最終話 それでも
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両手を天にかざしたハルファスの腕が…否、そこへ着けた腕輪が光り出す。
「いまこそ盟約に従い、我が呼びかけに応えよ!
出でよ、不死鳥!その真名はリバイ!!」
ハルファスの言葉に腕輪が更に輝く。
やがて、その光が天に舞い上がり、大きくなっていく。
気づくと、そこには炎を身に纏った…
いや、炎そのもので構成された不死鳥がいた。
その美しき身体に燐光を纏いながら舞う姿に、全員の目が釘付けになる。
「久しいな、小さき者…いや、ハルファスよ」
不死鳥が辺りに響く。
「あ…あれが…炎の精霊王…」
掠れた声で、シトリーがつぶやく。
「久しいな、リバイ。盟約に従い、我が願いを聞き届けてくれたまえ」
ハルファスの声に、不死鳥が答える。
「もちろんだ、ハルファス。して、何を望む?」
「我が息子と将来の嫁の蘇生である。
その蘇生の炎をもって、人として蘇らせてくれたまえ」
「承った」
ハルファスの言葉に短く答えると、不死鳥リバイは舞う。
地面スレスレに飛ぶと、アマンとエイミーの遺体をその身体で包みこむ。
不死鳥に包み込まれた遺体は、激しく燃えあがる。
ほどなくして、それは灰となった。
元はアマンとエイミーだった灰に、蛍のような光が降り注ぐ。
どことなく炎を思わせる光だが、暴力的な光ではなく、儚げな淡い光である。
灰から、何かが産まれ出す。
それは急速に人型となり、やがてアマンとエイミーとなった。
不思議そうな顔をしたアマンとエイミーが、何事もなかったかのように身体を起こす。
ふと、互いに裸であることに気づいたアマンがエイミーの身体を隠すように抱きしめる。
それを見届けると、安堵の息をもらして地面に座り込むハルファス。
サロスは、2人に凄い勢いで駆け寄り抱きしめる。
「これで良かったかな?」
「ああ、感謝する。本当にありがとう、リバイよ」
「なに盟約に従ったまでよ。用が済んだのあれば私は帰ることにしよう。
ではまた会おう、ハルファス」
そう言うと、不死鳥の身体が光に解けていく。
そして、最後の燐光を瞬かせると精霊界へと帰っていった。
シトリーは、呆けたように不死鳥の身体が光に解けていくのを眺めていた。
ムラマサは、蘇ったアマンとエイミーが裸であると気づいて、建物に衣類を探しに行く。
ハルファスは、不死鳥の帰還を見届けると地面に大の字で寝転んだ。
「ふう…魔力枯渇寸前なのである…」
誰にも聞こえないように、ハルファスは小さく呟いた。
しばらくすると、ムラマサの見つけてきた衣類を身に着けたアマンとエイミー。
そのままハルファスの下にやってくると、アマンは膝を地面につけて父に抱きつく。
「父上!!」
「まるで小さき頃に戻ったようであるな」
笑いながら、ハルファスがそう言って抱きしめ返す。
しばしの間、そうしていた親子であったが、ゆっくりと身体を離したハルファスが告げる。
「アマン、エイミー、帰る用意を早くするのだ。
我が家に帰るのである。母さんも待っているのだよ」
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王都に用意されているハルファスの屋敷。
宮廷魔術団の団長の屋敷である。
各地の領主に負けない大邸宅を与えられていた。
そこへハルファスを初め、アマンのパーティー一同が訪れていた。
大勢のメイドや執事に出迎えられ、応接間に通される一同。
ムラマサは緊張のため、一言もしゃべっていない。
「ご用意が整うまで、しばしこちらでお待ちください」
執事がそう言って退室すると、シトリーが呆れたように言う。
「サロスが王子様っていうのも大概な話だと思っていたけど…
アマン、あんたも大概なお坊ちゃまなのね…」
「辞めてくださいよ。ここは父の家ですし、私は三男ですから」
