第49話 古の記憶
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■月■日
新しい工房がようやく完成した。
移り住んで初日。
気持ちも一新したこともあり、日記も新しく書き始めることとする。
■月■日
私が郊外の屋敷を工房にしたことを馬鹿にする連中がいるらしい。
「リンクは錬金術師として終わったのだ」と。
だが、王都の喧騒の中で研究に集中できるわけがない。
私からすれば、王都で工房を構えている錬金術師の方がどうかしている。
■月■日
国王より奴隷用の武器の発注を受けた。
竜を使役するために戦うようだ。
最新の研究では竜に効果が大きい魔力付与が発表されている。
王都の錬金術師は研究が足りないらしい。
せっかくの研究も実際に武器に付与できなければ意味がない。
嘆かわしいことだ。
■月■日
発注を受けた武器を完成させた。
数が多く、ずいぶん時間がかかった。
種類もいくつかあったので余計に手間がかかった。
今後の参考にするため、一式づつ手元に置いておこうと思う。
―備忘録―
大剣
曲剣
湾曲剣
刺突剣
斧槍
全身鎧
胴鎧
軽量鎧
■月■日
納品した武器は好評だ。
竜の使役にも成功したらしい。
王都において「錬金術師リンク」の名が、また高まったようだ。
■月■日
特殊召喚術式の起動を確認できた。
ここへ越してから、とりかかっている研究の大きな成果だ。
武器の仕事に追われていて、少し遅れていたが順調といえるだろう。
『魔物や魔族は魔力を元に生まれる』
この私の推論が正しければ、召喚士が魔界と呼んでいる世界は魔力で溢れているはずだ。
この世界よりも遥かに濃密な魔力が魔物たちを産むのだ。
もし魔界の魔力だけを召喚することができれば、無限の魔力を持つ魔道師となれる。
これが成功すれば、魔道師としても私の名声を築くことになるだろう。
■月■日
特殊召喚術式を縮小化することに成功した。
もう少し縮小化することができれば、魔道具に刻み実用に供することができるだろう。
目標としては、アクセサリー類に刻める程の術式に収めたい。
■月■日
縮小化にかなり苦戦している。
しかし、平行して行っていた実用的起動の仕方は目処がたった。
常時発動型まで、あと一歩というところだろう。
■月■日
ようやくアクセサリーほどの縮小化に成功。
常時発動型の起動式と合わせて、実験的な試作品の作成にとりかかることにする。
指輪などにはまだ大きすぎるので、首飾り全体を使って術式を施す予定。
■月■日
試作品が完成した。
今日より実験的運用を私自身で開始する。
溢れ出るような魔力の供給を肌で感じる。
無限の魔力を私は手に入れた。
■月■日
魔力が無限にあることで仕事がはかどる。
この魔道具は私の最高傑作かもしれない。
溢れ出る魔力をもっと使いたい。
■月■日
いてもたってもいれないので、狩りに出かける。
地形を変えるほどの魔法をいくら使っても疲弊しない。
もっと狩りを楽しみたい。
■月■日
最近、どうにも血に飢えて仕方ない。
奴隷たちであれば、狩りの対象にしても構わないのではないか。
どこか適当な村を探そう。
■月■日
奴隷たちの狩りにも飽きてきた。
魔道師を相手に狩りがしたくて堪らない。
魔道具の副作用が見つかった。
身体的変化が見られる。
特に大した副作用とは考えられない。
■月■日
身体的変化が大きく進んだ。
公の場で人前に出るのは避けることとする。
魔道師の狩りは最高だ。
しかし、王都の動きが気になる。
狩りに気づかれたのだろうか。
■月■日
王都の者たちに狩りが発覚したようだ。
幸い私の工房を知るものは少ない。
ほとぼりが冷めるまで、不可視の結界を張り大人しくしよう。
■月■日
狩りへの衝動が止まらない。
一旦、結界内に自らを封じることとする。
■月■日
私は人を超越した。
この姿はその証拠であろう。
早く狩りを再開したい。
■月■日
人であった頃の記憶が薄れている。
だが、超越者たる私には瑣末なことである。
この日記も、もう不要であろう。
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