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第1話 師弟契約

新作始めました。

「少女よ、私の弟子にならないか?」


 今年の春から中学生になる予定の女の子、鈴木すずき 千尋ちひろは目の前に現れた不審者を観察した。

 一言で言うのならば、真っ黒。

 更に言葉を尽くすのならば、悪い魔法使い。

 そう呼ぶに相応しい容姿の男が、いきなり目の前に現れたのだ。

 千尋が驚きで目を見開いたのも仕方がないことだろう。

 何せ、本当にいきなり――――『空間を割って登場した』ように見えたのだから。


「私の名はクロウ。【黒】を継承する魔術師だ」


 いきなり自己紹介をし始めた男を、更に千尋は睨むように観察する。

 まず、イケメンだった。長身のイケメンだった。

 怜悧な眼差しと、漆黒の長髪。どこまでも暗い瞳が特徴的な、ダウナークール系のイケメンだった。

 外見年齢は、千尋の見立てだと『なんだか若そう』という印象だ。

 恐らくは十代後半から二十代前半ぐらいだろう。

 ただし、同時に『なんかお爺ちゃんと似た雰囲気あるなぁ』という、老成した雰囲気の持ち主という矛盾した印象も抱いているので、『怪しいイケメン』という判断で良いだろう。

 現代日本で魔術師を自称し、それらしい黒衣を纏っているのだ。

 しかも、往来の多い街中に突然現れたのだ。

 その男――クロウはこれ以上無く怪しい存在だった。


「少女よ、君の名前を訊ねても――」

「えいっ」


 従って、千尋が思いっきり防犯ブザーを鳴らしたのも無理はないだろう。

 ピピピピピピッ!! 

 甲高い警報が周囲へと響き渡り、不審者がこの場に居ると知らしめる。

 そのはずだった。


「あ、あれ?」


 目を向けない。

 周囲には人の往来があるというのに。

 防犯ブザーの音は確かに鳴り響いているというのに。

 今、千尋とクロウに視線を向けている者は皆無だった。

 不自然なほどに。


「正しい反応だ。警戒心が高くてよろしい」


 クロウは千尋の反応を称賛すると、淡々と言葉を紡いでいく。


「だが、想像力が足りていない。私は言ったはずだぞ、魔術師だと」

「……っ!? う、ううっ!」

「私と君に【暗夜の帳】を――いや、専門用語はいけない。分かり易く言おう。私と君の存在を隠す魔術を使った。だから、私と君がどれだけ騒ごうとも、誰も気づくことは無い」


 クロウの言葉に、息を飲む千尋。

 ならば、とその場から逃げ出そうと震える足に喝を入れるが。


「だが、その機械は止めさせてもらう。話し合うにはうるさいからな」


 クロウが千尋を指差した瞬間、防犯ブザーがぴたりと止まった。

 意味不明だった。いや、なんとなく魔術とやらを使ったのは千尋も理解できる。

 問題は、その魔術でどれだけのことが出来るのか?

 例えば、そう、いきなり止まった防犯ブザーのように、千尋にも何かしらの干渉をすることが出来るんじゃないか?

 いきなり、漫画やアニメみたいな攻撃魔術を放ってくるのではないか?