応接間でくつろいでいると、入浴の案内に再び執事が現れる。
それぞれ順番にシャワーを浴び、旅の埃を落とす一同。
用意された服に、皆が着替える。
全て、ひと目で上質の物と分かる品物であった。
いつものメンバーになって、ようやく緊張が解けたムラマサ。
ここになって、ようやく口を開く。
「わしらは、とんでもない奴らとパーティーを組んだもんじゃの」
「そうね、頭では分かってたけど…ようやく実感が湧いてきたわ」
「何を言っているんですか。
サロスの父親…国王陛下にも会っているじゃないですか」
アマンの反論に、呆れたような顔でシトリーが返す。
「なんか、そっちは現実感がないっていうか…」
「そうじゃのう」
ムラマサも珍しくシトリーに同意しっぱなしである。
そんな会話をしていると、また執事が部屋を訪れた。
「お食事の用意が整いました。
旦那様も奥様もお待ちです。どうぞこちらへお越しください」
執事に連れられて、食堂へ移動する一同。
巨大な大広間かと思うような食堂に、縦長の大きなテーブル。
そこに食べきれるとは思えないほどの量の料理が並んでいた。
「さあ、みんな好きなところに座ってくれたまえ」
ハルファスに促されて、それぞれが好きな席に座る。
「まあ、みなさん。ようこそいらっしゃいました。
いつもアマンがお世話になっております。
私は、アマンの母親のシャックスと言います。
サロス、あなたは随分と大きくなったわねえ」
「やめてくださいよ、おばさん。
皆の前で、子ども扱いされるのはキツイです…」
小さな頃から慣れ親しんでいるため、頭が上がらないサロス。
そんな様子を皆がクスクス笑っていた。
「さあ、みんな腹が減っているだろう。遠慮なく食べてくれ」
そうハルファスに促され、食事が始まる。
食卓での話題は、これまでの冒険の話である。
それをハルファスとシャックスは、懐かしそうな顔で聞いていた。
一頻り話が盛り上がると、今度はハルファスが質問する。
「ムラマサとシトリーは、予定通り故郷へ戻るのだろうか?」
「ええ、そのつもりよ」
「うむ、わしもじゃ」
「そうか。2人さえ良ければ、王城で仕事をしてもらおうかと思ったのだが」
2人は、揃って首を横に振る。
「性に合わないわよ」
「わしも無理そうじゃの」
「それは、残念なのである…サロスは、これからどうするのだ?」
ハルファスの問いに真剣な表情をして下を向くサロス。
やがて顔を上げ、ハルファスを見つめる。
「俺は、領地を継ぐ事にした。
俺が誘ったのに、アマンには悪いんだが…
いろいろと王族の責務について、考えさせられることが多かった。
俺は、それから逃げ出すべきじゃないと思うようになったんだ」
サロスの決意のこもった言葉に、ハルファスは頷く。
「それは、サブノックもさぞ喜ぶであろう」
ハルファスは笑顔のまま、アマンへ目をやる。
「それで、アマンはどうする?」
「私は、このまま冒険者を続けたいと思います」
アマンの答えに、ハルファスは残念そうな顔をして言う。
「お前さえ良ければ、宮廷魔術団に入ってほしいのであるが…
エイミーも、それでよいのであるか?」
エイミーは笑顔で、その問いに頷く。
「父上、もったいない話をいただいているのに申し訳ありません。
でもいまは、冒険がくれる出会いや感動、発見を諦められません。
…最初は、サロスにくっついてただけで始めたことですが…」
そう言って、照れた顔をするアマン。
だが、それをみんなが笑顔で見守っていた。
そんな一同の顔を見渡し、アマンは叫ぶ。
「私は…それでも冒険者になりたい!」
-----それでも冒険者になりたい!《完》-----
次回作『桜花の頃に』を明日5/7に投稿致します。
http://ncode.syosetu.com/n5742dy/
現実世界を舞台にした不思議な恋愛小説です。
短編ですので、気軽に読めます。
是非、こちらの作品もよろしくお願い致します。




