第13話 魔法陣
迷宮都市イボスの町に戻ったアマン一行。
早速、依頼達成の報告のため、冒険者ギルドへと向かう。
「アマン様!サロス様!」
いつもの如く、受付嬢のアーリンが目ざとく2人を見つける。
騒がれたくない2人は、素直にアーリンの下へと向かう。
「ご無事で何よりでした。依頼は達成できましたか?」
「ええ。こちらが依頼達成書になります」
アマンが、エイン町長のギスカーにサインを貰った依頼達成書を手渡す。
「内容を確認させていただきます。
…元冒険者たちが40人ほどで砦を築いていたんですか…
…冒険者ランクCのほかに、ランクDやEの元冒険者たちまでいたんですね…」
依頼達成書の内容を読んでいくたびに、アーリンの笑顔が引き攣る。
「…この盗賊団を3人で討伐されたと?」
「なにか問題あったか?生死は問わないと依頼者から言われていたが?」
サロスの問いにアーリンが叫ぶ。
「そんなことに驚きませんっ!
なんすか?この軍隊みたいな集団は?
こんな盗賊団の討伐を3人で?1日で完了?
規格外もいいかげんにしてくださいっ!」
ぜーぜーと、息を吐きながらアーリンが3人を睨む。
「そう言われてもなあ?」
助けを求めるようにアマンを見るサロス。
「ええ。手続き的になんら問題はないはずですが…」
「ええ!手続きにはなんの問題もないですよ!?
ただねぇ、こんな集団を討伐するのは、普通4、5パーティーで行くんですよ。
それだけ危険ということです!
なんでそんな危険を冒して、自分たちだけで戦うんですか!
今回は無事でしたが、皆さんになにかあったらどうするんですかっ!」
至極真っ当な小言に何も言い返せないアマンとサロス。
エイミーだけは、無表情で立っている。
どうやらアーリンは、自分たちの身を案じて怒っている。
そのことが分かっているため、アマンもサロスも反論できなかった。
「…以後、気をつけます」
かろうじて、アマンがそう告げる。
アマンの言葉に、アーリンも冷静さを取り戻す。
「申し訳ありません。出すぎたことを申し上げました。
ただ、将来有望な冒険者の方を正しく導くのも我々の務めだと私は思っています。
本当に、あまり危険すぎることは避けてくださいね」
アーリンの言葉に、大人しく頷くアマンとサロス。
その様子に満足したのか、いつもの受付嬢らしい笑顔で話を続けるアーリン。
「では、完了の手続きを致しますので、皆さんのギルドカードをお預かりします」
手続きのためアーリンが奥へ向かうと、アマンとサロスが顔を見合わせ、ため息をつく。
「そんな無茶だったか?」
「いえ、十分配慮したつもりだったのですが…」
「まあ、俺たちのことを本気で心配してくれてるみたいだしな」
「そうですね。誠意のある忠告は、しっかり受け止めておきましょう」
しばらくしてアーリンが戻ってくる。
「アマン様とサロス様のギルドカードを返却させていただきます。
ご確認ください」
「レベルが上がらんなあ」
「それは、お2人のレベルが特別高いからですよ」
サロスのぼやきにアーリンが応える。
「エイミーのギルドカードは?」
アマンの問いにアーリンが答える。
「エイミー様のギルドカードは、更新が上手くできず、ただいま作り直しております。
いましばらくお待ちください。その間、ギルド長がお呼びですので、お会いいただけませんか」
「わかりました」
最後は小声となったアーリンの申し出にアマンが応じる。
別の職員に案内され、ギルド長の部屋を訪れる3人。
扉を開くと、現役の冒険者さながらの迫力ある男性が待っていた。
「おお、今回の依頼は大変だったようだな。ご苦労だった。
まあ、そこに座ってくれ」
コンガスの言葉に従い、3人はソファーに腰を下ろす。
「早速で悪いが、この前の件について、少し話がしたい。
お前らは、この国に迷宮都市と呼ばれている町が2つあることは知っているか?」
「ええ、大陸南西部に位置するここイボスと北東部に位置するサイラスですね。
それぞれ炎の精霊王である不死鳥と火の精霊王であるイフリートが封じられていたとか」
コンガスの問いにアマンが答えた。
「その通りだ。古代魔法王国の遺跡の副産物として魔物が出るようになり、迷宮が作られた。
もう1つのサイラスにも問い合わせをしたのだが、階層を越えた魔物が出現した事例はないそうだ」
「では、この前のコカトリスは偶発的な事故ということでしょうか?」
「いや、イボス迷宮の第1階層を高レベル冒険者たちにくまなく調べてもらった。
その結果だが、お前たちがコカトリスを討伐した付近に見たことのない魔法陣があったそうだ。
わかりづらいところに設置されていて、最初から魔法陣を探していなければわからなかったそうだ」
アマンとコンガスのやり取りを聞いていたサロスが声を上げる。
「ということは、誰かがわざとやったってことか!」
「そうなるな」
サロスの指摘にコンガスが渋面を作る。
「そこでだ。疑っているわけではないのだが、なぜ転移魔法の可能性に気づいた?」
「それは消去法です。不可能な事実を消去していった結果、たまたま辿り着いた解答です」
「転移魔法の魔法陣かは、まだ分かっていないが、よく知っていたな。
使い手のいないと言われている魔法の知識まで知っているとは…」
「なるほど。そこを不審に思われたのですね。
答えは至極簡単なことです。知っている方に転移魔法の使い手がいるのです」
「なんだと!?そんな者がいるのか?うむ…それならわからんでもないが…
…これ以上、冒険者に出自を問うなどすべきではないな。すまない。情報提供に感謝する」
コンガスが納得したようなので、ホッとしたアマンであった。
それ以上の話はなかったようなので、コンガスの元を後にする。
窓口に戻ると、エイミーの新しいギルドカードができていた。
「うまく情報を引き継げなかったので、手入力で作り直しました。
内容に誤りがないか、よくご確認ください」
ギルドカードに目を落としたエイミーだったが、すぐに頷く。
「問題なさそうですね」
「お手数をおかけしました」
「いえいえ、ギルドカードを壊されたり、無くされたわけではないので」
アーリンにお礼を言って、3人は依頼ボードに向かう。
「あと1件かあ」
「そうですね。外を旅するのもいいですが、次は迷宮に潜る依頼もいいですね」
「そうだな…お、これなんかどうだ?」
サロスが手に取った依頼書は、オーガの角の収集依頼であった。
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