「……う、ぐ、ふぅっ……ひぐっ……」


 一度想像してしまえば、千尋の心は一瞬で恐怖に染まった。

 当然だ。

 千尋は平凡な少女に過ぎない。

 この如何にも怪しい魔術師に対して、『こんなこともあろうかと!』と対抗する手段など持ち合わせていないのだ。


「う、うううっ! あ、アタシはタダではやられないぞ! ぜ、絶対に、指の一本は嚙み千切ってやる!」


 それでも、せめてもと子犬のように弱々しくも精一杯に吠えて。


「ふむ」


 その反応に、クロウは十歩ほど千尋から距離を取った。


「へ?」


 そして、黒衣の中から、ぽんぽんぽんと軽快な音を立てて、色とりどりの花束を出して見せる。まるで、どこにでもいる手品師のように。


「…………駄目か」


 困惑している千尋の様子を見ると、更にクロウは黒衣の中から新たなるものを取り出す。


『にゃあ』

『にぃ』

『なーう』


 それは三匹の黒猫だった。

 艶やかな毛並みを持った、可愛らしさに溢れた黒猫たちだった。


『にゃあ』

『なうなうな』

『にゃーう』


 その黒猫たちはとてとてと軽い足取りで千尋の足元まで近づいて。


『『『にゃーん』』』


 ごろん、寝転がった。

 まるで『さぁ、愛でろ』と言わんばかりに。


「……ぐすんっ」


 千尋は涙を流しながら、とりあえず黒猫たちの背中を撫でた。

 どんな時でも、可愛い猫を愛でたいという気持ちは正義だからだ。


「…………あの、ひょっとして」


 たっぷり三分間、黒猫を愛でた千尋は、ようやく自身の袖で涙を拭う。


「アタシを襲わない感じですか?」

「普通、自分の弟子にしたい相手を襲わないだろう」

「「…………」」


 千尋は理解した。

 この見るからに悪そうな魔法使い――もとい、魔術師は自分を慰めるために、花やら猫を取り出して見せたのだと。

 逆に言えば、慰めや誤解を解く言葉を口に出すよりも、花や猫に状況の改善を託すような、馬鹿みたいに不器用な人なのだと。


「アタシを誘拐する?」

「弟子にしたい人間を誘拐するわけが無い。そんなものは下策の極みだ」

「今すぐ、アタシを解放して、と言ったら?」

「その通りにしよう。だが、一つだけ聞いておけ、名も知らぬ少女よ」


 クロウは少し遠くから、けれども魔術によって音量を調整して千尋に告げる。


「君が私の弟子になるのならば、私は君の願いを一つだけ叶えよう」


 まるで、悪魔のような誘惑の言葉を。


「……それって、なんでも?」

「いいや、生憎、私は万能では無いし、見境が無いわけでもない。死者は生き返らせないし、世界を滅ぼせ、などという願いを叶えるつもりも無い」

「ふぅん。なぁんだ、大したことない――」

「その代わり、死の定めにある人間を生き長らえさせることも、不老不死も、巨万の富も与えることが出来る。君が、私の弟子になるのならば」


 千尋は知っている。

 漫画やアニメで良く知っている。

 願いを叶える代わりに対価を求めて来る輩は大抵、ろくでもない奴らばかりなのだと。

 けれども、それでも。


「……嘘じゃない?」

「取引で嘘を吐く魔術師は、愚物の中の愚物だ。そして、私は一年以上探し続けた『素質』を持つ相手との取引で、虚偽を扱うほど愚物ではない」

「…………むぅ。あのさ」

「なんだ?」

「――――実は、アタシの事情とか、そっちは知っているんじゃない?」

「いいや、知らない。だが、こちらの取引に応じやすい人物を探し当てるため、占いを併用しての捜索の果てに君が見つけられたと言っておこう」

「なる、ほどぉ」


 千尋には願いがあるのだ。

 明らかに怪しい誘いに乗ってしまう程度には、切実な願いが。



●●●



 鈴木千尋は平凡な少女である。

 少なくとも、千尋自身はそう思っている。

 父親譲りの茶髪と、それを束ねたポニーテイルがトレードマーク。

 運動は得意。男子の中に混ざっても、遜色ない程度に。

 勉強は苦手。算数の時間は中々に苦行だと感じる程度に。

 個性はあるが、平凡の範疇に収まる程度の少女。

 千尋は自身をそのように判断している。

