのか、まだ伝わっていないと思う。だから本番どうなるかは分からない。でも、サラと一緒に頑張るしかないだろう。


おそらく最初の試合はもうすぐだ。明日あたりにはもう対戦表が張られているだろう。時間はもうない。でも、不思議と僕には成功する予感しかなかった。


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