 何故ならば。


「いい? 千尋。この世界には『本当に美しいもの』がたくさんあるのよ?」


 千尋は本物の異常者を知っているからだ。

 五歳に満たない幼子を――千尋を抱えて、断崖絶壁の山頂まで登って見せる冒険者を知っているからだ。


「貴方には、私も見つけられなかったようなものを、たくさん見つけて欲しいわ」


 千尋を幼い頃から、数多の冒険に連れまわす母親の存在を知っているからだ。

 故に、母親に比べたら、自分は平凡極まりない普通なのだと思い込んでいるのだ。


「いやぁああああ!! お母さん、死ぬ! 死んじゃうよぉ!」

「あははははっ! さぁ、目を開いて、千尋! この光景を見ないなんてもったいない!」


 雪崩を背にした命がけのスキー。

 落ちる岩も砕くような滝の中へのダイビング。

 よくわからない仮面を付けた部族とのチェイス。

 千尋にとって母親の記憶とは常に、自分の悲鳴が付き物だった。

 当然、冒険者である母親にとっては親子の楽しい触れ合いでも、千尋や、千尋の父親にとっては虐待まがいの行いには変わらない。


「あらら、残念。でも、覚えておいて。私は離れていても、貴方たちを愛しているわ」


 従って、千尋の父親が離婚という手段を選んだのは間違いではなかった。

 母親も、自身が無茶を言っていたのは理解したのか、すんなりと離婚には応じた。

 何の問題もない、円満離婚となった。


「…………ばか。お母さんのばか」


 ただ一人、『千尋と別れるぐらいなら冒険を控えるわ』と言って欲しかった子供を除いて。




 千尋にとって母親とは、『殺しても死なない人間』の筆頭だった。

 離婚した後も、年に一度は会っていたものの、その時はいつも九死に一生の冒険談ばかり。お土産には、どうして空港を通れたのかわからない、怪しげな品物ばかり。

 いつも元気で、いつも楽しそうな異常者。

 少しぐらいは娘に会えない寂しさを感じても良いのに。

 少しぐらいは痛い目に遭えばいいのに。

 そう思ってしまうほど、千尋にとって母親は無敵の超人だったのである。

 ――――三日前、昏睡状態で病院のベッドに横たわる、母親の姿を見るまでは。


「体に傷は一切無くて。熱も無くて。何かの病気でもないんだって。でも、時間が経つごとに少しずつ体温が下がって行くんだって。まるで、命の熱を吸い取られているみたいに」


 千尋は今、病院の個室で昏倒している母親を見下ろしていた。

 命を繋ぎ止めるための、多くの機械に繋がれた母親の姿を。


「このままだと、明日の朝日は拝めないかもしれないんだってさ」

「そうか」

「でも、これ以上どうすることも出来ないから、生命維持装置を付けているんだけど、全然効果が無いんだって」

「そうか」

「本当に笑っちゃうよ。散々、好き勝手に冒険した末路が、原因不明の昏睡なんて。あんまりにも出来過ぎている。案外、ここで死んでもお母さんは満足かもね?」

「そうか」


 千尋の隣には、淡々と相槌を打つクロウの姿があった。

 何かを堪えるような千尋の表情とは対照的に、クロウは一切の感情が浮かばない無表情で隣に立っていた。


「魔術師さん。アタシね、お母さんのことが嫌いなの」

「そうか」

「身勝手の極みって感じの人でね? 子供の頃から、アタシはお母さんに連れまわされてばかり。居ないよ? 小学校に入る前に、十か国以上の国を渡り歩いた子供なんて中々」

「そうか」

「その上、お母さんと一緒に居ると命の危険ばっかり。もう、本当に嫌になってた。正直、トラウマだよ、トラウマ。お父さんがお母さんと離婚してくれて清々したね!」

「そうか」


 千尋は語る。

 震える声で、散々母親の悪口を語る。


「魔術師さんがどれだけ凄いのか、アタシにはわからない。でも、アタシが願えば、一生働かなくてもいいお金が手に入るんでしょ?」

「ああ。人生を七回やり直しても、まだ有り余る巨万の富を与えよう」

「だったらさ! 普通に考えたら、お金を貰った方が良いよね! お金があれば、お父さんも楽になるし! アタシの将来だって薔薇色! 自分の好きなことだけして生きていける!」

「その場合、私の弟子として魔術師になってもらうから、全てが自由というわけでもないぞ?」

「あははっ! そうだった! でも、アタシは興味あるな、魔術師って! 普通に生きていくよりもずっと楽しそうだし!」


 千尋は語る。

 震える声で、如何にも降って湧いた奇跡に浮かれる言葉を。


「そうだ! そうしよう! アタシは、アタシはこれから、漫画やアニメの主人公みたいに、特別で、素敵な生活を――――」


 千尋の語りは途中で途切れた。

 何故ならば、その両目からはボロボロと溢れんばかりの雫が流れ落ちたからだ。


「ずるい。ずるい、ずるい、ずるい、ずるいよ、お母さんは」

「…………」


 千尋は幼子のように、地団太を踏む。

 病院では推奨されない、騒がしい行為。

 けれども、その行為を見守るクロウが居る限り、千尋の悪態は外に漏れることは無い。

 クロウの魔術は、昏倒している母親を罵る千尋の葛藤を最後まで遂げさせる。


「ねぇ、魔術師さん」


 自分の中の悪態を全て吐き出した後、千尋はくしゃくしゃの笑顔でクロウに告げる。


「アタシのお母さんを助けて」

「――――了承した。契約をここに結ぼう」


 そして、少女の葛藤は終わり、魔法の時間が始まる。


「師弟の契約により、私は魔術を行使する」


 クロウは昏倒する千尋の母親の上に手をかざし、思い切り何もない空間を鷲掴みにした。


「心臓を穿つ、【死の呪い】を破壊する」


 否、違う。

 何もない空間ではない。

 千尋の涙で滲んだ視界でもわかる。

 先ほどまで何も無かった空間に、クロウの掌の中に、悍ましく蠢く汚泥があったのだ。


「うえっ」


 千尋が吐き気を催したのも無理は無い。

 さながらそれは、タバコを煮詰めて作った汁に、ヘドロを混ぜ合わせたものが、蛸のように動くというグロテスクな存在だったのだから。

 年頃の少女である千尋が嫌悪するのも無理は無い。


「塗り潰せ、我が【黒】よ」


 だが、その醜悪は直ぐに塗り潰された。

 クロウが手のひらから発生させた漆黒の闇が、汚泥を飲み込んだのだ。


「あっ」


 すると、千尋の母親に明確な変化が起こった。

 先ほどまで土気色だった顔色が、健康な人間のそれまで戻っている。

 生命維持の装置が、千尋の母親の脈拍も血圧も正常になったことを示している。


「あ、ありがとう! 魔術師さん――」

「いや、まだだ」


 母親の救済に礼を言おうとする千尋を、クロウがその手で制した。


「少女よ、君の母親は【死の呪い】に蝕まれていた。肉体を傷つけず、魂だけ剥離させる呪いだ。それ自体は既に先ほど破壊した。これ以上、君の母親が苦しむことは無い」

「ええと、だったら何が問題なの?」

「呪いとは、『かける側の存在』が無ければ成立しない。つまり、君の母親に呪いをかけた存在が居る。そして、その存在は…………今、自分がかけた呪いが破壊されたことを認識したらしい――来るぞ」


 何が? と千尋が問う暇も無く、周囲の空間がひび割れる。

 ガシャン、とガラスが砕けた音と共に、病院の個室だった場所が、草木一つも生えない灰色の荒野へと塗り替えられた。


「は? え?」

「固有の領域に引きずり込むだけの力を持った存在か。高位の魔術師か。あるいは、大妖怪。いいや、この音は――」


 戸惑う千尋と、考察を重ねるクロウの下に、『空を駆ける獣』の足音が響く。

 見ると、灰色の荒野の上空――曇天を背にしながら、二人を見下ろす存在があった。


『【ぎぎ、ぎぎぎぎぎぎぃ】』


 錆びた金属音を響かせるそれは、首無しの馬に跨る、首無しの騎士だった。


「デュラハンか。アイルランドの妖精に呪われるとは、どんな奇縁があったのやら」


 クロウは首無しの騎士の正体を看破すると、隣に居た千尋を抱き寄せた。


「わぷっ!? ま、魔術師さん!?」

「私の傍を離れるな、少女よ。奴はデュラハン――死の呪いを与える妖精だ」


 次の瞬間、曇天から雨の如く汚泥が降り注ぐ。

 それら全ては死の呪い。

 指先でも触れれば、魂を乖離させる妖精の魔法。

 死に至る、魔なる法則。


「来たれ、暴風。【竜神の息吹】」


 けれども、クロウはそれをものともしない。

 汚泥の雨を、漆黒の暴風で吹き飛ばす。

 自身も含めて、守るべき二人の存在へと一滴たりとも汚泥を近づけない。


『【ぎぎぎぎぎっ!!】』


 そんなクロウの抵抗を嘲笑うかのように、錆びた金属音が響く。

 デュラハンにとって、汚泥の雨は呼吸に等しいものだ。

 ただ存在しているだけで、他者を虐殺する妖精の在り方そのものだ。

 故に、敵と定めた者に対して与える呪いは異なる。


 ――――【指差しの呪い】。


 人を指で指し示す。

 人ならば誰しも無意識に違和感を抱く行為。

 デュラハンはそれを、即死の呪いにまで増大させる。

 首無しの騎士に指差されたものは、死の運命に囚われるものだ。

 それは例え、魔道の道を歩む者であっても変わらない。

 死の運命を与える妖精の前では、多くの生命の抵抗は無意味。

 死神の鎌が振り下ろされるのを、ただ見ていることしかできないのだ。


「少女よ、デュラハンに与えられる死の運命を覆す方法を教えよう」

「あ、え?」


 もっとも、それは相手がクロウでなければ、という前置きが付く。

 何故ならば。


「簡単な話だ。死を与えに来るデュラハンを倒せばいい」


 クロウは【黒】の継承者。

 ありとあらゆる存在を破壊する魔法の持ち主。

 世界に四人存在する、超越者の一人。

 そして――――世界最強の魔術師なのだから。


『【ぎぎっ!?】』


 悲鳴のように錆びた金属音が鳴り響く。

 千尋が視線を向ければ、そこには【指差しの呪い】を発動させた直後、『不可視の何か』によって指差した手――否、肩から腕が消し飛ばされた姿のデュラハンがあった。


「因果応報だ。例え、死の妖精であろうが、他者を呪えば墓穴を掘る」


 声なき怒りと共に、デュラハンが腰に下げた剣を抜き放つ。

 首無しの馬を走らせ、クロウの下へ、刃を振り下ろさんと近づいて。


「【花の魔弾】」


 次の瞬間、クロウからの『指差し』を受けたデュラハンの動きは止まった。

 絶えず鳴り響いていた錆びた金属音も止まった。

 代わりに、デュラハンが纏う甲冑の間から、次々と真っ赤な花が咲き乱れていく。

 やがて、それは一瞬の内にデュラハンを飲み込んで。


「彼岸の花と散れ」


 その終わりを彩るかのように、赤色の花弁が舞い散った。


「わ、あ」


 千尋は見た。

 死の妖精の終わりを。

 舞い散る赤の花弁を。

 崩壊する荒野の領域を。

 そして何より、理不尽を砕き、最高の結末を作り上げた魔術師の姿を。


「さて、少女よ――いいや、我が弟子よ」


 本当に美しいものを、千尋は見たのだ。


「そろそろ、君の名前を訊いてもいいだろうか?」


 だからもう、この問いかけの答えは決まっている。


「アタシの名前は鈴木千尋です、師匠!」


 舞い散る花弁にも負けぬ、可憐なる笑みで千尋は己の名前を告げた。


 かくして、物語は始まる。

 平凡の少女が最強の魔術師と出会い、共に魔道の果てを目指す物語が。

面白そうだなー、と思ったらブクマと評価お願いします。

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